那須町独自の教科「NAiSUタイム」でチャレンジ!小学生が Minecraft で"人にやさしい街づくり"を提案
小学校を中心とした研修を担当している未来の学び探究部の竹谷です。
私は元小学校の教員で、6年前にみんなのコードに加入しました。わたしのこれまでのキャリアについてはこちらの記事からご覧ください。
みんなのコードは、2021年から栃木県那須町と連携協定を結び、プログラミング教育の支援をしています。この取り組みは、株式会社セールスフォース・ジャパンよりプロジェクト実施資金を助成いただいています。2021年度の報告書はこちら → https://code.or.jp/news/10922/
先日、那須町立高久小学校4年生のクラスで教育版Minecraft(マインクラフト) を使った総合的な学習の時間の授業が行われました。今回は、その様子をご紹介します。
この記事のポイントは、こちらの3点です。ぜひ注目しながらお読みいただければ幸いです。
NAiSUタイムとは
授業の様子の紹介の前に、那須町が推進されている「NAiSUタイム」について紹介します。NAiSUタイムは、那須町とみんなのコードが連携協定を結ぶ大きな要因ともなっています。
那須町では、2019年度から文部科学省の教育課程特例校の指定を受け、プログラミング・人間関係・防災教育を学ぶ全国でもユニークな教科「NAiSUタイム」を全小中学校で実施しています。
NAiSUタイムのネーミングは、町内の先生方から公募して決まったそうです。NASU(那須)の間に中央にi(愛)があるという、まさにナイスなアイデアですね!いろいろな教科等の時間を調整して、プログラミングの時間を小中各学年10時間(小1・2は7時間)としています。
プログラミングのスキルを身に付けたり、そのよさをじっくり味わったりするための時間なのです。
しかし、その実施にあたって、プログラミングに関しては専門的なスキルを持った先生方の不足や学校間での理解度や実践具合のばらつき、自治体と学校間の連携方法などさまざまな課題も浮き彫りになっていました。
そこで以前から教員研修でつながりのあったみんなのコードが、先生方の研修や技術的な助言、授業の支援に入ることになったのです。
“教育版Minecraft”を使って人にやさしい街プロジェクト!授業の様子
高久小学校の4年生は、総合的な学習の時間で、「人にやさしい街プロジェクト」に取り組んでいます。2学期までにいくつもの体験を通して学習したことをもとに、身近な施設の改善プランを考え、提案するというものです。
対象となる施設は、自分たちの学校・隣の保育園・地域のお寺・コンビニの4つで、グループに分かれてそれぞれ担当します。そして、教育版Minecraft(マインクラフト)というツールを使い、現実の建物などを仮想世界の中に再現し、修正していきます。子供たちは、現状を確認し、その施設をどう変えたら多くの人にとって便利な街になるのか考えて、製作を続けてきました。
この日は、これまで作り上げてきた作品をクラスの仲間に紹介する中間発表でした。友達からフィードバックを受け、それを今後の改善に生かそうという授業の内容でした。
自分たちにとってなじみのある場所を、より多様な人に優しい施設にするために、どんなところを変えればいいのか、具体的な提案が示されていました。また、利用する人の立場に立って考えていることがうかがわれる点もありました。
こちらの画像で一部黒く見えるところがあります。これは、マスクをかぶって視野が狭くなっていることを表現しています。
この画像にはかぶっていたマスクが置かれています。視界が狭い方の見え方が表現されていたのです。
その他に、点字ブロックの位置、思いやり駐車場の表示、外国から来た人にもわかりやすいようにするための英語の表示、 小さな子が安全に過ごせるようにマットを敷くなどの工夫がどのグループにも見られました。
お互いに友達の工夫の良さを見つけながら、さらにより良くしていくためのポイントを交流をして、この日の授業は終わりました。
公開授業は中間発表の場面だったのですが、この一週間ほど前に、製作過程も見ていました。子供たちがコマンドを記述して、大量のブロックを敷き詰める作業を効率化していたり、現実の見え方に近づけるために、どんな素材を使ったらいいか工夫したりしていたのが印象的でした。
お寺の門を再現したのがこちらの写真です。
本物に近付けるためには、現実の門をしっかり観察する必要があります。作ることを通して、実際の物をよく見る、見方が変わることにもこの活動の意義があると捉えられます。
プログラミングやテクノロジーを現実世界の問題解決と結びつけた学習
手間がかかる作業をプログラミングによって効率化できたり、コンピューターならではのシミュレーションをしたりして、多彩な学習活動を展開することにより、子供たちの可能性がより広がります。
しかも、今回の学習では現実の身近な町の施設を対象にしています。子供たちが、自分たちとも関わりの深い場所を、よりバリアフリーに改善していこう、そのために何が必要だろうかと考え、そのイメージを形にしていくことによって学びを深めていきました。
同様の学びをコンピュータを使わずに実施するとしたら、紙に設計図を描いたり手近な材料を使って模型を作ったりする活動が想定されます。しかしそれは、子供たちにとっても先生にとっても、大きな負担になってしまうのではないでしょうか。
今回使用した教育版 Minecraft は仮想世界にさまざまな建造物を作っていくことができるツールです。こうしたツールの活用によって、いろいろな力を身に付けられるのですが、従来の教育課程の枠組みでは何の教科の授業時間として位置付けるのか難しい面があります。
那須町における「NAiSU タイム」は、そうした時間を確保し、教科横断的な情報活用能力を育成するために大きな役割を果たしているのです。那須町の取り組みに関わってみると、日本全国の小中学校でもこういった時間を設けることの必要性を強く感じます。
この記事では、小学校の授業をご紹介しましたが、中学校でも Swift Playground を活用した授業を展開しています。そのご紹介はまたどこかでできればと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
みんなのコードでは、那須町のような意欲ある自治体を支援するなど、「全ての子どもがプログラミングを楽しむ国にする」というミッションの実現に向けて、今後とも多方面への働きかけを進めていきます。こういった取り組みを支えていこうと思っていただけた方に、
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