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ブラックフライデーとマルチポット

フライパンが逝ってから一月―――

某ブラックフライデーを経て
我が家にNewフライパン達と
キッチン用品が仲間入りした。
これはその歓迎の記録である。

・・・

「これ!これが欲しい!」

珍しく声を荒げるは我が嫁。
指さすモニターには独特な形状の鍋
通称“マルチポット”が鎮座する。

「ああ、これ。最近話題のやつね」

聞けば片手で扱える上に一通りの調理が可能。
なのにその軽さと使い勝手の良さは一線級と。
おまけに愛くるしいフォルムまで備えている。

「使ってみたかったのよコレ。いいでしょ?」

ちらりと値段を見ると3000円台が相場。
拒む理由はない。むしろ料理の幅が広がるなら
願ったり叶ったりではないか。

「いいね。じゃ、もうちょっと見てみようか」

満足気な嫁の顔とモニターを見ていると
(おや、なんだこれは?)
不思議な商品がついと現れた。

「これ、もしかして、蒸せるの?」

嫁の目が輝いた。目がハートになっている。
余談だが嫁は蒸し器に弱い。
蒸された食品に滅法弱いのだ。

「へえ・・・こんな商品があるんだ。面白っ」

ちょうど我が家に蒸し器の類はなかった。
余談だが私も蒸し器が好きだ。
蒸したての中華まんが大好きだ。

「少し高めだけどこっちがいいな」

「5000円か。蒸せるなら許容範囲だね」

私たちの意見は合致した。
しかし私は慎重な男。
まだまだ魅力的な商品はあるかもしれない。

「あれ、買い物かごに入れただけ?」

「他の商品もまとめて買おうじゃないか」

そうして私たちは堪能した。Amazonで。
ブラックフライデーを堪能しまくった。

・鍋フライパン13点組 ・・・約10,000円
・スチーム マルチポット ・・・約5,000円
・着れる電気毛布 ・・・約4,000円
(※ブラックフライデー価格です)

今年購入したもの

「まあ、こんなとこかな。今日は休もう」

「あれ、まだ注文確定しないの?」

「明日の朝に確定しようと思うんだ」

私は慎重な男。
明日に最高の商品を見つけるやもしれぬ。

・・・翌日・・・

「おはよう夫くん」

「・・・カタカタ」

「あれ、どうしたの?浮かない顔して」

悪いお知らせ超悪いお知らせがあるんだ」

「なになに?どしたの?」

「スチーム マルチポットだけ買えなかった」

「ええっ!?どうして?」

「売り切れていたんだ。これが悪いお知らせ

「じゃあ、超悪いお知らせって・・・?」

「昨日即ポチしてたら買えていたんだ」

「・・・」

「ふふふ」

「夫くん?」

「はいッ」

「他にもあるんだよね?似た商品」

「いや、それがね。スチーム機能付きは
あの一種類のみだったんだよね。ふふふ」

「・・・」

「ふふふ」

「夫くん」

「はひッ」

「朝ごはん抜きと、昼ごはん抜き、どっち?」

「えっ」

「どっちがいいの?」

「ど、どっちもイヤです」

「マルチポット欲しかったな」

「申し訳ない」

「スチーム マルチポットで料理したかったな」

「本当に申し訳ない」

それから半日、針のむしろ状態だったが神はいた。
その日の午後マルチポットが再入荷したのだ。
私は光の速さで即ポチ!ポチポチした!

そしてほどなく、全ての商品は我が家に到着。
嫁はニッコリ。私はげっそり。

あ、ちなみにスチーム マルチポットの性能は
最高すぎるほど良かったですよ。ふふふ。


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