船に乗っても……
基本的にここのところ、釣りに行けていない。
だから久しぶりに行く釣りは確実に釣れるものが良いと思い、必然的に釣り船に乗ってからのアジ釣りを選択することが多くなる。
まあ、船に乗ってしまえば船酔いさえしなければ最低でも1匹は釣れる。
今までも船に乗って釣れなかったことなどなかったから、忙しい毎日の合間に行く釣りは基本的には船の乗ってからのアジ釣りである。
さて……
このアジ釣りなのだけど、行く前はどれだけ釣れるんだろうかと思いながらワクワクしていくのだけど……
いざ実釣してみると……
あれ?
釣れないなあ。
てゆうか魚信すらないなあ……。
なんてことが結構ある。
しかも隣は釣れているのだ。
『やった――――!! 釣れたよ』
隣に座っている親子が大喜びしている。
手元には良い型のアジが元気よくピチピチと跳ねている。
おかしい。
なぜこちらには釣れないのだ。
最近、こんなことが多い。
たぶん、ただ単にボクがヘッポコなだけだと思うのだが、それにしてもあからさまに差がつくのはいくら考えてもおかしいと思うのだ。
何かがおかしい。
いや、以前は普通に釣れていたのだ。
同じ釣り方をしているのに、ここ最近はダメなのだ。
まあ、それについてはいろいろ考えたのだけど……一言で言えば以前と今回は条件が違うのだろうと思う。
そこが釣りの面白いところではある。
条件が違えば、以前と同じ釣り方をしたとしてもなかなか釣れないのだ。
だから周りがどうあれ、こちらは余裕で構えていればいい。
そう思い、仕掛けを投入してアジの魚信を待つことにする。
その間にもタナを変えたり、仕掛けを止める時間を変えたり……。
てゆうかなんでボクの仕掛けには喰ってこないんだ?
そんなことを思って仕掛けをゆっくり回収しようと思ったら……
『やった――――! また釣れた!!』
またもや隣に座っている親子は大喜び。
おお。
楽しんでるね。
ボクはリールを巻いて仕掛けを回収しようとする。
ん?
重いな。
何か釣れたか?
よしよし……。
そう思ってリールを巻く。
水面にビシと呼ばれるコマセを入れておく錘付きのカゴが見える。
そしてさらに深い所には何やら隣の親子の仕掛けが……。
ああ……オマツリか……。
きっと仕掛けが海底についてすぐに糸ふけをとっていないから隣の人と仕掛けが絡まってしまうのだ。
ビギナーになりがちなミスであるし、釣りの経験が多少ともある者でも船釣りでオマツリを完全に避けることはできない。
これはお互い様だから仕方ないのだ。
『こっちの仕掛け切っちゃいますね』
アジ釣りは手返しよく釣らないといけない。
だから仕掛けが絡まってしまったならさっさと切って新しい仕掛けを付けてしまった方がいいのだ。
『すみません……』
『大丈夫ですよ――――』
ちょっとしょんぼりしている親子にボクは笑顔で言う。
申し訳なさそうにする必要なんかない。
てゆうか釣れてよかったじゃん。
楽しいからまたアジ釣りに行きたいって思って帰ってもらいたい。
ただねえ……。
もうちょっとこっちにもアジが釣れてくれないかなあ。