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苦手だった青春映画のはなし

うちの病院の院内報に毎月書いているコラムです(800字)。小児の診療をしていて感じる、とりとめもないことを書いています。2022年9月号です。
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 夏ですね(8月に書いてます)。夏といえば? そう、青春映画ですね。今回は私の好きな映画を紹介します。回を追うごとに小児科の話からずれていきますね。1月に黒澤明の「生きる」の感想をここに書きました。これまでは自分と同世代のおじさんが主人公の「砂の器」、「柳生一族の陰謀」、「新幹線大爆破」など、昭和の邦画を好きでよく観ていました。青春映画は、思い出したくない頑丈にコーティングした自分の青い記憶が思い出されるので、むしろ避けて生きてきたのですが、7月にある映画解説者が推していた「恋は光」というキラキラでキュンすぎる映画を遠賀川に身を投げるつもりで観に行ったところ、案外大丈夫だったのです。そこから立て続けに、「殺さない彼と死なない彼女」、「桐島、部活やめるってよ」、「アルプススタンドのはしの方」、「サマーフィルムにのって」などを観て、重症化しない程度の免疫を獲得しました。中でも「サマーフィルムに〜」は繰り返し観ては、青い自分を掘り起こして楽しんでいます。ハダシ最高。おじさんコーティングはクランチキャンディのようにモロモロと崩れ去り、ツルピカなお兄さんになったようです。
 どの映画にもうまく立ち回る子、自分の好きな事しか熱中できない子、周囲に流される子、自分の環境を諦観している子が出てきて、悩んだり苦しんだりします。映画だと好きな事に熱中する子の努力が報われてハッピーエンドを迎えることが多いですが、現実はどうでしょう。大人は好きなことばかりやってないで勉強しなさいと言ったり、うまく立ち回る方法を勧めたり、やりたいことを邪魔してばかりかもしれません。仕方のないことですが、映画だと嫌な役回りです。でも、難しいですよね。そんな私は9月公開の『さかなのこ』を楽しみにしています。あのさかなクンの自叙伝が原作で、のんが主役を演じます。熱中しすぎる子の個性を伸ばす子育ての悲喜こもごもが楽しめそうですよ。


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