小説『闇に堕ちにて、空に溶けゆく』8/17(土) 【第39話 Narcotic】
私は、洋子の肩を軽くたたき、
目線で、直子の存在を知らせた。
直子の存在に気づいた洋子は、
少しだけ慌て、恥ずかしそうに私から離れた。
少し体を離した洋子に向かって、私は言った。
隆「洋子、ごめん、心配をかけて。
それから自分の価値観ばかりを押し付けて、
ごめん。 ほんと、ごめんな。
私は、自分を過大評価していた。
長年、仕事の世界で生き抜いてきたことで、
自分のことを“強い”人間だと勘違いしていた。
でも定年してその世界を一日にして失った。
その時に気づいたんだ