映画『PERFECT DAYS』を観た感想
今日、友人と「PERFECT DAYS」という映画を観てきた。
本作にはあらすじというあらすじはない。ただただ一人の男性の日常を描いた作品だ。役所広司演じる主人公は都内のトイレの清掃員で、とにかく無口で硬派なキャラクター。趣味はカセットテープの収集とフィルムカメラ。風呂・洗濯機なしの下町のボロアパートの一階に住んでおり、彼の一日は朝早くに起きて植木に水やりをすることから始まる。缶コーヒーを飲みつつ軽トラックで各地のトイレを回って掃除をし、仕事終わりには銭湯と行きつけの駅中の居酒屋に行く。週末にはコインランドリーに洗濯に行った後にフィルムカメラの現像を行い、本屋で1冊百円の文庫本を買ってから行きつけの小料理屋のママと話を交わす。
一見、同じ毎日の繰り返しを見ているように感じるが、実際は一日ごとの様相は細かく異なる。同僚のピンチにお金を貸したり、トイレに置かれたメモで見知らぬ人とやり取りをしたり、姪っ子が家出しに来たりと、彼の毎日は多彩だと気付かされる。
作品の中で心に残った言葉があった。
実際、映画を観ながら主人公との多くの隔たりを感じた。清掃員である彼の日常と私の日常は異なる。同じ国と同じ時間軸に生きているのにまるで違う世界に存在しているような気持ちになるのだ。また、そのような演出がところどころになされていたように思う。(スマホを持っていないこと。コンビニで買い物をしたのにそのシーンは出てこないことなど。)
彼目線で進んでいく物語には彼の過去の情報も未来の情報もない、あるのは今という瞬間だけだ(それがラストの木漏れ日のシーンと関係していると思う)。むしろ、その細やかな瞬間に目を向けさえすれば、彼の人となりを多少なりとも知ることができる。彼の彼だけのための完璧な日常にお邪魔している気分になった映画だった。