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【映画コラム】夏目アラタの結婚

ずっと気になっていたけれど、見ることができなかった映画が、primeビデオに落ちてきた。500円でレンタルしてみた。

殺人を犯して死刑囚として収監されている品川真珠(黒島結菜)。「品川ピエロ」と呼ばれている彼女に、隠された遺体の場所を知るため、獄中結婚を申し込むことになってしまった夏目アラタ(柳楽優弥)。今まで黙秘を続けていた真珠は、ある時を境に自供を始める。

さすがです、堤幸彦監督。
私は、原作を1話くらいまでしか読んだことがなかったため、原作の美麗で迫力のある絵の印象に負けないキャスト選びが良かった。
柳楽優弥の原作から出てきたような、ちょいワルのお兄さんを演じていて良かった。
「桃ちゃん」役の丸山礼が自然ですごくいい演技をしていた。品川真珠に翻弄され、イライラするシーンなど、最高である。
さらに、死刑囚の裁判の傍聴が趣味で、死刑囚にまつわるアイテムを収集するのが好きな、悪趣味なおじさん役の佐藤二朗も、すごーーーくうまい。ちゃんと気持ち悪い。
アラタの職場の所長役の立川志らくも、自然でハマり役だった。
そして、原作そのままの「品川ピエロ」のボロボロの歯並びがある意味素晴らしかった。また、ミステリーのはずなのに、面会室で妙に怖いライティングがあるのも面白い。

”見せる”ストーリー作りをしている。
「すっかりみんなを味方につけたな、真珠」というアラタのセリフがある。
観客は、真珠が殺人鬼だということを知っていて、アラタの「どこまでが本当なのか」というセリフがあるから、全てを信じないで見ていられるが、この裁判を傍聴していたら真珠の話をハナから信じてしまうのかもしれない。
実は真犯人が別にいても面白いし、実は全部嘘だったとしても面白い。どちらに転んでも面白い仕掛けになっているのは原作もそうだが、ちゃんとそれに沿って”見せる”脚本と映像を作った製作陣が素晴らしい。

そして、浅学で申し訳ないが、この映画で知ったことがある。
裁判は1回では終わらないようだ。新しい供述や新しい証拠が提出され、弁護側や検察側が証拠について調べて確かめる時間をとって、判決を出すまでに何日かに分けて行うらしい。事件の判決が出た、というニュースを見るたびに、「そういえばこんな事件もあったな」と思うくらいには時間があいてしまっているのはこういうことだったのだ、とわかった。勉強になった。

「信じる」と「信じない」。「無罪になってほしい」と「出てこられたら困る」の間を行ったり来たりするのが、見応えのある映画だった。

とりあえず、学校の法定検診はすごく大切だ。ちゃんと受けましょう。

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