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二つのスイッチ

「夫婦」という字面を見ると
ある種の緊張感を解いたような間柄。
丸みを帯びて棘が無く、少し暖かい。
すなわち恋人よりも家族に近いような
そんな印象を受ける。

だが「新婚夫婦」や「新妻」となると
話は一変する。
男女の匂いが一段と濃くなるのだ。
どこか鋭く、傷つきやすく、儚く脆い。

同じ婚姻関係を結んだ者の表記なのに
これほど印象が変わるのはなぜだろう。

・・・

さて、夫婦の付き合い方の話である。

「結婚したら夫は変わってしまった」
「出産したら妻は変わってしまった」

よく耳にする話だ。
これは「以前はもっと素敵だったのに」
というニュアンスが強く籠められている。
要するに、現状への不満を表しているのだ。
あなたは口に出したことがないだろうか?

無意識のうちに求めてしまっている。
自身の愛を注ぐべきに相応しい
以前のパートナーを求めてしまっている。

このような状態が続くのは
喜ばしいことではない。

(以前はしてくれたのに、どうして)
(以前と同じことをしてくれるだけでいいのに)

過去と現実のギャップにモヤモヤして
澱のように不満が堆積していく。

誰が悪いとか、何かを間違ったわけでもない。
しかし確実に息苦しくなっていくのが分かる。
どうしてこうなってしまったんだろう?と。

・・・

私たちはどうも
「変わらないモノ」を求める節がある。
親の愛情だったり、教師の厳格さだったり
恋人との甘美な時間だったり、愛だったり。

でも知っているはずだ。
この世に変わらないモノなんて一つもない。

たとえば自分。
声は変わるし妙な所に毛が生えたと思ったら
学校を後にして社会という別世界に入り込む。
幼いころに無敵感を得た500円玉を眺めても
ちっともワクワクしなくなってしまった自分。

生まれてからずっと、変化をしている。
モノでも心でも望まなくても変化する。
いい加減受け入れてみてはどうだろう。
最愛の人も、いずれ変わってしまうと。

しかし、分からんでもない。

「アイドルは恋愛なんてしないんだ」と
頑なに信じている人は一定数いるからだ。
変化を絶対に認めない人は必ず存在する。
それがビジネスとして成立するのだから
私たちが持つ不変への欲求力は凄まじい。

・・・

まあそれはそれ、として。その
変わらないモノはないということを
いかに夫婦の付き合い方に活かしていくか?
というのがこの記事の主旨である。

結論から言ってしまおう。
2つのスイッチを作るのだ。

たとえば貴方が男性だったのなら
・男としてのスイッチ
・妻の女友達としてのスイッチ

これらを意識して切り替えられるように
自分の心の中にスイッチを作っておく。
そして、場面に応じて使い分けるのだ。

妻が「どうしようか?」と訊いてきたら
男としてのスイッチをバチンと入れて
颯爽と提案して力強く引っ張ってあげたり。

妻がとりとめもない話をはじめたのなら
女友達としてのスイッチをカチリと入れて
うんうん、マジで!と表情豊かに聞いてあげる。

なぜこんなことをするのかというと
相手の変化に柔軟に対応するためだ。

夫婦ならば誰でも知っているけど
一緒に生活を共にするということは
付き合っていた時のドキドキだけでは
生活が成り立たない。
未知の刺激と危うさだけではダメなのだ。
定番と安心、安定の安らぎが求められる。

だが、安心安定ばかりでも、ダメなのだ。

変なところに変な毛が生えてきて
指摘しても気にしない人ではダメなのだ。
やっぱり素敵な部分は持っていてほしい。

そこでスイッチだ。
最低でも二つのスイッチを使い分けることで
「異性としての刺激」と「同性のような親近感」
を共にパートナーに与えることができる。

少し考えてみてはどうだろう、定年後の事を。

「あの人家でなーんにも喋らなくて!」
などと近所のママ友と談笑する妻をどう思うか?
私は嫌である。
もちろんママ友と仲良く談笑するのはいいけど
私と妻も楽しく談笑する関係で居続けたい。
私が思い描くのはそんなことである。


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