見出し画像

日本の立憲主義と集団的自衛権

従来の政府解釈では、我が国に対する武力攻撃を実力で阻止しなければどうしようもない場合に、やむにやまれず最低限の実力行使をして撃退することまで、憲法が禁じているとは考えられないとし、個別的自衛権を認めてきた。個別的自衛権には、三つの要件がある。

①わが国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)が発生したこと。
②これを排除するために他の適当な手段がないこと。
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。

2014年7月1日、憲法の「解釈を変更」して集団的自衛権の行使を容認する閣議決定が行われた。自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、実力をもって阻止する権利であり、要件①に該当しない。しかし、国連憲章は、集団的自衛権を認めており、問題は、憲法第9条との適合性であるかのように見える。

しかし、2015年9月19日に成立した安保関連法制における自衛権の新3要件は、立憲主義という国のあり方を掘り崩す危険を有するものとして、その問題性が認識されなければならない。新3要件によれば、わが国と密接な関係にある外国が攻められ、それによってわが国が危機に陥ることが明らかな場合(存立危機事態)に限って、集団的自衛権が行使できるとされる。

この存立危機事態の規定だけでは、どんな場合に集団的自衛権が行使できるか、憲法の規定に基づいて、きちんと区別できるといえるだろうか。この点については、安保関連法制の国会審議で、「政府が総合的に判断する」という説明が繰り返された。政府の行動できる範囲が、政府自身によって決められるというのである。立憲主義であれば、政府が行動できる範囲は、憲法の規定で許された範囲という説明でなければならないはずである。

<参考文献>楾大樹『檻の中のライオン』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?