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Rワーグナー歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の主人公、靴屋の親方兼職匠歌人であるハンスザックス談〜「謝肉祭劇集」から
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歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」に登場するハンスザックスは、実在する靴職人兼職匠歌人(1494-1576)。仕立て屋の一人息子としてニュルンベルクで育ち、ラテン語学校に8年在籍したのち、靴屋に徒弟として弟子入りし、職匠歌の手ほどきを受けた。各地を遍歴し、靴屋の親方になり、その後職匠歌人ザックスが誕生した。
中世の騎士の恋愛歌「ミンネザング」が騎士階級の没落と共に衰退し、市民階級が文化の領域にも発言権を持った結果「マイスターゲザング」が生まれた。職匠歌についても、まず職匠歌の親方に見習いし、歌学校に弟子として入所し、歌唱法、作詞、作曲を学び、歌手、詩人の段階を経て、最後に自分の歌詞と曲調をひっっさげて、歌会の試験に合格して初めて「親方」となれるのである。
さて、詩人としての道を歩み始めたザックスに、ルターの95か条の論題から口火を切って始まった宗教改革が待ち受けた。ザックスも例外でなく次第にルターに惹かれ「ヴィッテンベルクの鶯」という宗教改革運動に対する賛歌を書いた。
「めざめよ、朝は近づいた。楽しげにうぐいすは、みどりのまがきで鳴いている。その鳴き声は、山や谷にこだまして、夜は西に沈み行き、昼は東に登り行く。はげしくもえる朝やけが暗き雲間を破り来る。」(全編700行にもおよぶ長編詩)
上記の冒頭八行は、ワーグナーの歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第三幕終わり近くの歌合戦の場面で、名声の高い靴屋の親方ザックスを迎えての全員の合唱でそのまま使われている。
詩の全体像は、ライオンの声に誘われて荒野の奥深く迷い込んだ子羊の群れが、明るい朝の訪れを告げる鶯によって目を覚まし、羊飼いの元へ帰るという内容。
鶯はルター、ライオンは教皇、荒野がカトリシズムを表している。ザックスの新しい信仰に対する立場は明らかであり、この詩はザックスの出世作でニュルンベルクの文壇で確固たる地位を得た。
ザックスの詩をそのまま台本に使うなんて、ワーグナーは粋ですね!
劇作家ハンスザックスを考えた場合、謝肉祭劇に才能が発揮されています。謝肉祭劇は15,16世紀にドイツを中心に作られ演じられた市民喜劇で「ハンスザックス謝肉祭劇集」という本が出版されており、今でもハンスザックスの作品を読むことができ、なかなか面白いです。
●マイスタージンガー序曲