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18歳成人では遅すぎる?

1月9日、多くの自治体では成人式が行われようです。
秋田市でも、成人式が行われました。
成人された皆さん、そのご家族の皆さん、おめでとうございます。

成人式は、二十歳(ハタチ)、というのが常識でしたが、これからは少しずつ変わっていくかもしれません。
民法の改正によって、18歳が成人となるのが、今年の4月からです。
18歳で成人というのは、まだ、ちょっと早いような気もします。
いや、でも、大河ドラマなんかを見ていると、昔は、もっと早くに大人の仲間入りをしていたはずです。
これまでの歴史上、何歳が成人だったのか。
20歳で成人はいつからは始まったのか。
18歳成人で何が変わるのかを調べてみました。

20歳で成人となったのは明治9年

僕らの常識だった二十歳で成人が始まったのは、明治9年のようです。
その後の民法の変遷を見ても、ずっと変わっていないことが分かります。
※民法では、成人ではなく「成年」という用語を使っていますので、ここからは「成年」と書いていきます。

太政官布告第41号
「自今満弐拾年ヲ以テ丁年ト相定候」との太政官布告が出され,これにより満20歳が成年年齢と定められた。
※太政官布告は,旧憲法下における法律又は勅令事項に該当
旧民法(明治23年法律第98号)
第三条
私権ノ行使ニ関スル成年ハ満二十年トス但法律ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス
※旧民法は,施行されないまま,明治31年法律第9号により廃止された。
民法(明治29年法律第28号)
第三条
満二十年ヲ以テ成年トス
民法(平成16年)
第四条
年齢二十歳をもって,成年とする 。

江戸時代の成年は15歳だった

もともとの日本における成年は15歳程度だったようです。
成年になることを当時は、元服(げんぷく)といいました。
時代劇や映画などでもよく元服の場面は出てきます。
昔は、元服と同時に名前を改めるということもしていましたので、今以上に幼少とは違う変化と自覚を感じる場面が多かったのだろうと思います。

ちなみに、歴史上の人物では、織田信長は13歳。徳川家康は14歳。伊達政宗は11歳と15歳よりも早くに元服しています。
織田信長が桶狭間の戦いで今川義元を討ったのは、26歳の時です。
元服してから13年後のできごとです。
早くに元服しているからこそ、歴史に名を残す偉業を20代で成し遂げられたのではないでしょうか。
現代では、40代になっても、若造扱いです。
国のすべてを10代、20代から任せられたのですから、今では考えられないことです。

最後の将軍、徳川慶喜の元服は11歳。31歳で大政奉還。

江戸時代末期の代表的な人物と言えば、最後の将軍、徳川慶喜です。
慶喜が元服したのは11歳でした(元服して名を慶喜としました)。
元服直前には、一橋家の家督を相続しています。
12歳で婚約(その後破談。実際には20歳で結婚しています)。
26歳で将軍の後見職に就き、30歳で征夷大将軍です。
日本の国の行く末の判断を迫られ、31歳に大政奉還をしたことにより、江戸時代は終わりました。


こうしてみてみると、歴史上の多くの出来事は、20代、30代の偉人たちの活躍によって動いてきたのです。

二十歳で成年とした理由

江戸時代以前の慣習からすると、二十歳で成年というのは、随分と遅すぎるように思えます。
当時の世の人々にも、多くの異論があったのではないでしょうか。

なぜ二十歳にしたのかについては、欧米諸国の成人年齢と合わせたことが大きな理由のようです。
当時の平均寿命は43歳だったそうなので、今で言うと、「今日から40歳を成人とする!」というくらいに違和感がある出来事だったのだと思います。

 明治期の制定法が,当時21歳から25歳程度(21歳とするものが比較的多い)を成年年齢と定めていた欧米諸国に比べて,やや若い20歳成年年制を採用したことについて 当時の学説には 日本人の平均寿命の短さあるいは日本人の精神的成熟の早さなどを理由として挙げるものがある。
 現実的な理由としては,当時の立法者が,近代的な経済取引秩序を作り上げるための必要条件として欧米の成年制度を受け入れることを基本に,15歳程度を成年とするわが国の旧来の慣行をも考慮に入れて,当時の国際的基準からいえばやや低く,それまでのわが国の慣行からすればかなり高い成年年齢を,律令を理由付けに,採用したと考えることができよう。
谷口知平 石田喜久夫編 新版注釈民法 1 総則 1 改訂版= 2002
294頁以下〔高梨公之・高梨俊一〕

成年年齢を遅くすればするほど、人間の成熟は遅くなる

個人的な感想ですが、成年年齢を遅くすれば遅くするほど、人間の成熟は遅くなってしまうのではないかと思います。
今の20代30代だけで、国のすべてを任せられるかというと、まだ早いと思ってしまうのが、現代人の考えになるのではないでしょうか。
20代はまだまだ幼い。
日本人にはそう思えてしまいますが、それは明治以後に作られていった慣習なのです。
個人の成熟が遅くなればなるほど、国は弱体化してしまうのではないでしょうか。
ある意味、開国によって、国は弱体化させられたのではないかとすら思えてしまいます。
それくらいに、江戸時代以前の20代と現代の20代とでは、精神レベルがあまりにもかけ離れたものになってしまっているのではないでしょうか。

18歳成年で何が変わる?

今年2022年4月1日から、民法上の成年が18歳に引き下げられます。
明治以降約140年続いてきた成年の慣習が、今年変わるのです。

2022年4月1日の時点で,18歳以上20歳未満の方(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方)は,その日に成年に達することになります。2004年4月2日生まれ以降の方は,18歳の誕生日に成年に達することになります。
総務省

18歳成年でできること

18歳になるとできるようになることは、次のような内容です。

・親の同意を得ずに、様々な契約をすることができる
・自分で住む場所を自分の意思で決められる
・進学や就職など自分の意思で決められる
・10年間有効パスポートを取得できる
・国家資格に基づく職業に就ける
・性別の取り扱いの変更審判を受ける
・結婚(女性も18歳からに)
・選挙権(平成27年6月、公職選挙法等の一部を改正する法律により平成28年6月19日の後に初めて行われる国政選挙の公示日以後にその期日を公示又は告示される選挙から適用)

20歳にならないとできないこと

たばこ、お酒、競馬等の公営競技の年齢制限は20歳のままになっています。

 民法の成年年齢には,一人で有効な契約をすることができる年齢という意味と,父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。
 成年年齢の引下げによって,18歳,19歳の方は,親の同意を得ずに,様々な契約をすることができるようになります。例えば,携帯電話を購入する,一人暮らしのためのアパートを借りる,クレジットカードを作成する(支払能力の審査の結果,クレジットカードの作成ができないことがあります。),ローンを組んで自動車を購入する(返済能力を超えるローン契約と認められる場合,契約できないこともあります。),といったことができるようになります。
 なお,2022年4月1日より前に18歳,19歳の方が親の同意を得ずに締結した契約は,施行後も引き続き,取り消すことができます。
 また,親権に服することがなくなる結果,自分の住む場所(居所)を自分の意思で決めたり,進学や就職などの進路決定についても,自分の意思で決めることができるようになります。もっとも,進路決定について,親や学校の先生の理解を得ることが大切なことに変わりはありません。そのほか,10年有効パスポートの取得や,公認会計士や司法書士などの国家資格に基づく職業に就くこと(資格試験への合格等が必要です。),性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても,18歳でできるようになります。
総務省


15歳で大人の自覚を持たせよう

これまでの歴史を考察すると、20歳から18歳に成年が引き下げられるのは、人間の成熟を早めるという期待感からは良いことのように思います。
ただ、その準備ができているのかというと、それはまた違うような気がします。

義務教育が終わる中学を卒業したら、もう大人の準備期間なんだという自覚を社会的にさせていくことが重要なのかもしれません。
役割を与えられることによって、人は成長すると思うので、先人たちが10代にして家督を譲り受けたように、これからは18歳になったら親は引退して、こどもに、いや失礼、立派に成長した大人になった我が子に、すべてを託していっていいのです!

とは言ったものの、40代なってもわが親からは、何も任せてもらえない状況なので、あと6年後に迫るわが子の成人で隠居となると、自分はこの世で何も活躍できずに終わってしまいます。

よし、では、この移行期は、1億総活躍社会にしよう!

あれ? どっかで聞いたようなフレーズになっちゃった。


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