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【来年の翻訳予定第三弾】クラウス・モディック小説「詩人のいないコンサート」

Klaus Modick:Konzert ohne Dichter: Roman

1905 年 6 月、画家ハインリヒフォーゲラーは 5 年間の制作期間を経て完成させた絵画「コンサート(または夏の夕べ)」で、芸術の金メダルを受賞しました。モディツクの小説はこの一枚の絵にまつわる物語です。

 19世紀末、北ドイツ、ブレーメン郊外の小さな町ヴォルプスヴェーデに新しい芸術を目指す青年画家たちが定住し、芸術家コロニーを作りました。画家ハインリッヒ・フォーゲラーと彼のバルケンホフの邸宅は1900年以後、詩人のライナー・マリア・リルケ夫妻など芸術、文学、演劇のあまたの個性が集う場所になりました。

 フォーゲラーの絵画「コンサート」はそんなフォーゲラーの家族やヴォルプスヴェーデの芸術家仲間たちを描いています。

 バルケンホフ邸宅の前の入り口の階段に立つ女性は妻のマルタでマルタの足元にはロシアングレイハウンド犬が横たわっています。
右側にはチェロを弾く画家自身を含む3人の音楽家が座っており、ヴァイオリンを弾く弟のフランツに半分隠れています。彼の義理の弟はフルートを演奏しています。一方、芸術家村の著名な芸術家が左側に描かれ、 画家パウラ・モーダーゾーン、アグネス・ウルフ、リルケの妻で彫刻家のクララ・リルケ=ヴェストホフの姿が見られます。後方にはひげを生やした画家オットー・モーダーゾーンが立っています。

 しかし、この絵には、ヴォルプスヴェーデ芸術家コロニーの頭上に輝く文学スターでフォーゲラーの友人であるライナー・マリア・リルケの姿がありません。

二人の友情に何があったのでしょうか。この小説ではライナー・マリア・リルケの手紙や日記、ハインリヒ・フォーゲラーの断片的な回想録やその他の証言を引用しています。ヴォルプスヴェーデの芸術家村での友情、亀裂、愛を描いており、読みごたえがある作品です。

Heinrich Vogeler: »Das Konzert« (»Sommerabend«) 1905



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