羽毛はふくらむ
その人物の鼻の下からは羽毛が生えていた。
あ、ああああ。くすぐったい。
そう身をよじる姿に居た堪れなくなり、とってあげましょうかと声をかけるものもいた。
だがその呼びかけも結局なんの意味はなかったのだ。
その羽毛はやがて どりゅどりゅ と膨らみ、その者を包み込んで、天高くへと連れ去ってしまった。
ふわふわと漂いながら空の彼方へ消え去ろうとする白い物体を見あげて目を細め、一人が持ち前の気球に乗り込んで飛び立った。
皆のもの!
そう呼び掛ければ、地上のものどもはやっと自分が翼を持っていることを思い出し、気球のお尻を追いかけた。
バタバタと羽ばたく音に、気球のバチバチという炎の音。
耳障りだと思ったのか、その白い物体は大きくうねりながら飛行しだした。
あとは、一人ずつ自慢の大きな角でそれを突き刺すだけだ。
ぷすっ。
ぶすっぷすっぶすっ。
たちまちその物体は弾け飛び、中からは・・
何も、出てこなかった。
すでに消化されたあとだったのだと悟り、その場にいる全員が絶望して墜落した。