子どもが不登校になったら大人に読んで欲しいノート
はじめに
子どもが不登校になると、親としては焦りますよね。焦りから色んな問いかけをして子どもを追い詰めてしまいそうになるかもしれません(私がお受けしてきた不登校の相談では、実際に激しく衝突するケースも多いです)。
親は焦り、子はわかってくれない親から、さらに心理的にも物理的にも引きこもっていきます。またうまくやれない自分のことを、親も子も自分を責め始めると、親子関係はますます悪化していきます。
原因を求めれば求めるほど、関係は煮詰まり、息苦しくなり、極限まで高まった緊張感は家族の崩壊の危機にまで発展しそうになることも少なくありません。
そんな不登校ですが、対応について調べてみると色んなサイトで、同じようなことが書かれています。一方で、少数ですが過激な表現で揺さぶるようなサイトもありました。
ネットで不登校を調べていると、あっという間に何時間も経っていたのに、結局、我が子へはどうしてあげたらいいかがわからない。そんな経験が皆さんおありなのではないでしょうか。
それはどのサイトにも情報はあっても、大切なことが簡単にしか書かれていないから、なのかもしれません。
ここでは一般的な事を書いた後、大切なことをしっかりと書いていきたいと思います。
私は、不登校の歩みは、ドラゴンクエストというゲームに似ていると思っています。どこが似ているのかは、読み終わった時には伝わりますように…
不登校とは
文部科学省ホームページより引用
これは文部科学省が示している定義になります。年度間で30日以上の長期欠席者のうち、上記のような状態があれば、不登校という状態と判断されます。30日というのが便宜上の線引きとなります。
一般的な感覚としては、理由もわからず週に2、3回休むようになことが繰り返され始めると、不登校と認識されるようになる印象があります。
大切なことは、『不登校』か『不登校じゃないか』に囚われないことです。理由のわからない休みが増えてきていることを落ち着いて受け止めましょう。
不登校の数
H30年度
(中学校)
おおよそ12万人(全生徒数は役328万人)
(小学校)
おおよそ4万5千人(全生徒数は645万人)
余談ですが、小中を合わせた不登校者数は、全国で16万人もいるんですね。不登校は特別な問題や病気ではないことがわかります。どの子にも陥る可能性はあるということも忘れないで下さい!
これだけ多いということは、おそらく学校教育システム側にも大いに問題をはらんでいるのだと推察されます。とはいっても、大きなシステムというのは急には変わりません。学校へ変化を期待しても効果は薄いでしょう(より多くの人からの要望を長期的に挙げていくことは未来の子どもたちにとってとても重要ということもお忘れなく。)
何かしらの問題をはらんだ学校教育システムの中で、耐えきれず、もしくは愛想をつかし、子どもたちは不登校へと傾いていくのでしょう。と同時に、子どもたちは道を見失います。これまで目の前には大人が用意した道がありましたが、その道を歩む自信をなくし、その道への安心や信頼をなくしてしまいます。
簡単ではありませんが、不登校を「自分の道探しの第一歩め」と親も子も捉えら直すことが大切です。
推移グラフ (平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について (PDF:5.1MB) より抜粋)
不登校のタイプ
不登校には7つのタイプがあることがわかっています。
1. 学校生活上の影響
学習に遅れがあったり、いじめの被害を受けていたり、先生が怖いなど学校内に不登校の要因がある場合はこのタイプになります。
学習面での遅れ・不安がある場合は、学力向上や適切な課題設定を図ることで、学校に通いやすくなることがあります。
学校・家族とチームを組んで協力しあいながら、その子に合った個別の学習方法を見つけることが大切です。
関係のある障害
LD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)など、なんらかの障害や発達特性の影響で、学校生活に困難が生じている可能性もあります。また、最近ではHSC(敏感すぎる子どもたち)なども言われるようになってきました。できるだけ、スクールカウンセラーや子ども家庭センター、精神科などの専門家・医療機関を利用し、尋ねて見てください。素人診断は状況を悪くすることがあります。同じ言葉でも、親からの言葉と専門家からの言葉では受け取り方が違います。慎重にご自身の役割を意識しながら声かけしましょう。
また、いじめや嫌がらせによって不登校になった場合には、心のケアが重要です。教員や家族が問題を軽視せず、徹底的に本人を守ることが大切です。守るとは被害者が、自分が悪かったと誤解しないように、適切な対応をしていくことを含んでいます。
子どもを守れるのは大人だけであることを忘れないで下さい。
2. あそび・非行
中学校・高校と年齢が上がっていくに連れて増えていくタイプです。
家族関係もうまくいっていない場合や問題を抱えているケースも多く、子ども自身だけでなく、その家族や周りの人々へのサポートも必要になるケースが多いです。
このタイプの場合は、仮に不登校になっても引きこもることはなく、非行グループに所属したり、深夜に出歩いたりする子どもも多いようです。
犯罪などに巻き込まれる可能性があるため、遅刻や早退の増加、無断欠席、校則違反など、細かなサインを見逃さずに、早い段階から適切な対応をすることが大切です。
尚、叱責や指導をすると、反発して余計に非行に走る可能性もあるため、まずは子どもの居場所を作ってあげることが大切です。時間をかけ優しさを持って、自分を大切にすることを伝えていきましょう。
厳しく接しても、枠は大目に見てあげる方が、総合的に考えるといいような場合も多いと思います。繋がりながら大切なことや適切な自己表現、心のコントロールについてを教えていってあげましょう。
3. 無気力
「なんとなく行きたくない」「理由は分からないけど行きたくない」といったよに、いじめや学業不振など、明確な理由があるわけではないのが特徴的です。
家族としても原因が分からないために対応方法が分からず、また、「怠けているだけだ」と問題を軽視して無理に連れて行こうとする人も多くいます。
しかし、実際には、幼少期の経験が深く関係していたり、子ども自身の自尊心や自己肯定感が著しく低いゆえに意欲が湧かなかったりすることもあります。
無理に学校へ行かせようとするのではなく、まずは子どもの興味や意思を尊重し、少しずつ自発性や主性を育んでいきましょう
4. 不安など情緒的混乱
「不安など情緒的混乱」は、「無気力」と似ている場合が多いのですが、対応方法はまったく異なります。
よく子どもを見て、話を聴いて、情報を整理して、適切な判断をすることが重要です。
「学校、明日は行く」と言い、準備もするのに行けない。朝になっていきなり頭痛や体調不良を訴えてくる。午後になったら普通に元気にしている。学校のことを話そうとすると急に不機嫌になる。
などなど、気持ちが安定しないので、家族は「一体何が望みなの?」「本当は行けるのにサボってるんじゃないの?」といったことを考えがち。
しかし友達と会えなくなったり、休むことに罪悪感を抱えていたりして、本人には大きな負担がかかっています。
正しい対処法を知り、教員や周りの人と連携しながら対応することが大切です。
このタイプはさらに4つに分類できます。
(1)分離不安によるもの
分離不安とは、子どもが親や保護者、特にお母さんと離れることに対して強い不安を感じることを言います。
それゆえにクラスに馴染めず、学校へ行けなくなるのです。
この場合は、無理にお母さんと離そうとするのではなく、お母さんが送り迎えをしたり、クラスまで同行する「母子登校」を認めたりしながら、少しずつ他のものへの興味を持つよう働きかけるようにします。
また、子どもではなく母親自身が子どもと離れることに対して不安・ストレスを感じ、それによって子どもを不安定にさせている場合もあります。
その際にも、同様にいきなり親子を引き離すのではなく、安心感を与えながら少しずつ働きかけていくようにしましょう。
(2)息切れによるもの
「親の仕事を継ぐ」「優秀な成績をキープする」「難関大学に合格する」など、家族や教員、周りからの期待を受けすぎると、やがて子どもはそのプレッシャーに耐えられなくなります。
「息切れ」の状態になり、学校へ行けなくなるのです。
ここで重要なのは、いかに子ども自身に任せるか。
これまでずっと「親の期待に応えないと」「周りに認められないと」と他者を基準にして生きてきたわけですから、少しずつ自分を基準に、自分の意思で動けるようになる必要があります。
長い目での支援が必要となるでしょう。
(3)甘やかされによるもの
家族・周りの人から甘やかされすぎると、一般的なマナーが身に着かなかったり、我慢できなかったり、コミュニケーションがうまくとれなかったりすることがあります。
これに関しては、子ども自身へのアプローチよりも、保護者・親への対応のほうが大切になるでしょ。
子どもを甘やかしすぎていなかったか、子どもがやるべきことを代わりにやっていないか、過干渉になっていないか、1つずつ振り返っていきましょう。
甘やかしと捉えると、本人にも家族にも反感を持ちやすいです。一生懸命育ててきて、そう言われると親としては辛いものがあります。
甘えというよりかは、社会的経験の不足と私は捉えています。きっと適切な課題を用意し、気持ちを根気をよく支え続ければ、どんな子も少しずつ経験値を獲得し、それが自信になり、次のチャレンジに繋がり、いい循環が生まれてくるように思います。
子どもに対しては、自立心を育むために、少しずつ子ども自身ができることを増やしていくのが大切です。
家事を手伝う、朝1人で起きる、10分勉強するなど、小さな目標を用意して、クリアしながら自信をつけていきましょう。
(4)生活基盤の不安定によるもの
離婚や再婚、家庭内不和など、家庭・生活に大きな変化があると、その不安から不登校になることがあります。
子どもに対するサポートも大切ですが、家族も含めて、時には専門機関の力も借りながら解決していくことが重要です。
5. 意図的な拒否
「学校よりも自宅学習のほうが効率よく学べる」
「将来やりたいことがあるので学校へは行かずにその準備がしたい」
「集団行動は嫌いなので家で1人で過ごしたい」
などなど、自ら考えて学校に通うことを辞める人もいます。
また、親が学校に価値を見出しておらず、その考えに影響されて行かなくなる子どももいるようです。
家にいることをストレスに感じず、むしろ積極的に学び、人と接する子も少なくないので、そのまま意思を尊重するのも良いでしょう。
もし周りが学校へ行くことを望む場合も、無理に説得するのではなく、あくまで本人の意思を最大限尊重した上で、話し合うことが大切です。
6. 複合
最近では、このタイプが最も多いように思います。
いじめと家庭環境など、いくつかの要因が重なって学校に行けなくなった場合がこのタイプになります。
安直に「このタイプだ」と決めつけ、対応を急いだりせず、子どもの話をよく聴いて、多くの情報を整理して対応方針を決めることが重要です。タイプ論はあくまでも関わり方や捉え方の手がかりをくれるものであって、それがわかっただけでは、変化はおきません。焦らずに、焦らずに。
相談機関や専門家のサポートを受けながら、どういうタイプかどうすればいいのか、少しずつ考えていきましょう。複数の目で見ることで、子どものそれまで隠れていた面が見えてくることもあります。
7. その他
すべての不登校生が、上記6つのタイプに分類できるわけではありません。
ここまで要因をみてきましたが、矛盾するよようなことをいって申し訳ないのですが、原因や犯人捜しをしないことも、時には、大切です。わからないものを無理にわかろうとすると、犯人に問い詰めるような事情聴取になってしまいます。そうなると、その重圧に押し潰されそうになった子は、その場しのぎ的な理由を言ってしまいます。それを聞いて安心した親は、その原因となる理由を取り除こうと必死になり、結果取り除けても、不登校は改善せず、大きく落胆してしまいます。時には怒りを覚え、また子を問い詰めてしまうかもしれません。
今もっとも大切なのは繋がり続けられる関係を維持することです。家族との繋がりが切れた子は、自分の道を見失い、家族からは見放され、不安と孤独の中に取り残されてしまいます。小さな身体と心には、大きすぎる暗闇に飲み込まれてしまいます。それほど辛いことはありません。
家族で話し合うと、衝突してしまうかもしれません。時には衝突も必要かもしれませんが、関係が断絶してしまっては大変です。信頼できるカウンセラーを頼ってもいいでしょう。
ここまでは不登校の一般的なものを知識としてみてきました。これらを踏まえて、どのように理解し関わるかを次に書いていこうと思います。
不登校はドラクエのスライム退治
不登校にも色々なタイプがあることがおわかりいただけたと思います。
そして、それぞれのタイプによって、必要とされる『心の作業』が異なってきます。
さて、ここで冒頭のスライム退治のお話を思い出して下さい。皆さんはドラゴンクエストというロールプレイングゲームをご存じでしょうか?
主人公は冒険者となり、危機的なイベントが起きます。そして安全な街から旅たつことを余儀なくさらるのです。町を1歩踏み出すと、いつ魔物に襲われるかわかりません。レベルの低いうちは、何が出るかヒヤヒヤしながら恐る恐る街の周りを探索します。
例えば、自分のレベルに合わないスピードで、どんどん物語をすすめると、ある日街から出ると、モンスターが強すぎて、途端にやられてしまいます。それでもゴールド(ゲーム内通貨)があるうちは、教会で生き返らせてもらって、再び冒険にチャレンジします。けど勝てない。ゴールドも底をついて、いよいよ街から出られなくなってしまった。仕方がないから、カジノやミニゲームで遊ぶ。
すべての不登校がこれに当てはまるとは思いませんが、多くの子に通じるものがあるように思います。
ここで大切なのが子どもを『理解すること』です。どんなモンスターにやられて自信をなくしてしまっているのか。何のステータスが不足しているのか(攻撃力?防御力?逃げ足?)。装備はどう?そんな風に思いながら、子どもと話してみて下さい。子どもは自分ではわかっていないことが多かったり、弱点を口に出すのを怖がっていたりします。
そのまんまの言葉を口にすると、大人から「何弱気なこといってんの?」「みんなそうだから?」なんていう言葉が飛んでくるのが怖くて、恐れているのです。心を開くということは、最も繊細で壊れやすい部分を見せてくれるということです。心を挫いてしまわないように言葉に気をつけながら、シャボン玉を割らないようなイメージでそっと受け止めてあげて下さい。
そうすると、今まで聞けなかった、本当の心の声が聞けるようになり、どんなことに困っているかが見えてきます。
困っているポイントが見えてきても焦らないで下さい。大人や親ができることはせいぜいサポートすることだけ。できるなら、『賢者』というジョブになりきりパーティーに入りましょう。『賢者』は力も弱く、防御力も弱い。けれど、回復魔法が使えたり、新しいものの見方を示してくれる存在です。
勇者が悪戦苦闘しているのを後ろから支える存在です。
「ああ今この子は、スライム退治をしているのだな」と思いながら、見てあげて下さい。
ここまで来れば、読者の方ももうおわかりだと思います。
戦っても今は勝てないモンスターとは、戦わずこれまで勝ってきたスライムをコツコツ倒しましょう。今度は余裕で倒せるようになるまで。そうして、またひとつ強いモンスターを倒して、少しずつレベルを上げていきましょう。スモールステップでクリアしていくのです。
スキルを覚えることも有効です。SST(ソーシャルスキルトレーニング)と呼ばれる訓練は、魔法の書のようなものといえるかも知れません。
この冒険は途中で投げ出すことはできません。
そして終わりもなく、いつまでも大人や親はパーティーにいてあげることもできません。
学校復帰を直接的に目指すよりも、その先の将来的な精神的・経済的な自立と自分の冒険を豊かに楽しめるようになることを見据えて、長い目で接して行くことが大切だと私は信じています。
不登校という難題を通して、スライム退治は冒険の基礎ということを子どもが学んでくれたなら、それは“生きる力”になるように思います。
どうかスライム退治のことを忘れず頭の片隅に置いておいて下さい。そうして、子どもが何か前向きな動きを見せたとき、思い出して背中を押してあげて下さい。
カウンセリングの難しさ
これまでのカウンセリングは対面式であることが前提でした。そのため、家族や本人にカウンセリングを受けたいというニーズがあっても、なかなかハードルが高かったように思います。
人に会うことがとても怖く感じる時期というのが、不登校ではあります。そんな時期に外へ出かけるなんていうのは、ほとんど不可能なことでしょうし、できても継続することは難しいように思います。
実質的にカウンセリングは不登校で悩んでいる子どもたちには充分に役に立ちにくいのです(それでも親御さんとのカウンセリングを通して、子どもへのポジティブで優しい影響を与えられることが多いのですが)。
不登校はサナギ!?
外からは心の中で何が起こっているかわかりにくいもの。全く変化がないようで、革新的な変化を少しずつしているのです…
それでも親としては不安や心配がつきないものですよね。少しでも何かしらのお役に立てるかもしれません。
最近メディアで「何もしない人」が取り上げられました。何もしない人が求められるような時代なのかもしれません。臨床心理学でいうところの「being」。そこに“ただいるだけ”の関わりに救われる事もあります。何も気負わず、ありのままでも受け入れてくれる人。そんな人との時間は、自分のできること、したいことを見つける時間になってゆくのではないでしょうか。
インターネットを使ったビデオ通話なら、外出する必要もなく、最小限のハードルにすることができます。解決よりも、繋がり続けることがなにより大切な不登校において、こんなぴったりな方法はありません。よろしければ一度ご相談下さい。