私的必殺シリーズ仕置烈伝⑪惣太(必殺渡し人)
今回は必殺シリーズの第20作目にあたる「必殺渡し人」より、中村雅俊さんが演じた惣太です。
惣太とは、表稼業は鏡研ぎですが、かつては「鏡」の異名を持つ凄腕の渡し人という、日頃は女房思いの、ややお調子者ながらも気の優しいキャラクターです。
家では股引を穿いていますが、鏡研ぎの仕事は大半の客が女性のため、客寄せサービスで外回りの時のみ下半身は腰布を巻くだけにし、あぐらをかいた際に下着の赤褌が露出する格好をしています。
お直と夫婦になり、彼女を深く愛するがゆえに、裏稼業から身を退いていましたが、長屋の大家で診療所も開業している蘭方医の鳴瀧忍、通称「カマイタチの忍」と、お沢を巡る因縁で母のお鹿を殺されたことで復讐を決意した大吉とともに、裏稼業に復帰します。
惣太は人殺しである自分が人の親になることへの葛藤から、子供を作れずにいます。このように「渡し人」は主人公たちが住む長屋を中心に日常生活描写を重視した作風となっており、惣太・お直夫婦と大吉・お沢夫婦という二組の夫婦愛など、長屋での人間関係が、一つのテーマとなっています。
しかし、最終回で将軍家に追われる身となった惣太たちは彼女を巻き込むまいと黙って旅立ち、翌朝、目覚めたお直は夫も友人も一夜にして姿を消したという悪夢に打ちひしがれます。
このように殺し屋チームが解散し、メンバーが江戸を後にするという必殺シリーズには多く見られる幕引きながら、大変斬新な最終回で、取り残される側の悲劇が描写されたのも後味の悪さを残しました。だからこそ「必殺渡し人」は今も印象に残る作品になったのかもしれません。
この記事が参加している募集
両親2人の介護を一人でやってます。プロレスブログ「せかぷろ」&YouTube「チャンネルせかぷろ」主宰。現在ステージ2の悪性リンパ腫と格闘中。