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他者の怒りに巻き込まれない|ココカリ心理学コラム
怒りの感情って怖くないですか?私だけでしょうか、この感覚は。人から向けられるのも嫌だし、直接じゃなくても誰かが怒られている場面を見るだけでも嫌な感じがするし、自分の中に湧き起こるのも嫌だったりします。
怒りの感情に恐れを感じる理由はいくつか考えられます。
1. 怒りは攻撃性と結びつくから
怒りは、他者や自分に対する攻撃性と関連しやすい感情です。過去に怒りによって傷ついた経験があると、怒りそのものを「危険なもの」として捉え、恐れを感じることがあります。
2. 怒りによる対立を避けたいから
怒りは対立を引き起こしやすいため、人間関係を壊したり、状況を悪化させたりする可能性があります。そのため、衝突を避けたいと考える人は、怒りの感情に対して恐怖を抱きやすいです。
3. 怒りのコントロールが難しいから
怒りは強いエネルギーを持つ感情なので、制御できないと暴言や暴力につながることがあります。「自分が怒りに飲み込まれてしまうのではないか」「怒りを抑えられなかったらどうしよう」といった不安から、怒りを恐れることがあります。
4. 幼少期の経験が影響しているから
子どもの頃に親や周囲の人が怒る姿を見て恐怖を感じた経験があると、大人になっても怒りに対して過敏になりやすいです。特に、怒りが暴力や支配と結びついていた場合、その感情自体を危険視するようになります。
5. 「怒りは悪いもの」という価値観
文化や教育の影響で、「怒ってはいけない」「怒るのは未熟なことだ」と教えられると、怒りの感情を持つことに罪悪感や恐怖を感じやすくなります。自分や他者の怒りを受け入れるのが難しくなり、怒りそのものに恐れることがあります。
怒りの感情の背景を想定する
怒り感情に飲み込まれないようにしたいですね。それには、上記のように、なぜ自分が怒りに恐怖を感じるのかを認知すること、また、他者が怒ってる理由を想定してみることが、対処法になります。
1. 自分の気持ちや考えが理解されていない
相手が「自分の意見が無視されている」「気持ちをわかってもらえない」と感じると、フラストレーションが溜まり、怒りとして表れることがあります。
2. 期待と現実のギャップ
「こうなるはずだったのに、そうならなかった」という期待と現実のズレが、怒りを引き起こすことがあります。例えば、約束が守られなかったり、期待した成果が得られなかったときなどです。
3. 不安や恐れが怒りに変わっている
人は強い不安や恐れを感じたとき、防衛的に怒りとして表現することがあります。例えば、「自分が傷つきたくない」「コントロールを失いたくない」という心理が、怒りに転じることがあります。
4. 自分の価値観やルールが侵害された
「こうあるべき」「これは許せない」といった価値観が強い人は、それを侵害されたと感じたときに怒りを示します。例えば、ルールを守らない人に対して怒るのは、このケースに当てはまります。
5. 過去の経験やトラウマの影響
過去に似たような状況で嫌な思いをしたことがあると、その記憶がよみがえり、必要以上に怒りを感じることがあります。
6. 身体的・精神的なストレスや疲労
心や体が疲れていると、感情統制が難しくなり、些細なことで怒りが爆発することがあります。睡眠不足や仕事のストレスなどが影響している可能性もあります。
7. 相手をコントロールしたい
怒りという強いエネルギーで相手を思い通りに動かそうとする場合もあります。特に権力や立場を利用して怒る場合、支配的な行動につながることがあります。
怒りの背景には、何かしらの「満たされない思い」や「不安」があることが多いです。ただ感情的に反応するのではなく「なぜこの人は怒っているのか?」と冷静に考えることで、適切な対応ができるかもしれません。
転移と逆転移
特定の人に対して怒りの感情が湧く場合、臨床心理学の観点では「転移」を想定したりします。転移とは、過去の重要な人物(親・教師・元恋人など)に向けていた感情や態度を、現在の別の人物に無意識に向けることを指します。
例えば、権威的な上司に対して強く反発するのは、過去に厳しい親に抑圧されていた怒りが無意識に上司へ向かっているかもしれません。パートナーに対して理不尽に怒るのは、過去の恋愛で傷ついた経験が新しい関係の中で無意識に再現されている可能性はどうでしょう。医師やカウンセラーに怒りをぶつけるのは、幼少期の親との関係が影響して「助けてくれない」と感じた時に怒りを表出する、など。
このように、現在の状況そのものが怒りを引き起こしているのではなく、過去の未解決な感情が投影されている可能性があります。
対人支援者や上司の立場にある人であれば「逆転移」も知っておけるといいです。臨床場面における逆転移とは、治療者や支援者(カウンセラー・医師・教師など)が、クライアントや患者に対して、自分の過去の感情を無意識に投影してしまうことを指します。
例えば、カウンセラーがクライアントの態度に強くイライラするのは、過去に傷つけられた人と似た言動をされて無意識に怒りが湧いているから。教師がある生徒に対して特別に厳しくなるのは、かつて自分をいじめた同級生に似た態度を取られて怒りが投影されるから。医師が特定の患者に対して苛立ちを感じるのは、自分の親を思い出して過去の感情が反応しているから、など。
逆転移は、支援者側が自身の無意識の感情に気づかないと、冷静な判断ができなくなり、相手との関係が悪化することがあります。そのため、カウンセリングや医療の場では、支援者が自己の感情を客観視することが求められます。
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「怒り」は強い感情なので、向けられると冷静でいられなくなるのが人間のサガです。誰だって反応してしまうしオロオロします。それは情けないことではありません。ただ、怒りの感情に振り回されない状態は目指したいですよね。
怒りは本来、自分の大切なものを守るための感情でもあり、適切に扱うことで自己表現や問題解決に役立ちます。「怒りを感じるのは自然なこと」と受け入れつつ、適切な表現の仕方を学ぶことで、恐れを軽減できるかもしれません。
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