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お金は大切だよ~-賃金支払いの規制-賃金支払いの4原則(その1)
弁護士から問われます。なぜ労働法の先生は、「賃金支払いの4原則」を熱心に講義するのか、と。だがこの資本主義体制下で、しかも生産手段を所有しない労働者(マルクス主義でいう『賃金プロレタリアート=賃プロ』)にとって、労働の対価たる報酬(以下、賃金といいます)は生きていく為には不可欠なものです。ところが、その割に労働基準法(以下、労基法といいます※①)は細かな規制を設けておりません。労使自治に任せる意向のようです。そこで今回は、法的に賃金とは何か、また賃金に対する法的保護はどのようなものがあるかにつき、ご一緒に考えてまいりましょう。
1 労基法上の賃金
使用者によって、労働の対償(対価)として労働者に支給されているものを広く指します。基本給+諸手当が基本でしょう。したがって、結婚祝い金や脂肪弔慰金のようなものは労働の対価たる性格を有していないので、それは該当しません。他方で、退職金や賞与も制度化されていれば賃金と考えてよいでしょう。もっとも、労働基準監督署での取り扱いでは、就業規則や労働契約(個別の契約書など)等であらかじめ支給要件が明確なものは、労基法上の賃金として取り扱われるようです。いずれにせよ、労働者の法的権利性を保護しようとの趣旨であることに変わりまりません。
2 賃金支払いの4原則 ー「通貨払いの原則」
一つ目は、通貨払いの原則です。要は、賃金は必ず通貨※②で支払わねばならないということです。したがって、通貨の代わりに工場の製品などの現物支給での代替は許されません。また、通貨とは日本で通用する現金ゆえに、ドルやユーロ等の外国通貨も禁止です。では通勤手当の現物(定期券、回数券)はどうでしょうか。これも使用者と労働組合が締結する労働協約に定めない限り、認められません。この国は労働組合組織率が低いので、そもそも組合のないところでは不可ということになりますね。小切手や郵便為替での支払いはどうでしょうか。これも一定の条件のもとでの退職金支払いを除き、許されません(労基則7条の2第2項)。もっとも、退職金という大きな金額が記された小切手を受領しても、失くしたら困りますよね。
※①労働基準法は労働者と使用者の個別関係に介入、上から基準を定めて守らせるタイプの法律です。それゆえ労働契約を修正したり、違反を罰したりすることもできます
※②日本銀行が発行する銀行券や造幣局の製造する通貨
(続く)
プロフィール
オイカワ ショウヨウ
『地域連携プラットフォーム』に勤務の傍ら、某大学の研究所に所属。
複数の国家資格を有し、また『府省共通研究開発管理システム(e-Rad)』に登録され、研究者番号を有する研究者でもある。