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私は今日も亀田製菓のおせんべいを買う



先週は亀田の「柿の種」を買って食べた。
誰が考えたのか、この絶妙なネーミング。
そしておせんべいにピーナッツを混ぜるという神がかり的アイデア。
黄金比と呼びたくなるような完璧なピーナッツ含有割合。

たこ焼きに、イカでもエビでも鶏肉でもなくタコを選んだのに匹敵するグッドアイデアだと思う。
うまい、うますぎる。


今週は「ハッピーターン」を買ってきた。
「魔法の粉」とまで呼ばれる美味しい粉をまとった唯一無二のおせんべいだ。
食べ出したら止まらない。笑 1日でなくなる魔法せんべい。
東京駅地下一番街に店を出すほどの国民的人気商品である。


ハッピーターンが好きなのは日本人に限らない。

Jリーグ、アルビレックス新潟に所属していたブラジル人選手レオ・シルバは、来日して食べたハッピーターンに衝撃を受ける。

「美味しくて感動した新潟の料理」に「ハッピーターン」と答えるほどこのせんべいを愛した。
ハッピーターンは、アルビレックス新潟のユニフォームの胸スポンサー(写真)である亀田製菓の製品でもある。

試合でマンオブザマッチに選ばれた時、副賞としてハッピーターン1年分を贈呈された。

大好きなハッピーターンを1年分も手に入れて大喜びするレオ・シルバ。
Jリーグでベストイレブンに選ばれたこともあるほどの名ボランチの逸話はあっという間にサポーターたちの間に広まった。

この米菓界の両巨頭「柿の種」と「ハッピーターン」を製造・販売しているのが新潟県新潟市に本社を置く亀田製菓である。

亀田製菓。
2024年度の売上高955億円を誇る米菓業界最大手企業である。
米菓の売り上げの3割を占めるといわれるせんべい界の巨人だ。


この亀田製菓が今、窮地に陥っているらしい。


2020年6月に会長兼最高経営責任者(CEO)に就任したジュネジャ・レカ・ラジュ氏の発言が炎上してしまったのだ。
その、事の顛末を整理しておきたい。

なんでも「日本にもっと移民を」と語ったとされ、移民政策は日本をだめにするなどと亀田製菓製品への不買運動につながっていったそうなのだ。

ジュネジャCEOの発言全文が手に入らないので、なんとも言えないのだが、いくつかの点でこの疑問を感じている。


事の発端は、2024年12月15日付けのAFP通信の配信記事だった。

【12月15日 AFP】
日本の大手米菓メーカー、亀田製菓で会長CEO(最高経営責任者)を務めるインド生まれのジュネジャ・レカ・ラジュ氏(72)は、日本経済が高度成長期の栄光を取り戻すためには、マインドセット(考え方)を変え、より多くの移民を受け入れる必要があるとの考えを示した。

日本の政治家は、いわゆる失われた数十年からの復活に苦闘してきた。超金融緩和策や大規模な景気刺激策など一連の対策を講じたものの、成長軌道に復帰させることに失敗してきた。

現在の石破茂政権は、世界に冠たる技術立国の復権を目指すが、ジュネジャ氏は、帰化した日本が優位性を失ったことを懸念している。

バイオテクノロジーを修めたジュネジャ氏は、新潟県にある亀田製菓本社で、AFPの取材に応じた。

1984年に初めて来日。ジュネジャ氏は、「40年前に日本に来たのは、国内総生産(GDP)がほぼ世界1位だったからだ」と振り返った。しかし、ある時点で「日本は『すべてを手に入れた』と思い込んだ。そして、世界に挑戦するハングリー精神が少しずつなくなり始めたのだと思う」と話した。

ソニーの「ウォークマン」や新幹線、「スーパーマリオ」を世界に送り出した日本は、もはや技術分野で先頭に立つことはなく、米国、韓国、中国に追い越されている。

1980年代後半、株式時価総額で世界のトップ10を日本企業が独占していた。現在、10位以内に入っている日本企業は1社もない。

高齢化は進み、人口は今後50年でほぼ3分の1減少すると予測されている。企業はすでに、人員確保に苦心している状況だ。

日本は近年、規則を緩和しているものの、労働力不足の解決策として、移民に大きく依存するやり方は取っていない。

かつて食品原料メーカーや製薬会社に勤務していたジュネジャ氏は、日本には、さらに多くの移民を受け入れる以外に「選択肢はない」と言い切る。

数の問題だけでなく、「マインドセットや文化も重要だ。グローバル化が必要だ」と述べた。

最近の調査によると、日本は2040年までに外国人労働者の数を現在の3倍以上の688万人に増やす必要がある。現在のペースでは、約100万人不足する見込みだ。

ジュネジャ氏は亀田製菓に入社して以来、よりグローバルな「コメの革新企業」に成長させようとしてきた。

日本には外国生まれのCEOが非常に少ない。

「日本企業で(外国人が)CEOになるのは非常に珍しい」とジュネジャ氏。一方、米国を見れば、「マイクロソフトやグーグルなどでインド出身者がCEOを務めている」と指摘。

「日本は変わらなければならない。私たちは(日本で)自分たちのバックグラウンドを誇りに思っている。ただ日本にとっては、柔軟性を持って、海外から人材を受け入れることが極めて重要になるだろう」。(c)AFP

AFP

「日本経済が高度成長期の栄光を取り戻すためには、マインドセット(考え方)を変え、より多くの移民を受け入れる必要があるとの考えを示した」

との配信記事に対して
(1)日本のせんべいの会社のCEOをなんでインド人がやってるんだ!
(2)移民なんて入れたら、どうなるかヨーロッパやアメリカの例を見ればわかるだろ! 移民を増やせ!などという暴論は撤回せよ。
(3)日本人や日本の文化をダメにする移民を入れろなんていう考えは容認できない。日本が大好きだし、日本文化の良いところが失われないようにこういう会社の商品は不買運動をしよう。
(4)亀田製菓は中国産米を使っている。日本のコメで作るべきで亀田のせんべいは買わない。

といったいった反応がSNSで寄せられたそうだ。


こうした意見に対して、ジュネジャCEOは「外国人労働者を3倍以上にする必要がある」と言っているだけで、「移民を増やせ」とは言っていないという指摘も出されている(2024.12.26付けダイヤモンドオンライン)。


また、なんでインド人がせんべいの会社の社長をやっているのか?インド人にせんべいのことが分かるのか? といった指摘もあるようでだが、ジュネジャ氏は日本国籍を取得している。
インド出身であることは事実だが、インドで修士号を取得したのち、1984年に大阪大学に研究生として来日、名古屋大学大学院で博士号を取得しているのだ。

その後、太陽化学に就職し、ロート製薬副社長など経て、2022年に亀田製菓CEOとなった。


同社は現在、ライスイノベーションカンパニーを標榜し、お米で代替肉を作ったり、乳酸菌の研究をしたり、サステナブルな事業展開を目指して大きく事業領域を拡大しようとしているところだ。


こうした動きは、日本の企業にとっては少なくない会社が同様の判断をしており、特段奇異な経営判断とは言えまい。

せんべいの国内マーケットは、日本の人口減少に伴って縮小していくと見られており、メーカーが主力商品の米菓以外の売り上げを拡大しようとしている姿勢は、多くの日本メーカーに共通する課題だろう。

また、国内販売に加え海外販売を拡大しようとする動きも、他のメーカーにも共通する動きでしごく真っ当な経営判断といえるだろう。

「社長がなんでインド人なんだ!」という主張については、事実誤認の上に時代錯誤で、なんでそんな理由で非難されなければならないのかさっぱり理解できない。

亀田製菓の商品は中国産米を使っている!という非難についても、中国が「福島原発の処理水の海洋放出」をしていることを理由に日本の海産物の輸入制限をしていることに腹を立てているのか、中国産米など使うべきでないという根拠がよくわからない。

2007年以降、日本の最大の貿易相手国はずっと中国なのだ。
https://www.customs.go.jp/toukei/suii/html/data/y3.pdf
中国産のものを使うなという根拠はどこにあるのだろうか。
食品に限ってみても中国は最大の貿易相手国なのだ。


少子高齢化は、もう何十年も前から到来することが予想されて来たことだ。
であればこそ、国は何度となく「少子化対策」という政策を打ち出してきた。
しかし、政策はことごとく功を奏すことなく、日本の総人口は減少局面に入っている。
特に、問題なのは生産年齢人口が減少しているという事実である。
稼ぐ人が減り、年金生活者が増えるという現実である。
社会保障費が拡大し、産業振興や教育振興に回す国家予算は減少していく。

人口なんか減ったっていいじゃないか! 現にヨーロッパで、日本より人口が少ないのに、日本より豊かな国などいくらでもあるではないか、という指摘もある。

その指摘はその通りである。
総人口と経済的豊かさはパラレルなわけではない。
問題は総人口の減少ではなく、生産年齢人口が急激に減っていくことで、日本社会にさまざまな歪みが生まれることなのだ。


例えば、埼玉県八潮市で起きた道路の陥没事故。
まだ、推測の域を出ないが、原因は下水管の破損によって下水管の周りの土が流れてしまい、空洞ができでしまったという指摘である。

日本の上下水道、道路、橋などのインフラストラクチャーは、大量に更新時期を迎えており、改修が追いつかないという課題は、多くの地方自治体にとって共通の課題となっている。
改修工事を行う人手が足りていないのだ。

労働力を確保しなければ、今後もこうした事故は防げない。
課題の存在も分かっていて、解決する技術力もあり、順に改修していく予算もある。しかし、人手が足りないばかりに工事が行えないのだ。

多くの高齢者を少ない現役世代が支える構図も、何十年も前から
「2人の高齢者を10人で支える」状態から、
「2人の高齢者を2人で支える」ような事態に陥る恐れがあるということはずっと指摘され続けてきたことだ。

現状では、外国人労働者=移民ではない。
現行制度上では、一定の年限で帰国してもらうような建て付けになっている。

にもかかわらず、我々は移民を忌み嫌い、外国人労働者のみならず観光客までも「多すぎる」となじる。

その最前線で奮闘する企業に対して、不買運動を行うようなことは果たして日本のためになっているのであろうか。

日本が、このまま経済規模を人口減少に合わせて縮小していくしかないのだろうか。
GDPで日本を抜いて3位に上がったドイツ(約8400万人)は、人口が日本(1億2000万人)より4千万人ほど少ないという事実に、私たちは気づかなくてはならないと思う。

バブル期に世界一位だった日本の「一人当たりGDP」は、失われた30年の間に一貫して低下し続け、現在はOECD加盟国32カ国中22位、G7の中では最下位まで低下している。

この難局を乗り切る方策は、国内マーケットだけに頼らず、グローバル化を進め海外マーケットにも販路を拡大することであり、それを推進するためにも人材のグローバル化も進めなければならない。

私は、亀田製菓が取り組んでいる施策を進めていく先にしか、日本の未来はひらけてこないと考える。


日本の未来を、決意を持って切り拓こうとする亀田製菓の製品を買うことで、そのやり方に強い支持を表明したい。

亀田製菓が負けてしまうようなら、日本に明るい未来は来ないだろう。
日本の将来を占う企業、それが亀田製菓と言えるのではないか。

がんばれ、亀田製菓!


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