あなたも、わたしも、ほかの誰ともとりかえがきかない。
昔から、人の「顔」については、多くのことが言われます。
例えば、『四十過ぎたら自分の顔に責任を持て』。
このようなことばを読み聞きすると、やはり、顔には、その人の長年の生き様や在り方などが、滲み出るものかもしれない、と思ったりもします。
◇
トーベ・ヤンソンが著したムーミンのお話の中に、ニンニという子が出てきます。ニンニは、ある事情があって、姿が見えなくなってしまったのです。もちろん顔も見えなくなって。。。
その事情とは、
かわいそうなニンニ。
意地悪なおばさんに、ニンニは、受け入れてもらえなかった。
受け入れられなかっただけでなく、ことごとくダメだしをされたも同然だったのでしょう。その結果、ニンニは、自分の顔もなくし、自分という存在がないのと同じ状況に陥ったのです。
ムーミン屋敷に連れてこられたニンニは、ムーミンママの気配りや、あたたかな優しさにふれます。
ムーミンママは、バラ色のワンピースとリボンをニンニに縫ってあげて、ニンニは、文字どおり、優しさで包み込まれていきました。
こうして、ニンニの姿は、次第に、首から下が現われてきたのです。
心の痛みを抱えて苦しんだがゆえに、姿まで見えなくなってしまったニンニに、わたしは、次のようなことばを、繰り返し、くりかえし、かけてあげたいと思いました。
あなたは ほかの誰ともとりかえがきかない
あなたは しあわせを追い求めていい
あなたは あなたを大切と思っていい
これは、『わたしとあなたのけんぽうBOOK』で紹介されている日本国憲法第13条のやさしい日本語訳で、著者・水野スウさんのお嬢様が、憲法解釈をされてうまれたものです。
最終的に、ニンニが自分の顔をとりもどすきっかけとなったのは、自分のことを大切に、そして優しく扱ってくれたムーミンママを助けようとして、怒ったからです。
わたしたちは、時として、自分を守るために、他に向かって "NO" と言わなければならない時があります。
そう、自分に対して "YES" を言うために。
ムーミンママは、ニンニにとって、大切な大切なひとになっていました。
それは、ニンニ自身がムーミンママに大事にされたから。
ニンニは、ムーミンママを通じて、自分の大切さを知ることができたのでしょう。
まさに、お互いの大切さが、行ったり来たりしたのです。
ニンニは、ムーミンママのために怒ったけれど、それは、自分のために "NO" を言ったことになるかもしれません。
自分に忠実であることが、「自分の顔」をとりもどすことにつながったのです。
◇
わたしを大切にして
わたしとは違うあなたに出会い
あなたを受け入れ
あなたを大切に思いながら
わたしの「顔」をつくっていきたい
今だからこそ、
わたしとあなたの生命、尊厳、自由、について考えていきたいと思います。
◇
最後に、現行の日本国憲法第13条を記します。
Reiko