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自由帳に漫画を描いていた私を『ルックバック』する

映画が公開されたのは6月だというのに。
記事を書くのに随分時間が掛かってしまいました。

自分の過去と感情がぶわっと溢れ出して上手くまとまらなかったのです。
懐かしさと、あの時に負った小さな傷と……。創作する者として明日を生きる勇気をもらえる作品でした。

藤本タツキさんの原作読み切り漫画を映画化した『ルックバック』を観た私なりの感想をまとめていきたいと思います。


①自分の人生をルックバックしてしまう

この映画のすごい所は誰もが自分の過去、人生を振り返ってしまう所です。
はじめ、この映画の感想を書こうとしたところ殆ど自分語りになってしまい、驚きました。慌てて書き直して本記事に至ります。
SNSの感想を眺めていても私と同じように、「私も昔、漫画を描いていました」とか、「才能の違いを目の当たりにして挫折する気持ちが分かる」なんていうコメントが多く見られました。

「創作したことがある人」や「何かひとつのことを極めようとした人」が激しく共感し、感動する作品になっています。

私も「創作」する側の人間なのでかなり思うところがありました。
登場人物の藤野の小学生時代がまさに私の小学生時代そのものなのです!(笑)
藤野ほど才能があったわけでも努力をしたわけでもないのですが、同じような出来事を経験してきました。

自由帳に鉛筆で漫画を描き、クラスでは「絵の上手い子」で通っていました。
褒められた私はその気になり、「将来は漫画家もいいな」なんて本気で考えていたりもしたりして。
今考えたらかなり恥ずかしいです。でも、映画を観た後だとなんとなく微笑ましく思えます。

そこに現れたのは……私よりも絵の上手い生徒!
映画で言えば「京本」の登場です。

大きな衝撃を受けた私は藤野のように独学で絵を勉強し始めます。
デッサン本を買ったり、「漫画家セット」なるものに付いて来る「漫画の描き方」を熟読したり……。
藤野のように、本棚には絵を描くための技術書が並んでいた時期がありました。

それでもあの子には敵わないと分かって「やーめた」と漫画を描くのをやめてしまったことも……。

全部私が昔、子供の頃に見てきた光景がスクリーンに映し出されていて……。
懐かしいやら切ないやらで感情が涙となって溢れ出しました。
初めて原作の漫画を読んだ時は辛いという気持ちの方が強くて、しばらく再読することができないほどでした。

「漫画読みたかったなあ」

一緒に映画を観に行った友達がそんな風に嬉しいことを言ってくれました。(笑)
同じ小学校に通っていた旧知の仲。当時はそこまで親しくなかったのですが、時を経て再会し仲良くなったという、なんとも不思議な繋がりのある友達です。

その友達は私が漫画を描いていたことを覚えていてくれました。

「本当は読ませてもらいたかったんだけど周りに沢山人がいて声を掛けにくかった」と当時の心境を話してくれたのです。

どうやら当時の私は人気漫画家だったようです。
漫画を描いていたのは覚えていますが周りに人がいたことはあまり覚えていませんでした。

嬉しくて照れくさかったです。
今、私は漫画家になっていないけど……創作は「小説」という別の形で続けています。

創作活動に力を入れる今の自分があるのは過去に漫画を描いていたおかげだと思いました。

過去に創作の楽しさを知っていたから、挫折を知っているから。
今また楽しく真剣に創作活動をすることができている。

『ルックバック』を同級生や幼馴染と観に行くとより楽しめるかもしれません。映画を観終わった後、思い出話で盛り上がることができるでしょう。

時を越え、アラサーとなった今。
友達に当時の漫画を読ませてあげたいなと思ったのですが……。それは無理でした。
「やーめた」と言った瞬間に自分の作品を全部捨ててしまったからです。
こんなところまで藤野の行動と同じなので笑ってしまいました。(笑)

②創作活動をする勇気がもらえた

自分の人生を振り返るだけでなく、創作活動をする勇気がもらえる作品でもありました。

「描いても何の役にも立たないのに……。なんで描いたんだろう」

創作者の心にグサッと突き刺さる藤野の言葉。
漫画も小説も、書き上げたからといって何かの役に立つものではないからです。
それでも多くの時間と体力を犠牲にしてまで作品を書き続ける。それは一体何故なのか……?

その答えが本作で明確に示されています。
私も今、このために書いているのだとはっきりと宣言することができます。

創作者が避けては通れない問いかけ。
あなたならなんと答えるでしょうか。

『ルックバック』というタイトル通り、登場人物の後ろ姿が印象的な本作。
机に向かってひたすら漫画を描く藤野の姿がカッコイイのです。
きっと子供の頃の私もこんな背中をしていたのではないでしょうか。恐らく創作活動に力を入れ始めた今も。

言われてみれば自分の背中って見えないですよね。
でも誰かがちゃんと見てくれている。

最後のシーン。京本の「後ろを見て!」には本当に色んな意味が込められていたのだと思います。

後ろを見て!
今までここに至るまでの道のりが、過去が。あなたの人生がしっかりとあるでしょ?

と、いう感じで背中を押されたような気持ちになりました。
私にも藤野や京本ほど輝かしくないけれど、今ここに至るまでの人生がしっかりとある。
そう思うと勇気が湧いてきました。

そして映画は藤野の後ろ姿で幕を閉じるのです。
後ろ姿で始まり後ろ姿で終わる……。なんとも美しい演出。お見事でした。

久しぶりに心が震えるような映画体験ができて本当に良かったです。

『ルックバック』で得た気持ちを胸に、日々自分の創作活動と向き合っていきたいと思います!


以上、『自由帳に漫画を描いていた私を『ルックバック』する』でした!
本日も最後まで記事をお読み頂きありがとうございました!

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