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100分de名著『ショック・ドクトリン』感想

 ナオミ・クラインの名前も、「ショック・ドクトリン」の意味もほとんど知らなかったので、今回の100分で名著はとても勉強になりました。
 この本の概要を軽く説明すると、

「アメリカの自由市場主義がどのように世界を支配したか、その神話を暴いている。ショック・ドクトリンとは、「惨事便乗型資本主義=大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革」のこと。アメリカ政府とグローバル企業は、様々な危機につけこんで、あるいはそれを意識的に招いて、人びとがショックと茫然自失から覚める前に過激な経済改革を強行する……。」

ということを解説したものになります。(この説明は岩波書店の説明をほぼ流用しました🙏)

 私はもともと新自由主義、あるいはさらに言って資本主義にかなり懐疑的な思いを抱いているのですが、にしてもなかなか惨憺たる思いにさせる内容でした。

 特に印象的だったのは、チリのピノチェトによる独裁政権の時の話です。当時アメリカは、チリに社会主義政権が(圧倒的な支持を受けて)誕生したことを警戒し、チリ軍に送り込んでいたCIAを指揮してクーデターを発生させて、独裁政権を打ち立てました。
 あまりに酷すぎて言葉もないです。アメリカもこれじゃあ中国やロシアのことを悪く言えないでしょう。他国の軍部にスパイを送ってクーデターを起こさせ、独裁をはじめさせる。これで「世界の警察」とか言われてたんだから笑わせます。いや、むしろ「警察」という存在のあり方としてはふさわしいのかもしれませんが。
 その独裁政権はアメリカの傀儡として新自由主義政策を推し進めつつ、国内の反体制派(主に左派であり、独裁政権前の政権を支持していた人々)を弾圧します。社会主義政権の時のアジェンデ大統領は自殺し(しかしこれは殺害されたのと同じことです)、独裁政権に反対する者は拷問、殺害されました。 
 許されざる蛮行です。ピノチェトは心から共産主義者を憎んでいたようですが、まぁ本当に愚かというか、なんというか。
 イエスなら「父よ、彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです」(ルカ福音書23:34)というのでしょうか。(ちなみに、この言葉は書かれていない写本もあり、本当にイエスが言ったのかはあやしいのですが、ここでは引用させてください。)
 こんなピノチェトでさえも一応は天寿を全うしたのですから、まことにこの世は不正義と不合理と不条理に満ちているとしか言いようがありません。

 最終的に、ピノチェト政権は選挙で敗北し、独裁政権は終わりました。経済政策も、アメリカが(というのはつまりアメリカ政府と大企業が、ということですが)導入した新自由主義政策から、ケインズ学派的なものに転換したようです。今現在はどうなっているのでしょうね。

 そもそもこれは経済の話なわけですが、私としてはこの事件を知れただけでも今回の番組を見てよかったと思います。しかし本題はショック(様々な危機)に乗じていかにして新自由主義的政策が打ち出され、それがどのように進行していくのかということです。まだ初回の放送しか見ていないのでその辺の話はまた今度にします。

 ピノチェトの独裁政権下で殺されたものに哀悼の意を表して、この記事は終わりとさせていただきます。

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