ペッポコ釣り師、八丈島に行く②
夕方の堤防には誰もいなかった。
都会の堤防では考えられない。
これは今まで釣りをしていたボクの肌感覚なのだけど、釣り場というものは田舎に行けば行くほどあまり人がいないような気がするのだ。都会の堤防は平日でも人が多く、入るのに一苦労の時があるが、田舎に行けばいつ行っても人が誰もいないということが少なくない。
八丈島でも例外ではなかった。
恐らく、八丈島まで行くような釣り師は堤防で釣りなどしない。
大抵、沖磯に渡船で渡してもらうなり、船に乗って沖で釣りをしたりするのだろう。
これと同じような現象が、八丈島以外の場所でも起こるから、田舎の堤防には釣り師はあまりいない。
理由としてはそんなところだろうか。
ボクのようなヘッポコ釣り師にとってはありがたい話である。
さて時間は夕方。
ボクは夕陽を眺めながら、カゴ釣りの仕掛けを作って遠投した。
ウキはすぐに沈んだ。
おお!!
すごい!!!!
そう思ってボクはアワセを入れる。
左右に激しく走る青物特有の引きが竿を通して感じる。
以前にサバを釣った時と同じ感覚だ。
正直、こういうのですごく嬉しい。
何を釣るのかははっきりしないで釣りに行くことが多いボクなのだけど、結局は何かが釣れれば楽しいのだ。
海面から顔を見せてくれたのはムロアジだった。
後で聞いた話だが、伊豆七島あたりの離島ではよく釣れる魚で、あの『クサヤ』の原料になっている魚らしい。
あとで刺身にして食べてみたのだけど実に美味しい魚だった。
余談になるがこの日の夜にホテルの夕食にクサヤが出た。
以前から食べたいと思っていたのでちょっとワクワクしながら、クサヤを箸でとって口に入れた。
匂いは確かに強烈だったけど口に入れてしまえば美味しいと信じていたのだが……。
残念なことに、その思いはいとも簡単に裏切られた。
てゆうか……
匂いは別に我慢できるのだ。
だから口に入れるのも全然抵抗はなかった。
ただ口に入れたら、深い味わいが口いっぱいに広がると信じて疑わなかったボクは、普通に期待を裏切られた。
まず口の中にあの匂いは残ってしまう。
正直な話をすると不味くはないのだけど、そこまで美味しくもないというのがボクの感想だ。
ただ、美味しいと評価する人も少なくないので、将来的にはもう一回ぐらいチャレンジしてみたいと思っている。
八丈島での数日間は夢のような日々だった。
エサを入れて仕掛けを投入すると、10分に1回ぐらいは魚信があるのだ。
そして合わせると大抵はかなりの大物だった。
ブダイやカッポレなども釣れたし、ムロアジはもう嫌だというぐらいに釣れた。
本当に面白かった。
八丈島での釣りは今でも夢にみるぐらい、ボクには忘れられない旅である。
機会があれば、今度は息子を連れて行ってやりたいと思う。