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コーチングの提供価値|成人発達理論をベースにした考察

以前、コーチングの提供価値については言語化をしてみましたが、一般論の域を出ないなという感覚がありました。そこで、直近でずっと研究を重ねている成人発達理論という視点でコーチングを捉えてみたところ、すごいハマる感覚がありました。そこで、コーチングで価値提供出来ることを改めて整理して行ければと思います。


コーチングとは?

納得度の高い決断をサポートする事であり、答えのない領域にドライブを掛ける(爆発的に伸ばす事)です。少し抽象度が高いのでそれぞれを細かく説明していきます。

納得度の高い決断をサポートする事

《転職相談の事例》
転職を考えている知人/友人から相談を受ける事が多々ありますが、だいたい皆さん、転職する時のメリット/デメリットに注目をしています。

転職のメリット |給与UP/フレックスタイムになる
転職のデメリット|勤務地が遠い(ほぼ出社)/プレッシャーが上がる

ただ、そんな時に『転職しないメリットはありますか?』と問いを立てると考えていなかった思考に光が当たります。今の職場は、『先輩/後輩関係なく意見の言い合える、風通しの良い環境である』とか、『一定の成績が出ていれば、管理されずに伸び伸びと営業活動が出来る』など自身が抱いているけど言語化出来ていない思いを掘り出すことが出来ます。

この事例の様に、自分の考えていなかった視点を得る事で仮に”転職をしない”という決断になったとしても、コーチングを受ける前後でこの会社で頑張って働くという納得度は上がっています。この様に納得度の高い決断のサポートをするのが、コーチングです。

答えのない領域にドライブを掛ける事

コーチングを他の関わり方と分けて考えてみると、上記の図ような4象限になります。一定の答えのある領域を扱うのが、ティーチング/コンサルティング。答えのないものを扱うのがカウンセリング/コーチングです。ただ、カウンセリングは病気の人が受けているように、マイナスの状態からゼロの状態まで回復させる関わり方になります。一方で、コーチングはゼロからドライブを掛けていく(プラスを爆発的に伸ばす)領域になります。

コーチングの価値|一般的な視点

1人だと辿り着けない領域に行くことが出来る

コーチングの語源はCoach(馬車)であると言われます。馬車を運転する人が乗っている人を目的地まで連れて行く事になぞらえ、クライアントの目指すゴールに伴走し、連れて行く事が出来るのがコーチングです。これは、思考と行動の2つの領域で価値を出すことが出来るからです。思考に関しては普段、自分ひとりでは考えられない深い領域について思考を巡らせて行きます。

《手嶋の体験》
先日のコーチングセッションで自身の思考の癖についての気付きがありました。私は人と関係値を構築する際に、自分からGiveをするという事を大切にしています。これは、中国に駐在をしていた時に、”現地のメンバーに仕事を依頼する時に染み付いた癖”という事に気付きました。相手にメリットがある or 相手に貸しがある状態でないと人は動かないと感じており、この固定概念に基づいて自分は行動しているという事に気が付きました。

このレベルの思考の深堀りは1人だとなかなか難しいので、セッションの中で問われる事で、言語化が可能です。

また、行動に関してはセッションの中で『自分で決めた!』という、自己決定感があるため、コミットメント力が高まります。人に◯◯をしてください!と言われるのではなく、自分で◯◯をします!と宣言するため、約束を守らなくては・・・という意識が働き、行動に強制力を持たせる事が出来ます。たったこれだけでも、実際に行動に移す確率は跳ね上がります。次のセッションで、全くやってませんとは恥ずかしくて言えないですし・・・

認知バイアスに気付ける

人はどうしても自分のやっている事に盲目的になってしまいます。ただ、コーチが第3者の視点で問いを立てる事で、固定概念や視野狭窄に陥っている状況に気がつくことが出来ます。そもそも、自分が正しい(常識)と思っている事は、育った環境の中での正解でしかないのです(by アインシュタイン)。

成人発達理論とは?

ここからは、改めて成人発達理論について言及していきます。ロバート・キーガンが提唱している成人の成長についての学問です。人は死ぬまで成長し続けられるという考え方がベースにあります。

2方向の成長

成人発達理論では人の器の成長(垂直的な成長)と、技術的な成長(水平的な成長)との2方向あると捉えています。

一般的に勉強をするというのは、専門知識や語学力を磨くなど水平的な成長にフォーカスすることが多いです。ただ、生成AIなどの新しいテクノロジーが常にアップデートされる現代では、それだけだとパフォーマンスは頭打ちします。情報が溢れすぎており、全てのスキル情報をキャッチアップするのが不可能だからです。

メタ認知能力の向上

そんな中で垂直的な成長をする事で、メタ認知能力(視点取得能力)が磨かれていきます。成人発達理論の基礎的な考え方として、成人には4つの発達段階があり、その成長過程でメタ認知力が育まれます。(詳細は以前の記事を参照下さい)

メタ認知能力とは、1つの視点に閉じず、自分の思考/事象を客観的に捉える能力です。皆さんの周りの仕事のできる人を想像して下さい。組織の視点/個人の視点/クライアントの視点など複数の視点を、複合的に持っていると思いませんか?

仕事で間違った見積をクライアントに提出してしまったケースを例に考えてみます。

《NG例》
なんで、自分はこんなイージーミスをしてしまったんだ・・・と自分のミスについて、いつまでもウジウジと考えているパターン。(昔の自分ですが・・・)

《メタ認知が出来る例》
まず、クライアントにミスがあった旨を伝え、謝罪をするシーンを想像。その際に、正しい見積もりがいくらなのか?は絶対に聞かれるので事前に準備をする。一方で、社内では上司に現状の報告をする必要がある。上司目線で考えると、正式な発注になっているのかどうかで、補填対応などが変わってくるので、その状況を整理する。また、正式な発注になっている場合には最悪のケースでの損失金額も整理する。

更に、この事象全体から見積をミスしてしまった事を今後の糧として捉えた時には、どのような対策を打つことが出来るか?も合わせて思考する。
(ココは優先度が低く、関係各所への確認/報告が一段落してから。)

メタ認知能力を得ることのメリット

本質的に何が大切なのか?を捉えて思考が出来るようになります。

意思決定の質の向上

『この提案、全然ダメ。もっと長期の視点を入れて資料作ってよ』と先輩からフィードバックを貰った時に、事実と解釈を分けられるかどうかで全く違う動きになります。感情的になってしまい、何いってんだよ!?そっちの指示が悪いだろと思っていると、せっかくアドバイスを貰える機会をみすみす失ってしまいます。イラッとはしながらも、とは言え、指摘は正しいなと思えると、更に良くするための議論に頭を切り替える事が出来ます(結果として、次の提案ではパフォーマンスが向上していきます)。

また、抽象と具体を行き来して考える事が出来るようになるため、一を聞いて十を知る事が可能です。これが出来ることで、成長角度は飛躍的に上がっていきます。

例えば、業務の中で、言った言わない問題が発生したケースを想定します。その際に、具体の領域だけで考えている人の場合には、今後は同じ事象が発生しないように全ての相談はチャットかメールで送りますとなり、作業工数が爆発的に増加します(正直、実現不可能な対策ですが・・・)。ただ、メタ認知がきちんと出来ると、本質的に良くないことは認識の齟齬が出たことだから、今後は認識が揃っているかを見える化するという本質について思考を巡らせられます。実際の対策としては、フォーマットを作り、それに沿った確認をする事で効率化まで図れるといった、効果的な解決策を考える事が可能です。

未知なことへの耐久力の向上

新規の事業の立ち上げや、キャリアチェンジ、引っ越しなど、未知の事を決めなくては行けない事は日々の生活で発生します。そんな時に、メタ認知が出来ると、わからない事がある中でも思考し続けて、自分なりの最適解を出すことが出来るようになります。特にこの能力は市場の動きが早い現在では重要度が増してきています。仕事の進め方も、今までは固定的で具体的な指示をもとに、実績を重視しながら失敗しないようにする事が正義でした。ただ、最近では業務内容もより抽象的になり内容も流動的です。仕事の進め方も正解が無いため、仮説思考を重ねながらアジャイル型(やりながら軌道修正する方法)で進めていく必要があります。その際に、メタ認知の思考があれば様々な視点で物事を捉えられるため、未知のことに対しても思考停止せずに対応が可能です。

コーチングの価値|成人発達理論

成人発達理論では能力の向上は2つのレベルがあると考えられています。

最適レベル|人のサポートがあって達成できるレベル
機能レベル|自分一人で出せるパフォーマンスレベル

仕事が出来る上司/先輩と一緒に業務をすると普段以上のパフォーマンスが出せるのは、人と一緒に取り組むことで仕事を普段と違う視点でメタ認知出来るからです。コーチングはこの最適レベルで考えを深めていく(コーチから問いという視点を貰いながら思考する)ため、通常よりも高い視座/視点で物事を捉えられます。ここにコーチングを受ける価値/意味があります。成人の成長ではこの最適レベルを如何に出し続けられるか?が能力アップにおいて重要になります(独学で、言語を学ぶよりも、先生や仲間とやった方が覚えやすいのと同じです)。最終的には機能レベルの能力も最適レベルに引っ張り上げられて伸びてきますが、最初に伸びるのは最適レベルです。コーチは問いを通して、メタ認知する機会を作る事でクライアントの垂直的成長を促します。これは、経営者のセッションをしていても同じ事が起きます。自分よりも大きな会社を運営している方でも、自社に閉じた物事の見え方になり、視野狭窄になってしまう部分があります。そこを矯正するために、経営者がコーチングを活用されているケースは多いです。

まとめ

今回、コーチングを成人発達理論というフィルターを通して考察してみました。最近は、人の垂直的成長を促すための1つの手段としてコーチングがあると感じています。そのためのテーマはビジネス/人生など様々ではありますが、メタ認知のための問いを投げ続ける事がコーチとしての価値であり、クライアントの最適レベルを引き上げるための視点をお渡しする事が仕事だと思っています。

(最後に、少しだけ自分のセッションの紹介です)
ちなみに、手嶋のコーチングセッションでは最適レベルを体感して貰った後で、セルフマネジメントのインプットもします。これにより、機能レベルを自分自身で引き上げるためのポイントをお伝えして、自走出来るようにしていきます。体験セッションもやっておりますので、興味のある方はHPからご連絡下さい。


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