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国際法・国際人権法・憲法学・法哲学など。International Law, Inte…

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国際法・国際人権法・憲法学・法哲学など。International Law, International Human Rights Law, the Constitution of Japan, Legal Philosophy, etc.

マガジン

  • 国際法/International Law

    法源論、安全保障など、国際法の基本的な問題を考察します。

  • エトセトラ/et cetera

    刑法における更生・再社会化の重視、およびアニマルウェルフェアなどを考察します。

  • 日本国憲法/Constitution of Japan

    平和憲法・立憲主義などの観点から、憲法を考察します。

  • 国際人権法/Human Rights Law

    国際人権法の基本原則を考察します。

  • 法哲学/Legal Philosophy

    カント、ラートブルフなど、法哲学の先行研究を考察します。

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立憲主義の現代の到達点としての日本国憲法

われわれは、日本国憲法が、人類の長い経験と叡智の蓄積の表象である立憲主義の展開の「現代の到達点」というべきものを具現していることを、明確に認識し理解する必要がある。グローバル化する世界にあって、日本が過度に内向きになることなく、相互的比較を通じて対話し、自らを高めていく確かな基盤・土台を有することの意義は、長期的にみて限りなく大きい。 憲法の制定過程においては、戦前の厳しく徹底した思想・言論などの弾圧体制が基本的に除去され、選挙権が従来の25歳以上から20歳以上に引き下げら

    • リメンバー・中村哲医師

      中村医師によれば、ずっと守ってきた一つのガイドラインは、その地域の文化や宗教について、良い悪いということで裁かないということだという。中村医師は、現地に社会改革に行ってるのではなく、人々の命をいかにして守るかということに苦心してきたと述べる。 中村医師の医療支援は、医療に留まらない。たとえば、病院内にサンダルの工房を開き、大量のサンダルを提供したりした。足の裏に傷ができ、悪化するのを防ぐためである。病気を治療するよりも、予防のほうが安くすみ、その人の社会生活に与えるダメージ

      • アニマルウェルフェアと「五つの自由」

        畜産にけるEUや各国の法令の土台となった原則がある。1960年代に英国で生まれた動物の福祉のための「五つの自由」である。 ①空腹および渇きからの自由。(健康と活力を維持させるため、新鮮な水およびエサの提供。) ②不快からの自由。(快適な休息場所などの提供を含む適切な飼育環境の提供。) ③苦痛、損傷、疾病からの自由。(予防および的確な診断と迅速な処置。) ④正常行動発現の自由。(十分な空間、適切な刺激、そして仲間との同居。) ⑤恐怖および苦悩からの自由。(心理的苦悩を

        • 「二本立ての刑事司法」

          わたしは、精神の成熟度を、年齢という外的基準で一括に扱うことには疑問がある。わたしは、立法論として、現在の刑事裁判システムが、現行の少年司法システムから学ぶべきことは多々あると考えている。 刑事裁判システムが不要となることはないだろう。しかし、少年司法システムのように、いわば福祉モデル成年法制と、刑事裁判システムの並存に基づく、刑事司法の運用が可能であり、今後求められていくのではないか。 要保護性の違いに応じた処遇という点で、重大で深刻な犯罪者と、未熟性と可塑性を示す犯罪

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        立憲主義の現代の到達点としての日本国憲法

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        記事

          死刑廃止を考える

          死刑の犯罪抑止力の対象は、主として殺人を前提としているが、その殺人も具体的事例になると、どういう状況下で殺人を犯したかは複雑であり、単に人を殺せば死刑になるからと殺人を思い留められるような単純なものではない。また、死刑による強烈な影響を受けるのは、死刑囚の身内だけではない。被害者の家族・遺族も、必ずしも死刑を望んでいるとは限らず、心理的な影響を負いうる。さらに、死刑の法的手続に関わる人――検察官、弁護人、裁判官であれ――は、自らの役割と行動のプレッシャーから、遅かれ早かれ、心

          死刑廃止を考える

          刑法の役割と基本的人権の尊重

          刑法は、法益保護と人権保障を役割とする法律である。前者は、一般予防と特別予防に区分される。一般予防は、一定の犯罪行為を行えばそれに対して刑罰が科されることを事前に予告することによって、そのような犯罪行為が行われることを防止する。特別予防は、犯罪行為が現実に行なわれてしまった場合には、その犯罪者に対して刑罰を科すことによって、二度とそのような犯罪を行わないように抑止することである。 また、刑法は、国家権力による恣意的な刑罰権の行使を制約し、国民の人権を保障する役割を有する。犯

          刑法の役割と基本的人権の尊重

          「持続可能な発展」と連帯の必要性

          国際環境法の発展の上で、ストックホルム宣言が、発展途上国における環境問題の大部分が低開発に起因すること、発展途上国の発展の重要性および発展政策が環境保全と両立すべきこと、途上国の環境保全のために援助が供与されるべきこと、を指摘・強調している点は、現在でも重要である。 その後、リオ宣言では、共通に有しているが差異のある責任が規定され、そこから二つの帰結が導かれた。一つは、途上国には先進国と比べてより緩やかな環境基準を適用する「二重基準」の採用である。もう一つは、先進国が「地球

          「持続可能な発展」と連帯の必要性

          国連平和維持活動の原則

          平和維持活動(PKO)とは、紛争地域における国際の平和および安全を維持し回復するために国連が行う活動であって、軍事要員を用いるが強制権限を持たず、同意と協力に基礎をおく。それ自体として紛争の平和的解決をもたらすというより、停戦の維持によって平和的解決の条件を創り出すものである。平和維持活動局が2008年に公表した「国連平和維持活動:原則と指針」では、当事者の同意、公平性、および自己防衛と任務の防衛の場合を除く武力不行使は、現在でもPKOの三つの基本原則であることを確認している

          国連平和維持活動の原則

          国際社会の「保護する責任」

          国内避難民担当事務総長代表であるフランシス・デンは、国家主権を再定義し、「責任ある主権」を提唱した。国家は、対外的には他国の主権を尊重する責任を持ち、対内的には国内にいるすべての人の尊厳と基本的権利を尊重する責任があるとされた。さらに、国家が、国内のあらゆる人の尊厳と基本的権利を確保する責任を、果たす意思や能力がないか、国家自身が犯罪や残虐行為の行為者であった場合には、国際社会が有する第二次的責任が行使される。それを、国際社会の「保護する責任」という。 「2005年世界サミ

          国際社会の「保護する責任」

          「集団安全保障」の基本的な考え方

          かつてヨーロッパでは、19世紀末以降、勢力均衡はその内在的矛盾、すなわち「勢力」の測定に伴う不確実さのために、崩壊に向かうことになった。各国は、仮想敵国に優越する力を求め、軍拡競争のらせん状の拡大と同盟政策の追求によって、国際関係を緊張させ、平和を危うくするという悪循環を招くことになったのである。 国際連盟で歴史上はじめて、集団安全保障の仕組みが設けられた。その基本的考え方は、二つの要素からなる。第一に、参加国は少なくとも一定の場合に武力を用いないことを相互に約束する。第二

          「集団安全保障」の基本的な考え方

          「立憲主義」という法思想

          伊藤真によれば、立憲主義とは、すべての人々を個人として尊重するために憲法を定め、それを最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかる思想である。憲法は、国民が国に守らせるためのものである。 民主主義国家では、国民の多数意思に従って、国の政策の基本が決定される。しかし、多数意思は常に正しいとは限らない。国民の多数が戦争を支持した戦前の日本も同様である。 多数決でも変えてはならない価値を前もって憲法の中に書き込み、民主的正当性をもった国家権力をも制限するのが立憲主義という法

          「立憲主義」という法思想

          日本の立憲主義と集団的自衛権

          従来の政府解釈では、我が国に対する武力攻撃を実力で阻止しなければどうしようもない場合に、やむにやまれず最低限の実力行使をして撃退することまで、憲法が禁じているとは考えられないとし、個別的自衛権を認めてきた。個別的自衛権には、三つの要件がある。 ①わが国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)が発生したこと。 ②これを排除するために他の適当な手段がないこと。 ③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。 2014年7月1日、憲法の「解釈を変更」して集団的自衛権の行使を容認する閣議

          日本の立憲主義と集団的自衛権

          難民問題における日本の対応

          国連難民高等弁務官事務所(以下、UNHCR)は、国連人道機関の一つであり、政治的対立に巻き込まれることなく中立・公平の原則に徹し、特に自国を追われた人々である難民の保護と救済を専門的に扱う任務が与えられている。難民問題の最終的な解決は、おおきく分けると、①本国への帰還、②庇護国への定住、③第三国への再定住という三つの方法がある。 UNHCRは、その難民認定ハンドブックで、いわゆる「灰色の利益論」を採用し、「立証できない陳述が存在する場合においては、申請者の説明が信ぴょう性を

          難民問題における日本の対応

          基本的権利としての「水と衛生への権利」

          政府は、健康、教育、暮らしを支えるのは、清潔な水と適切なトイレ、そして、正しい衛生習慣であることを確認し、国家の優先課題として、人間としての基本的権利である水への権利を確保しなければならない。国連総会では、「水と衛生への権利」が、相当な生活水準・健康への権利・生命や尊厳への権利に密接に関連するものであると同時に、独立した対応が必要とされている。すなわち、自由権と社会権の基本的権利に不可欠なものとして、「水と衛生への権利」が尊重されることを要するのである。 とりわけ、公平性の

          基本的権利としての「水と衛生への権利」

          人権としての「発展の権利」

          「発展の権利」は、これまですでに認められている人権を、発展という目標の下に結集した権利の総合体である。「発展」の意味については、当初主張されていたような経済的な内容をこえて、今日では、人間が人間としてふさわしい生活を十分享受できるような状況、つまり、人間としての基本的ニーズを十分満たすための条件を作るという、ひろい意味で捉えることが一般化しているという。 人権としての「発展の権利」の主体は、田畑茂二郎によれば、あくまで人間としての個人である。しかし、個人がそれを享有する上で

          人権としての「発展の権利」

          国際法上の「自決権」

          人権規約は、A規約、B規約のいずれにおいても、第一条一項において、自決権について規定し、「すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」としている。 第二次世界大戦後、非植民地化の過程で実定法となっていく自決権は、植民地人民を中心とする、外国支配下におかれた従属人民の独立達成の権利であり、「外的自決権」を意味した。独立国の一部を構成する少数者などに自決権を認めることは

          国際法上の「自決権」