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方向音痴のぼくは

ぼくは車の運転がきらいだ。

なんでかって?よくぞ聞いてくれました。
極度の方向音痴ってやつなんだよ、ぼかぁ。

運転免許をとりたてのころにね
はじめて車を従兄弟からもらったんだよね。
あれは、うれしかったなぁ。
これでもかっていうくらい、乗り回したっけ。

たのしいんだけど、となりに人を乗せるとね
とたんにキンチョウしちゃうわけ。
なんでだろう?
そのときのぼくの頭の中は
「ぜーったいに道をまちがえるな!」
って警報ががんがん鳴っているんだよ。

たぶん、パッションにあふれた
ヤングでシャイなぼくの心には
人前で間違いを見せる=末代までの恥
みたいな方程式が刻まれていたんだよね。

だからめちゃくちゃ事前準備しといてさ
そんなことをおくびにも出さない顔で
「どう、助手席のすわりごこちは?」
なーんて言ってたんだよね。若さだね。

でね、運転中もすんごく気を張ってるの。
なんせ、少しでも道をまちがえられない。
黄信号で急ブレーキなんてもってのほか。
常にベストな判断をしなくちゃだからさ。

そんな運転してたらさぁ、やっぱりほら
つかれるんだよね。それはもうぐったり。
車から降りたらへとへと。ばたんきゅー。

でさ、少し運転に慣れが出てきたころに
事前準備をまったくしないでハンドルを
握ったことがあるんだよね。
まぁなんとかなるでしょうって気持ちで。

そしたら案の定、道をまちがえちゃうの。
何度か走った道だってのに、まちがえる。
即、頭の警鐘音量MAXでガンガンガンよ。
「なにまちがってる!なにまちがってる!」
もうパニックだよ。
自分でも笑えるくらいあたふたしてるの。
うーん、みっともない。すごく自己嫌悪。

やっぱりさぁ、方向音痴じゃあ、ダメだ。
車好きの友人はさ、迷路みたいな道でも
スイスイ走れちゃう。しかも初見でだよ。
ぼくは十回は走らないと、安心できない。
こーんなに運転するのに差があるんじゃ
もうぼくは運転がイヤだ。きらいなのだ。
そうぼくは決め込んでしまったのである。

・・・

ともだち達とドライブに出かけるときは
ぜーったいに、運転手にはならなかった。
もうぼくはナビゲータ―。案内王になる!
そういってハンドルは握らなかったぼく。

でもさぁ、おんなのひとを乗せることが
たまーにあるわけなんだよ。
「ぼくはいま運転イヤイヤ期なのだ!」
なんて真顔で言うわけにいかないからさ
また、めちゃくちゃ事前準備をしてさぁ
そしてこころをすり減らす日々になるの。

運転するたびに、運転がいやになってね。
しまいにゃ「いかく」するようになった。
あ、「いかく」ってわかります?
漢字で書くと「威嚇」なんだけど。

ハンドルを握るとさ、ワケもなく怒るの。
怒ることでストレスを発散したのかなぁ。
これはもう言いわけでしかないんだけど
怒らなければ運転を継続できなかったの。
攻撃的で、ひどい運転をしていたと思う。
なんだかもう運転の全てがきらいだった。

・・・

ところがだよ。ここからが本題ね。
前フリ長かった。すごく長かった。

いまのぼくは、運転がまぁまぁすきなのだ。

なんでかって?よくぞ聞いてくれました。
ウチの嫁様のこと大好きなんだよ、ぼかぁ。

嫁様がとなりに乗ってるとですね
運転がとたんにたのしくなるんですね、はい。

嫁様はねぇ!すばらしいんですよ!
たとえば、ぼくが道をまちがえても
変な空気にならないんです。これがありがたい!
「え、べつの道からでも行けるじゃん」って
とってもかるーく言ってくれるんです。

あとはね、ぼくが道に迷ってテンパっても
変な空気にならないんです。これホント女神。
「まあまあ、のんびり行こうぜ」って
なんでもない感じで言ってくれるんです。

そんで、ぼくが運転に疲れてへばっていると
「へいダンナ、ちょっと休もうぜ」って
かっこよく提案してくれるんですよね。
こりゃ惚れないほうがどうかしてまっせ。

ほら、よくさ、助手席でぴーちくぱーちく
運転に文句つけるひと、いるじゃないですか。
ウチの嫁様はその対極にいる感じなんです。
ぼかぁこういうひとが大好きだってわかったね。

おかげさまで、運転中に無駄にイライラとか
ピリピリすることが激減したわけです、ぼく。

方向音痴なんだから、運転を人一倍努力して
がんばりまくらなければいけないんだ!って
なんか肩に力が入りまくってたんでしょうね。

度が過ぎるキンチョウ状態から
ほどよいキンチョウ状態になって
ぼくの運転ライフが大きく変わったのです。

ぼくが幼少期から忌み嫌っていた「方向音痴」。
まさか、それをプラスに変える人がいるなんて。
だってね、ぼくの方向音痴がさくれつするとね
車内に和気あいあいとした会話が生まれるんだ。
めでたい。結婚はめでたい。結婚してよかった。

つまりですね
「方向音痴」という
だれがどう見たってハズレスキルなのに

人と人との相性によってはそれが当たりスキルに
化けることもあるんだって話なんです。

この世はまだまだおもしろいとこだらけですね!


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