『夜明けのすべて』と小児科医
3度目の夜明け。これが上映されてる間はずっとこれを観続けたいし、これだけでいい。それくらい好きです。恥ずかしげもなくこんなこと書くくらいの作品だと思うのです。
月経前症候群(PMS)の藤沢さんとパニック障害の山添くんが互いのことを知り、いい距離感でそれぞれを一人の人間として尊重して関わりあう物語です。それは、“助け合う”とも、“支え合う”とも、“寄り添い合う”とも違う、全くフラットな関係なのです。それがめちゃくちゃ清々しい。今をときめくダブル主演の二人(上白石萌音、松村北斗)ですが、安心してください。恋愛要素は一切ありません。それも清々しい。
二人だけでなく、彼らの職場『栗田科学』の皆さんの関わり方も素晴らしくて、やっぱりその距離感がいいんです。仕事柄、僕は子どもたちや親御さんへの言葉遣いにとても気を遣いますが、栗田科学の彼らの言葉、話す姿、醸す雰囲気には微塵の棘も無く、すごく心地よいのです。絶対に低温火傷しない湯たんぽのような、温めてくれつつ絶妙な距離を保ってくれる、そんな人たちで溢れています。
様々なレビューサイトで、観た人達が口を揃えて「優しい映画だった」という感想を書いてますが、僕は、むしろ観た人が優しくなれる映画だと思います。医療、福祉、教育、保育に関わる人たちにぜひ観てもらいたいです。現場には“支援”という言葉が飛び交っていますが、それってこういう事なんだと思います。
そうだった、唯一棘を感じた登場人物がいたんだった。それがなんと、藤沢さんと山添くんのそれぞれの『主治医』というね。残念だけど、そこも当たってるんよね。お後がよろしいようで。