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【積読書記録】王妃ベルタの肖像
乙女な話に飢えている。キュンキュンが足りない。
とはいえ、外で大っぴらに恋愛小説を見せびらかしながら読むのはそろそろ恥ずかしい。
そこで、今回の書である。
今回の書は、西野向日葵作「王妃ベルタの肖像」である。全三巻の少女小説だ。レーベル名を見てお分かりのとおり、ライトノベルである。
ただの少女小説と侮るなかれ、骨太の大河ロマン小説だ。
望まぬ政略結婚で第一王子を孕ってしまった、地方の大豪族出身の第二王妃・ベルタが主人公のストーリー。実家の地方領と王都とのパワーゲームや、王宮内での立ち回り、国王との関係や第一王妃との関係の中で、ベルタはどのように生き抜くのかが見どころだ。
この「王妃ベルタの肖像」は、少女小説だが恋愛に主軸を置いていないため、大人が楽しめるライトノベルだ。
買おうか悩んでいる人はここから飛んでもらえると、「小説家になろう」で投稿されていた時の小説を読むことができる。
私が王妃ベルタにこんなにハマるのには理由がある。
私のローティーン時代を支えた、バイブルの存在が大きい。
私のバイブルは雪乃紗衣作「彩雲国物語」だ。
偽のお妃兼教育係として後宮に入った貧乏貴族の娘・秀麗は、国政をサボりまくっているダメ国王に気に入られる。その後、国王は国政への女性の参画機会を増やすことに尽力し、秀麗が国内初の女性官吏として歴史に残る姿を描く大河ロマン小説だ。
「彩雲国物語」には国王とのロマンスも入ってくるが、決してこれもただの恋愛小説ではない。国内初の女性官吏として女性差別に耐えながら戦っている姿に応援を禁じ得ない。
賢いところ。
多数派に負けず、自分の意見を突き通すところ。
「女の幸せ」に逃げることなく、自分の信じた道を走るところ。
人間らしく魅力的なところ。
私はそんなベルタや秀麗に強い魅力を感じる。
それは、ヒロイン達の主張が至極真っ当で正しく、切り開く未来に大きな希望があるからだ。
私は、現代日本に生まれてとても幸せだと思う。
その一方で、現代日本だって、多かれ少なかれ色々なことにがんじがらめだ。
私はヒロイン達みたいに優秀ではないし、ハングリーでもない。
でも、架空の人間だとわかっていても、彼女達に憧れてしまう。
物語の中に飛び込むたびに、彼女達の人生に乗っかって、本当は自分が生きたかった人生を代わりに走ってもらっているのかもしれない。