嫌われることが苦ではなくなった日 〜相手を嫌う人の心理1〜
人に嫌われるのは、できれば避けたいと思うのが人情。どうしたら嫌われなくてすむのか考えたり、嫌われないための努力をしたり、嫌われたくないから人と接したくないということさえあるかもしれません。
『嫌われる勇気』という本が10年前に発売されて、いまでもAmazonの売れ筋で上位にあるようです。それだけみなさん嫌われるということに関心を持っていらっしゃるのですね。わたしもこの本は読んだ記憶があります。
今回は、その本とは少し違った視点からのお話です。
みんなに避けられる
わたしが心理カウンセラー養成コースに通っていた頃のことです。
毎月、週末に開かれるワークショップでは、会場で中心を囲むように椅子をU字型に並べることになっていました。休憩時間が終わって入場する時には、先の人から好きな場所に座っていくというルール。休憩時間が終わるたび、数十名の参加者がどんどん入場して座っていきます。
ある時期、わたしが席に座ると、いつもその両側がずっと空いたままという状態が続いていました。一番最後に会場に入ってきた人が、仕方なくその空いた席に着席するという感じです。
その当時、わたしはこころの中で「嫌われているんだ、、、」という、とても辛い思いを抱えていました。
毎回、休憩時間が終わって、会場に入るたびに感じる辛さ。
また、わたしの周りの席は空いたまま。
いっそのことワークショップに参加しなければ、そんな辛さも感じなくて済むのだけど、、、
「重いねん!」
それでも、ずっとがまんしていました。
そんなある日のこと。
いつも通り席に着いていると、珍しく1人の男性が隣に座りました。そして、一言。
「山根さん、重いねん!」
それを聞いた時の、わたしのこころの中の様子は想像できないかもしれません。まるで、深い深い霧がすーっと晴れていくような気がしたのでした。
「そうか!
自分自身が嫌われていたわけではなかった!
自分が周りの人に感じさせる重さが嫌われていたんだ!」
と気づいたのです。
嫌われているという思い→気が重くなる→さらに避けられる
そんな悪循環にハマってしまっていたわけです。
それに気づかせてもらった瞬間、こころがすごく軽くなりました。
それ以来、徐々にわたしの周りの席が空いたままになることはなくなっていったのです!
投影という心理
養成コースでは、人の心理に関することを学んでいました。そんな学びの一つに「投影」という言葉があります。
投影とは、自分のこころの中にある要素を、自分以外の何か、あるいは誰かに、無意識に重ね合わせてしまうという、こころの性質のことです。
例えば、心理カウンセラーの間で常識的になっていたことの一つにこういうものがあります。仕事の問題の相談があったら、お父さんとの関係を疑ってみる。
仕事の問題を相談される場合、男性の上司とうまくいかないという話がとても多いです。
わたし達は、お父さんに対するイメージを自分より上位の男性、ここでは、男性の上司に無意識に重ね合わせてしまいます。そのために、お父さんのことが嫌だと思っていると、男性の上司との関係がうまくいかなくなるわけです。
この話をすると、ほとんどの人の反応はこうです。
「そんなこと本当にあるの?」
ところが、そういう方のお父さんのイメージ、男性の上司のイメージについて話をお聴きしていくと、「あ、本当だ!」ということになります。
こころの中で無意識に起こっていることなので、わたし達はほとんど気づくことがないのです。
貴重な体験
ここで、なぜ投影の話をしたかと言うと。
養成コースの中で、わたしはたいてい他の人よりも年齢が上だったので、お父さんのイメージを重ね合わせられることが多かったのです。
お父さんとの関係がよくなかった人は、わたしとあまり接したくないわけです。ただ、学びが進んでいくと、自分がお父さんのイメージをわたしに重ね合わせてしまっていることも理解できるようになってこられます。
そんな方と話をする機会ができると、こんな風に言われました。「ごめんなさい。山根さんのことが嫌なわけではないけど、お父さんのことが許せないので、やっぱり近づくのは苦手なんです」
こんな話をご本人から聴くことができるなんて。とても貴重な体験でした。
例え、嫌われた形になっていたとしても、わたし自身とはまったく関係のない要因もあることが実感できたわけです。
人の心理についての学びが進んでいる人でさえ、そんなふうに、自分が感じるものにはなかなか逆らえません。ましてや、それを知らない人なら、自分の感情・感覚を疑う余地すらないでしょう。
同じようにして、
お父さんとの関係がよくない人だと、男性の上司を好きになれない。
お母さんとの関係がよくない人だと、女性の上司を好きになれない。
と言うことが起きてきます。ただ、人の心理については、例外はつきものですよ。
嫌いなのかなと思いながら
これを知って以来、わたしは、近づくのに抵抗を感じていそうな年下の人に対する接し方が変わりました。最低限のコミュニケーションは取りながら、無理に近づくことはせず、そっとしておくようにしています。「お父さんのことが嫌いなのかな」とこころの中で思いながら。
そんな人でも、なんらかの機会で、身近に話すことができるチャンスが訪れることがあります。その時には、歓迎して素直にお話しします。
すると、その人も、それまで入っていた力が抜けて、素敵な笑顔を見ることができるのです。
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