知ってるようで知らない「酵素」の基礎知識
「酵素」が用いられた商品は、ドリンクやサプリメントなど美容・健康関連商材から洗剤などの生活消費材まで幅広い分野で見かけ、かつ、さまざまなメーカー・ブランドから種類豊富に展開されています。
酵素洗顔や酵素パックなど、スキンケア化粧品としても多くの商品が販売されいるのは、みなさまもご存じかと思います。
多くの商品に用いられる酵素ですが、そもそも酵素ってどんなものかご存じですか?
「酵素」といっても、その種類は1つではないんです。
そこで今回は、酵素について「そういえばよく知らないな」という方に向けて、
・性質
・特異的な反応
・分類
について解説していきます!
酵素のことを知ろう
■酵素とは
生物が生きていくうえで必要な消化・分解・吸収・代謝などの様々な反応を促進する働きを持つたんぱく質の1種です¹⁾。
酵素は、化学反応において自身は変化せずに特定の反応を促進させる‘‘触媒作用‘‘を持ちます。
例えば、消化について説明すると、酵素の触媒作用によって化学反応を促進し、吸収を高めます。
■酵素の反応メカニズム
酵素の反応は鍵と鍵穴の関係に例えられます。鍵穴である酵素は、鍵である特定の物質(基質)のみを認識して化学反応を起こします。これを基質特異性といいます¹⁾。
酵素の種類が1つではなく、膨大な数存在する理由が理解できますね。
その鍵穴部分が活性部位と呼ばれ、活性部位の形と基質の形が合わないと酵素反応が起こりません。
また、酵素の触媒機能を発現させるには、酵素と水との相互作用が大きな役割を果たしています。
鍵と鍵穴が合致するだけではなく、酵素を活性化させるには水と反応させることが重要です。
そして、酵素反応を最大限に活性させるには最適温度、pHが存在します。この条件は酵素ごとに異なります。
つまり、酵素の活性には、
✓酵素の活性部位と基質の形が合うこと
✓水と反応させること
✓温度・pHが最適化されること
が重要な要素となります。
■酵素の分類
酵素を大きく分類すると、体内で作られる酵素「体内酵素」と、人体以外の生物に存在する酵素「体外酵素」があります²⁾。
【体内酵素】
3000種類以上³⁾も存在していると言われている体内酵素はその働きに応じて、「消化酵素」と「代謝酵素」に分けられます。
「消化酵素」は、食べ物から摂取した栄養素を、吸収しやすい状態まで分解する働きを担います。
例えば、「消化酵素」の1つであるアミラーゼは、デンプンを分解して胃で消化をスムーズにする働きを持っています。
「代謝酵素」は、食べ物から摂取した栄養素を、新陳代謝・デトックス・自然治癒力・免疫力に関わるエネルギーに変える働きを担います。
もちろん皮膚にもたくさんの「代謝酵素」が存在していて、例えばカスパーゼ14は皮膚角化細胞に豊富に存在し、タンパク質であるフィラグリン前駆体を分解して天然保湿因子をつくり出します⁴⁾。
【体外酵素】
体外酵素には、人体内の腸内細菌などの細菌から作られるものと、動植物から作られるものがあります。
その中でも、動植物の中に含まれている酵素は「食物酵素」と呼ばれています⁴⁾。
「消化酵素」や「代謝酵素」は人体内で自分で作っているのに対し、食物酵素を含む「体外酵素」は人体外で作られるものになります。
また、体内酵素と同じ名前の酵素(表示名称)でも、体外から作られた酵素を取り込む場合は、「体外酵素」とされます。
つまり、どこで作られたものかで分類が変わってくるんです。
■普段の生活で使われている酵素
日常生活で使われている酵素は、どのようなものがあるのでしょうか?
酵素はさまざまな場面で使われていて、実は意外にも身近な存在なんです。
生活の中でよく使われている酵素商品を一部ご紹介しますので、みなさんの身の回りを想像しながら読んでみてください!
【酵素洗剤】
酵素洗剤は、衣類の洗濯物や食器洗いに使用され、界面活性剤だけでは落ちにくいタンパク質や脂質などの汚れを分解し、落としやすくする効果が期待できます。
洗剤に用いられる酵素には、タンパク質を分解する「プロテアーゼ」や脂質を分解する「リパーゼ」、デンプンを分解する「アミラーゼ」、繊維の奥に入り込んだ汚れを落としやすくする「セルラーゼ」などがあります⁵⁾。
【ドリンク・サプリメント】
酵素ドリンクは、生の野菜や果物を長時間かけて発酵・熟成させて作られるドリンクです。サプリメントは、酵素を含む植物エキスを凝集して粉末化したものです。
食物酵素は、酵素ドリンクなどだけでなくいろんな食材に含まれる酵素です。理論上は、口から摂取すると酵素の働きを発揮する前に消化吸収されてしまうと言われています⁶⁾。
一方で、酵素サプリメントなどの微生物が作った消化酵素などを粉末化したものは、消化の負担を軽減できると言われています⁷⁾⁸⁾。
理論上さまざまな説がありますが、体外酵素が働いたことによる効果なのか、もともとあった体内酵素が働いたことによる効果なのか、検証するすべがないためであると考えられます。
【酵素洗顔】
酵素洗顔は、古い角質や皮脂を分解して落としやすくする効果が期待でき、商品としてはパウダー状のものやペースト状のものがあります。
洗顔料に用いられる酵素には、例えば、‘‘パパイン‘‘というパパイヤの実から抽出したものや‘‘ブロメライン‘‘というパイナップルから抽出したものなどがあります。
これらは、古い角質や角栓を構成するケラチンタンパク質などを特異的に分解する働きを持ち、「タンパク質分解酵素」と言われます。
また、酵素洗顔には「タンパク質分解酵素」以外にも「脂質分解酵素」という皮脂や角栓などを構成する脂質を特異的に分解する働きを持つものが配合されることもあります。
‘‘リパーゼ‘‘は、「脂質分解酵素」の代表的なもので果物などに多く含まれています。
今回は、酵素についてとその働きについて解説しました。
酵素はそれぞれの使用場面や働きに合わせて選ばれているんですね。
次回は、‘‘美容‘‘に使われる酵素に着目して、酵素の活性化の条件から考えられる商品選択や使用方法などの解説をしたいと思います。
この記事を読んで、酵素について少しでも理解が深まれば幸いです。
(執筆:平田)
参考文献)
1)酵素反応の基礎 ―名前はよく聞くが,よくわからない「酵素」を知るために―,谷川実,化学と教育,66巻,,584-587,12号(2018 年)
2)酵素の働きをわかりやすく解説!酵素の種類を知り、それぞれの働きを理解して正しい知識を身につけよう、ハピネスダイレクト
3)医者も知らない酵素の力,E・ハウエル,中央アート出版社,(2009)
4)皮膚保湿に関与する酵素、カスパーゼ14の合成促進剤,東京電機大学
5)酵素洗剤のおすすめ12選。メリットやデメリットもあわせて解説、SAKIDORI
6)【管理栄養士執筆】酵素ドリンクってどんなもの?おすすめ6選を紹介、EPARK
7)酵素ドリンクを使った ファスティングによる痩身効果,診療と新薬 2017; 54: 1004-1011
8)第33回 『人間の体の中の酵素は外から補えるの?』 | オーエム・エックス博士の知恵袋、腸内フローララボ