なにゆえこやつは挨拶をしないのじゃ?
新入社員のA君がいます。
A君は他の社員と変わっていました。
誰に対しても挨拶をしなかったのです。
それを見かねた指導係のBさんが言いました。
「A君、出社したら挨拶をするように」
A君は出社したら挨拶をするようになりました。
しかし、お客様が来ても挨拶はしませんでした。
それを見かねた指導係のBさんが言いました。
「A君、お客様に挨拶をするように」
A君はお客様に挨拶をするようになりました。
しかし、業者が来ても挨拶をしませんでした。
それを見かねた指導係のBさんが言いました。
「A君、業者が来たら挨拶をするように」
・・・
指導係のBさんは思いました。
(何度同じことを言わせるんだ)と。
新入社員のA君と指導係のBさんは
なにかが噛み合っていません。
いったいどこが良くないのでしょうか。
原因のひとつとして
指導係Bさんの思い違いがあります。
Bさんの思いはこうです。
「挨拶とは双方どちらも気持ちよくなる行為。
常に元気を提供できる職場であるために必要。
だから全ての人に率先して挨拶をしてほしい」
ここで挨拶を分解してみましょう。
・何のために挨拶をするの?
→双方どちらも気持ちよくなるため
・挨拶をすることで何を目指すの?
→常に元気を提供できる職場
・具体的に、誰に何をすればいい?
→出会う人全てに率先して挨拶をする
Bさんの思い違いとは
・何のために挨拶をするのか?
・挨拶をすることで何を目指すの?
この二つのことを
「こんな常識、言わなくても分かるよね」と
思い込んでいたことです。
なので結局
・具体的に、誰に何をすればいい?
の部分だけを指導していました。
新入社員A君としては
・何のために挨拶をするのか?
・挨拶をすることで何を目指すの?
これについてBさんのような思いは
まるで持っていなかったので
指導されたことをこなしていたに過ぎません。
だからお互い噛み合っていなかったのです。
挨拶とは、職場だけではなく人間関係の基本。
誰に対しても行うのがいわゆる『普通』です。
でも、『普通』は人それぞれちがいます。
これはBさんが悪いという話ではありません。
思い込みは言葉を伝わらなくするという話です。