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ごめん

私には大切で大好きな人がいた。何人も。

大切で大好きだから、一緒にいたい。

でも言葉のあや、タイミングが悪くて
(そんなつもりじゃなかったのに)と
ちょっとだけ険悪になるときがあった。

「ごめん!」って

すぐ謝ればいいんだけど、言い出せない。
なんで、こんな一言が言えないんだろう?

かといって
時間を置けば言い出しやすいか?と言えば
そんなことはない。

(見た目は)いつもの状態に戻ったのに
わざわざイヤな記憶をほじくりかえして
べつに謝ることなんてしなくてもいいか。

そんなことが頭にちらついてくる。
それで結局、謝らない。

(相手もきっと忘れてくれるよね)と
勝手に都合の良い期待をして。
初めから無かったことにしようと。

そんな風に生きてきた時代があった。

振り返ってみて分かったことは
私が謝らなかった人とは、縁が切れた。
それはもう、すっぱりと。

逆に、数少ない、私が謝った人。
私の非を認めて「ごめん」と伝えた人。
そういう人とはつながっている。

なんだ?

もしかして謝ることって
すのごく大事なのだろうか?

・・・

時は今。

私は不思議だった。

知人夫婦の話を聞いていると
ハテナマークが頭に浮かんでくる。

夫婦でちょっとしたケンカをしても
特にどちらかが謝ることはしない。
イライラの自然消滅を待って解決。

そういう夫婦がけっこう多いからだ。

はて?
「ごめん」って言えばいいじゃん。
それで夫婦仲は安泰だろうに、なぜ?

彼(彼女)らの言い分はこうだ。

「自分は悪くないのに、どうして自分から
謝らなくちゃならないの?おかしいでしょ」

なるほど。なるほど。なるほど…?
あぁ、そこでようやく気付いた。
昔の私がどうして「ごめん」と言えなかったか。
私は悪くないのに、なぜ?だ。

彼(彼女)らの気持ちが分かる気がした。

・・・

ここだけの話
私はけっこう、心の狭い人間だ。
めちゃくちゃ根に持つタイプだ。

たとえば私が小学校低学年のときに
一つ上の学年の人たちにされたいじめを
絶対に許すことができない。
それに加わった同級生も、許せない。

いや、表面上は許している。
「そんなことあったっけ?ははは」って
さわやかに振る舞っている。

しかし私は許していない。恨んでいる。
広い世界を知らず、頼る人も知らず
なんにもできない幼い私に対して
ただ一つだけ年が上ってだけで
理不尽なことをやってくれた。

許さない。許したらいけない。
許したら幼い頃の私が、私を許さない。
そんなわけで恨みの炎は燃え続けている。

やや、だからといって
何かしら仕返しをしたい!だとか
社会的にマッサツしたい!だとか
そういうことは思っていない。

だって、ついさっきまで忘れていたし。
記憶を探ったらたまたま出てきただけ。

ただね、忘れてはいても
やっぱり許していないんだよね。
心の傷って自然治癒は絶対にしない。

たぶん、完璧には治らない。
でも、キレイに治らないけど
傷口を塞ぐことはできると思う。

どうやって塞ぐのかっていったら
やっぱり当人からの謝罪なんだよね。
「ごめん」の一言で大分傷口は閉じる。

でも、もし仮に
今私の目の前に、当時私をいじめた上級生が来て
「ごめん!」って謝ったとしても
たぶん、全然響かない。傷口は閉じないと思う。

(え?何、いまさら?「ごめん」って言って
自分だけ気持ちよくなろうとしてない?)

たぶんそんな思いで、許せないと思う。

どうして許せないのかっていったら
あまりにも時間がかかりすぎているから。

この長い時間、嫌で恐ろしい記憶として
私は何度も思い出しては傷ついたんだよね。
何度も、何度も、何度もだよ。
無力な自分を恨んだし、環境も呪ったよ。
でもいくら恨んでも、呪っても出口はない。
ただ自分の心に嫌なシミが広がるだけだった。

それを数十年よ。数十年の熟成よ。

それを「ごめん!」のたった一言で
許せるわけないでしょう。

どう考えてもつり合いが取れないわけよ。

・・・

私が言いたいのはふたつ。

①心の傷は治らない
②謝るのは早ければ早い方がいい

で、これを夫婦生活向上に当てはめてる。
どうやっても消えない傷だけど
自分のために活かそうぜって感じで。

だから私は、大好きな嫁様に謝る。
意見のすれ違いで険悪になったときに
出来るだけ早く。
おちゃらけないように、真剣に謝っている。

時には(これ、私が10%しか悪くないよな)
って場合もあるけど、やっぱり謝っている。

どっちかが100%悪い!なんてないからね。
だったらどっちかが勇気を出して
リーダーシップを発揮しなきゃならない。
「ごめん」って伝えなきゃならない。

傷口を早く処置しないと、膿んで、腐って
取り返しのつかないことになっちゃうから。

それに、自分から謝るって
なんだか貧乏くじを引いてるみたいだけど
ちゃんと良いこともあるよ。

心がスッと軽くなるんだよね。
そんで、自分を好きになれる。
(おい、私、カッコいいじゃん)って
褒めたくなっちゃうんだよね。

更に、そういうことを続けていると
相手のほうから率先して
「ごめん」って謝ってくれることがある。
相手が10%くらいしか悪くないのに、だよ。

その瞬間が嬉しくてありがたいなって。

・・・

これは想像になるんだけど
謝れない夫婦ってのは

(過去のあのこと、私はまだ許してないのに
なんで私が謝らなきゃならないんだ?)

っていう思いがくすぶっているから
謝れないって人が多いのかなって思う。
他人では分からない位根が深いんだよね。

でも、だからといってお互い謝らないと
また心の傷を放置することになるわけで。
雪だるま式に傷口が増える一方なのかなって
そんな風に思います。

だからどこかのタイミングでどっちかが
勇気を出して「ごめん」って
言わなければならないと思う。

もちろん、そんな一言で全てが解決しない。
出会った頃のウフフ、アハハには戻らない。
「何?今更!」って怒らせるかもしれない。

でも、心の傷ってそれだけ痛いものだから。

関わった全ての人に「ごめん」なんて
謝る必要はないと思う。そんなの無理だし。

でもずっと一緒に過ごしていく大切な人には
「ごめん」って言ってもいいんじゃないかな。
私はそう思います。


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