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ライナー・マリア・リルケ「マルテの手記」
Die Aufzeichnungen des Malte Laurids Brigge
「あぁ、若くて詩をつくっても、立派な詩はつくれない。詩をつくることを何年も待ち、長い年月、もしかしたら翁になるまで、深みと香りとをたくわえて、最後にようやく十行の立派な詩を書くというようにすべきであろう。
詩は一般に信じられているように、感情ではないからである。(感情はどんなに若くても持つことができよう。)しかし、詩は感情ではなくてー 経験である。Denn Verse sind nicht, wie die Leute meinen, Gefühle (die hat man früh genug), – es sind Erfahrungen.」
「マルテの手記」は、デンマークの古い貴族の末裔マルテが、両親の死を契機にパリに出て詩人を志す日記体の物語。大都会パリの底辺の闇に沈み込み、荒涼たる現実の脅威に押しひしがれかけている。まだ28歳なのに、死や孤独、過去の回想に耽っている。
有名な「詩は経験である」のくだり、「貴婦人の一角獣」のタペストリーの話はもちろん、聞いたことがないような多くの詩人(ボードレールやサッフォーのような有名な詩人も出てくる)、ロシア皇帝の話、デンマークの貴族だった家族や親戚の話、西洋の歴史の話がちりばめられていました。内容は難解で、同じような形式のサルトルの「嘔吐」より数段難しく、3回読み直しました。暗い内容ですが、詩的な表現が素晴らしいので、森有正や辻邦生がレゾナンスを感じたのも頷けました。
読書のBGMは、アリス・アデールが弾くラヴェル「ピアノ独奏曲集」。リルケとラヴェルは同じ1875年生まれ。リルケはどこかでラヴェルの音楽を聴いたかもしれませんね。
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●ラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」の7曲目 Alice Ader(p)