大きな木

シェル・シルヴァスタインという人が描いた、
ベストセラー「おおきな木」という絵本があります。

1976年に日本に入ってきた絵本で、
大人になっても意味を持つ楽しめる作品です。
原作の題名は「THA GIVING TREE」
「与える木」という意味です。

この本は、村上春樹さんが翻訳したことでも
知られていると思います。

この絵本の物語には「リンゴの木」と、
「少年」が登場します。

彼らはとても仲良しで、幼い頃の少年は、リンゴの枝に
ぶら下がって遊んだり、葉っぱでかんむりを作ったり、
木の根元でお昼寝をしたりして過ごして、
リンゴの木はそれをとても幸せに感じていました。

やがて少年は大人になります。

ある時、リンゴの木に「お金が必要だ」と言います。
リンゴの木は、リンゴの実を売ってお金にするように
言いました。

さらに少年は「家が欲しい」と言います。
するとリンゴの木は、自分の枝を切って持って行って
家を作るように言います。

さらに年月が過ぎて、
少年は「旅に出るための船が欲しい」と言います。
リンゴの木は、自分の幹を切って船の材料に
するように言いました。

さらにさらに長い時間が流れると、
年老いた少年がリンゴの木に会いに来ました。
リンゴの木は
「もうなにも与えるものがない」と静かに言います。

年老いた少年は「僕はもう何もいらない。
腰を下ろして休める、静かな場所があればいい」と言い、
その切り株に腰掛けてやすらぎの時を過ごしました。

というお話でなんですが。

「リンゴの木」の生涯は、大好きな少年に自分のすべてを「与える」ためだけの人生だったのですね。
愛する者に何もかも与え尽くして生涯を終えることは、
この上なく幸せな生き方だったのではないかと思います。

「与える」ことだけで満たされる生き方もあります。
そして、与えれば与えるほど心は満たされるもの
なのだと思うのです。
そして、すべてを与えられた少年はやがて、
年老いた後の生活をリンゴの木とともに過ごします。

お互いの価値を感じながら生きる。
幸せとは、やはり「感じる」ものなのですね。

しかし、このお話のもっと奥には、自然を思うままに
支配する人間の罪深さを表現しているとも思いませんか？
自然を破壊する身勝手さを感じました。奥深いですね。

どんな人間関係においても、その基本である「優しさ」は、相手に与えるためだけではなく、自分自身への贈り物でも
あるのではないかと私は思います。
お互いに与え合う心が大切な人生を送る秘訣なのでは
ないでしょうか。自分の身勝手さで
相手を傷つける事のないように気をつけたいですね。