瞑想インストラクターは 23年ぶりのゴルフをこう乗り切る
(前稿より続く)
スコアはともかく、ラウンドが楽しかったことは確かだった。
僕たち夫婦は「ゴルフ再開」を宣言、これからも続けていくことに決めた。
ゴルフコースを回ってみて、足りないものがハッキリと分かった。
(1)練習
四半世紀ぶりにコースに出るというのに、たった一度だけしか練習していないというのは、あまりにも不遜だった。笑
かつては、会社から帰って家の前の道路で素振りをしたりしていた面影もない。笑
(2)体力
コロナ禍の緊急事態宣言中、ずっと家にいたせいで、左股関節から痛みが出ていた。整体、整形外科、ストレッチ、筋トレ。
いろんなことを試みたが、どれも効き目は限定的だった。
左足に体重を乗せた瞬間、ピリッと痛みが走るため右足に体重を残しながらのスイングは、手打ちになってしまっていた。
ゴルフから帰って右手が筋肉痛になった。
ゴルフのスイングは左手主導でなくてはならない。
痛みを取る努力を続けるのはもとより、体全体の柔軟性や、下半身の強化もやらなくてはならない課題だ。
ブランクがあったというだけでなくその分、歳を重ねていたことを完全に忘れていた。笑
(3)技術
飛距離が出ない、といった課題以外にも、2打目、3打目の寄せでピタリとピンにつける技術が失われていた。
距離感も方向性も風まかせ、といった具体だ。
バンカーも一度で脱出はできたが方向が定まらない。
パターの距離感もあやふやでショートもあればオーバーもあるという乱調ぶりだった。
僕と妻は、こんな課題を感じつつ、
「徐々に慣れていけばいいよね!」
と本格コースではなく、河川敷のゴルフ場に行ってみることにした。
より手軽な河川敷ゴルフ場で、ハーフプレイをすることにした。
これなら、仕事の合間を縫って、妻との日程調整もしやすいので、
お昼から出かけて9ホールだけ回るコースにチャレンジしてみることにした。
冬晴れのある日、僕たち夫婦は河川敷のゴルフ場にいた。
本格的なコースと違い、アップダウンはない。
その分ウォーターハザード(池)が配置されいる。
正午過ぎのアウトスタート。10番ホールから回り始めて18番ホールで上りだ。
ティーショットは、まっすぐ飛んでくれた。
2打目では、ダフったりボールの頭を叩いてチョロったり。
それでも3打目か4打目にはグリーンには乗り、2パットか3パットで上がることができた。
終わってみればハーフで「54」というスコア。
倍にすれば「108」だから、前回目標とした「120」をクリアできている。
練習もせずにスコアを縮める。
これには、ちょっとした秘密がある。
前回のゴルフでも試みはしたが、全うできなかったことを全うしてみることにしたのだ。
それは、瞑想インストラクターとしてラウンドするということ。
僧侶ではないので、宗教色はない。
呼吸にフォーカスしたマインドフルネスのやり方を学び、人に伝える資格を私は持っている。
課題はメンタル。だから練習なしのぶっつけ本番でもスコアは縮められるだろうとの予測的中だった。
僕の立てた作戦はこうだ。
前回は、「力を抜こう!」
と目標設定してティーグランドに立ったのに、
「2打目を打つ時、ピンまでまだまだ遠いな」、とか
「ドッグレッグしているので2打目である程度飛ばしてかないと3打目を打つ角度が難しくなってしまうな」、とか
「谷超えになってるからきちんとボールをあげないと」
「1打目ミスしてるから、2打目で挽回しないと」
などなど、コース場で起きる環境変化に見事に翻弄されて、力が入ってしまったのだ。
こういう時、瞑想インストラクターの私がゴルファーの横についていたら、なんと言ってあげるだろうかと考えた。
答えは簡単だ。
「ボールを飛ばすのはあなたではない」
と伝える。
例えば、1打目が見事にフェアウェイをキープしている。しかしグリーンまではまだ200ヤード以上ある。
こんな時、1打目のナイスショットを無駄にしないためにも、2打目できちんとグリーンを捉えたい。
それが無理だとしてもグリーンのそばまで飛ばしておけば、ピッチングで楽々3オンを狙える。
とすると、2打目で大切なことは、きちんと飛ばしておくことだ。
目の前にはまだ相当の距離が残っているのだから。
みたいなことを考えるだろう。
コース上で戦略を練るのはゴルフの楽しみのひとつだ。
だが、この思考こそが力みの原因となるのだ。
そんなことは昔から分かっているのに、クラブを振り回してしまい、2打目でOBを出したり、200ヤード飛ばすつもりで50ヤードほどしか飛ばせなかったり、前回はそんなことを繰り返してしまった。
分かってたのに、自分自身のメンタルを制御できていなかったのだ。
だが、いまは違う。
私は瞑想インストラクターなのだ。
私がゴルフ場で行った「グリーン瞑想」(勝手に名前つけました。笑)5ステップをご紹介しよう!
1st ステップ 「今ここに集中する」
まず私は自分にこう囁く。
「3番ウッド(スプーン)にはあそこまでボールを運ぶ力があるのだから、あなたは結果を想像することなく、目の前のボールに正しい角度でクラブを当ててあげることだけ考えましょう」と。
2nd ステップ 「深呼吸&忘れる」
フェアウェイ上で3回深い呼吸をする。
巡らせた思考を一旦すべて忘れるためだ。歩きながらで構わない。
思考は戦略を練るには有用だが、集中の邪魔になる。
経験は「思考は感情に勝てない」と教えてくれている。
だから、感情が昂ってうまく戦略を実行できないという事態を避けるために、全てを忘れるのだ。
3rd ステップ 「アファーメーション」
ボールの近く、素振りができる位置に立ったら、実際に声に出してこう言う。
「ボールを飛ばすのは私の仕事じゃない」
「ボールを飛ばすのは3番ウッド(スプーン)さんの仕事」
「私はただ、いま目の前にあるボールから決して目を離さず、軌道上を正確にスイングすればいいだけ」と。
4th ステップ 「深呼吸&アクション」
アドレスに入り、素振りをしながら3回深呼吸をする。
1、2、3のタイミングでクラブを振るだけだ。
そうすると、かなりの確率で3番ウッド(スプーン)さんがボールを必要な位置まで運んでくれる。
大抵の場合、思ったほど飛距離が出ていなくて2オンすることはないのだけれど、3打目のアプローチを残すだけとなる。もちろん、思ったより右に行ったり左に行ったりということはあるが、それはご愛嬌だ。
5th ステップ 「感謝」
そしてまた実際に声に出してこう言う。
「ありがとう、3番ウッド(スプーン)さん。さすがの飛距離ですね」
やるべきことは、この5つだけである。
「20年以上ブランクがあるんだから上手くいかなくて当たり前だよな、と自分に不安を抱えたままボールを打つ迷えるゴルファー」
ではなく、
「ボールを飛ばすのは、僕の仕事じゃなくてクラブの仕事。僕はブランクのことや、飛距離のことを考えず、正しい軌道で振れる程度の力でクラブを振るだけの
今ここゴルファー」
と自らの定義を変えてしまうのだ。マインドセットを変えると言った方が分かりやすいかもしれない。
コースのことをあれこれ考えるのはクラブを選ぶところまで。
一旦クラブを選んだら、あとは飛ばすのはクラブの仕事、自分はボールにクラブフェースを正確にヒットさせるだけでいいと考えるのだ。
飛距離のコントロールはクラブ選択で行うべきで、強く打ったり弱く打ったりして加減すべきものではない。
瞑想インストラクターがゴルフをするとこうなるのである。(続く)