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見た目だけじゃない!知られざる化粧品容器の世界

突然ですが、みなさんは化粧品の「容器の役割」を意識したことはありますか?

私自身、かわいい見た目の化粧品容器には気分が上がりますが、化粧品開発者が容器を選ぶポイントは見た目のデザインだけではありません。
化粧品の容器には、中身の品質を守り、最後まで心地よく使いきれるようにするという重要な役割があり、開発者は中身との相性や使用性などを考えて適切な容器を選定しています。

今回はそんな化粧品容器の世界を、開発者の目線でご紹介します!


化粧品容器の種類

化粧品の容器には、化粧水や乳液などに使われる「ボトル容器」、クリームやジェルクリームなどに使われる「ジャー容器」や「チューブ容器」、シャンプーなどに使われる「ポンプ容器」などたくさんの種類があります。

主な化粧品容器の種類

材質も、プラスチック、ガラス、金属などさまざまで、中身との相性や使いやすさ、コストなどを考えて選定されています。

化粧品容器の役割

化粧品の容器には主に3つの役割があります。
①デザイン性
②使用性(使いやすさ)
③中身の保護

これらの役割について詳しく解説します。

①デザイン性

容器のデザインには、見た目で商品のコンセプトや世界観を伝える役割があり、商品の購買にも影響を与えます。

日本トレンドリサーチとスプリックによる調査では、33.7%の方が化粧品を購入する際、パッケージに惹かれて購入したことが「ある」と回答しています。

日本トレンドリサーチ・化粧品のパッケージに関する調査³⁾より引用

また、使用者の好みに合った素敵な外観の容器は、洗面台に並んでいるときや化粧品を使用しているときも、使用者の気分を上げて幸せな気持ちにさせてくれます。

②使用性(使いやすさ)

化粧品は嗜好品であると同時に日常的に使用するものなので、化粧品容器には毎日使いたいと思えるような使いやすさも求められます。

容器の使いやすさを左右するポイントには以下のような点があげられます。

・容器の大きさ、重さ
・持ちやすさ、すべりにくさ
・フタの開けやすさ、閉めやすさ
・使いたい量を適切に出せるか
・残らず最後まで使いきれるか

使いたい量を適切に出せるか、最後まで残らず使いきれるかは、化粧品の中身の物性と容器形状との相性によって決まります。

例えば、粘度の低い化粧水や乳液には細口のボトル容器がよく用いられます。
ボトル容器の場合、中身の出やすさは中身の粘度と容器口の大きさによって変わるため、中身の粘度に合わせて容器口の大きさを調節します。
中身の粘度が高いほど中身は出にくくなるので、適切な容器口は大きくなります。

中身流出挙動の計算式液体化粧品の物性に適合した容器の設計⁵⁾より引用)

さらに乳液よりも粘度が高く、流動性が悪いクリームやジェルクリームの場合は、細口ボトルでは中身が出にくいため、指やスパチュラで中身を直接取れるジャー容器や、中味に流動性がなくても押し出すことができるチューブ容器がよく使用されます。

ポンプ容器は容器を傾けることなく簡単に必要な量の内容物を取り出すことができるため、化粧水から乳液・クリーム、シャンプーやコンディショナーまでさまざまな剤型の製品に使用されます。ただし、他の容器に比べて容器自体が高価格でコストがかかる場合が多く、粘度が高い中身の場合は最後まで使い切るのが難しいというデメリットもあります。

③中身の保護

中身の品質や安定性を保つことも化粧品容器の重要な役割です。

例えば、ビタミンCやレチノールなど、光によって劣化しやすい成分を含む製品には光を通さない不透明な容器(遮光容器)が用いられます。

ビタミンC高濃度美容液の安定性試験<例>
日光に当たりやすい窓際で保管したBは、ビタミンCが劣化して茶褐色に変色している。
このような製品では、安定性を保つために遮光容器が用いられる。

また、空気中の酸素によって変質しやすい製品の場合は、エアレス容器など空気に触れにくい構造の容器を使用することもあります。

エアレス容器の構造(石堂硝子HP⁷⁾より引用)
ボトルの底部にピストンがあり、中身の吐出と共にピストン部分が上にせり上がることで、上に内容物を吐出する。 構造上、内容物が空気に触れにくいため、酸化しやすい成分を含む製品に適している。

その他にも、光や酸素が透過しないようにアルミニウムの層を入れたり、一度出した中身が容器に逆流しないようなしくみを用いて内容物が空気に触れない工夫をしたり、使用開始直前に2剤が混ざり合うような面白い設計の容器もあります。

資生堂 エリクシール レチノパワーリンクルクリームに採用されている独自容器
資生堂エリクシール公式サイトより引用)
ポンプタイプの2剤式容器(グラセルHP⁸⁾より引用)
初回使用時、トップキャップを取り、ポンプを強く押し込むと中のポケットの底が外れ、2剤がボトル内に入る仕組み。2剤が完全に溶けるまでボトルをよく振ってから使用する。

容器の材質や中身との相性によって化粧品の安定性が崩れたり、容器が破損したりする事例もある⁶⁾ため、品質にこだわるメーカーでは、中身の安定性だけでなく、容器に入れた状態での安定性を確認する試験も実施しています。

まとめ

知られざる化粧品容器の世界はいかがでしたか?
今回解説したように、化粧品容器には見た目だけじゃない大切な役割がたくさんあります。
これからはぜひ容器の工夫にも着目して、化粧品を選んでみてください!

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(執筆:なな)

【参考文献】
1)中身を守るー容器ー,日本化粧品工業会,2024年10月3日アクセス
2)商品の外観に対する消費者ニーズを表現した化粧品容器の形状,武田玲菜,梶山朋子,日本感性工学会論文誌,Vol.21,No.1,1-8,(2022)
3)日本トレンドリサーチ(運営会社:株式会社NEXER)とスプリック(https://spriq.jp/)による化粧品のパッケージに関する調査,PR TIMES,2024年10月3日アクセス
4)感性価値を追求した化粧品パッケージのデザイン開発,井田厚,日本化粧品技術者会誌,46(1),2-6,(2012)
5)液体化粧品の物性に適合した容器の設計,坂井透, 池田進一,日本化粧品技術者会誌,26(4),295-300,(1993)
6)化粧品容器と中味の間に生じるトラブル事例とその解決方法,池田進一,日本化粧品技術者会誌,30(2),145-152,(1996)
7)エアレス×美容液容器,石堂硝子HP,2024年10月3日アクセス
8)使う直前にミックス!二剤式容器,グラセルHP,2024年10月3日アクセス



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