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広報の人がいう「切り口」って何なの?!を言語化してみたら、壮大な話になった件!!

広報担当ならば一度は耳にする「切り口」

皆さんこんにちは。
切り口、という言葉。広報界隈の先輩やPR会社から聞いたことはありませんか?メディア向けの切り口が~とか、このニュースは切り口がないね~などなど、広報界隈では切り口という言葉が頻出します。しかしこの切り口とはなんなのでしょうか?私が広報・PR界隈に入ってきたときも、この切り口という存在が何なのかいまいちよくわかりませんでした。
昔の私のように、切り口って何なんだろう?と悩んでいる人がいらっしゃるんじゃないかと思いました。ぜひ最後までご高覧ください!


切り口、の出現場所

特にプレスリリースの会話をするときに切り口という単語が頻出するんじゃないかと思います。メディアフック、という人もいるかもしれません。私たちPRパーソンにも、ニュースの切り口を考えてほしい、とか、リリースの切り口がなくて悩んでいる、と言ったご依頼をいただきます。プレスリリースに限った話ではありません。新商品の概要は決まっているが切り口を模索している、とか、プロモーションのPR切り口に悩んでいる、というところまで、いろんなところに切り口という単語は出現します。

往々にして、誰かが世の中に情報を発信する際に切り口という言葉が出てきますが、情報の切り口とはなんなのでしょうか?

切り口とはメディアフックではない?

結論切り口とは「コンセプト」であると回答いたします。いろいろな広報学習コンテンツで言われるメディアフックですが、正直メディアフックから考える情報構造構築には、私は否定的な考えを持っています。広報経験初心者の方には知識として知っておくことは大事かなと思いますが、メディアフックを意識するのではなく、最初からコンセプトを意識した方が格段によいです。コンセプトを考えられれば、あとでメディアフックが自然と登場するので、メディアフックはわざわざ考えなくてもよいものです。

メディアフックを意識し始めることでの弊害もあります。メディアに掲載されればよい、という思考や話し合いになりがちだからです。本来メディアに掲載されることは手段であり目的ではないので、メディアに掲載されるため、という話し合いはあまり意味をなしません。本来はみんなが受け取ってもらえるような情報構造を構築することが、広報やPR活動の本質的な目的なはずです。

ちなみによく挙げられるメディアフックは以下でしょう。

季節性
地域性
話題性
公益性
新規・新奇性
意外性
対立構造
画像表現力

よく紹介される「メディアフック」

特に新規・新奇性はコンセプトのことを指すにも関わらず、メディアフックから考えると、新発売や新キャンペーンという要素を入れがちですが、そうではありません。本来ここには、新コンセプトが入ってくるべきなのです。日本は商文化的にどうしても、広報やPR活動が後手にまわりがちです。本来コンセプトがあってしかるべきものが、ないこともあります。苦肉の策で広報界隈の先人たちが「メディアフック」という言葉で表現した功績は大きいのですが、新しい商品やサービスではもう受け入れられない世の中において、もはやメディアフックを後から考えるのではすでに時遅しなのです。ですので、広報界隈で言われている切り口とは、メディアフックというより、コンセプトだと考えるべきです。

通常コンセプトが新しいことが最低条件であり、そのあとに生活者が理解しやすいような素材(エレメント)がある、つまりメディアが表現しやすい素材を準備する、という順番です。上記の**性が大量にあったとしても、コンセプトが新しくなければ生活者にはおろか、メディアにも受け入れられないでしょうし、逆にコンセプトに新規・新奇性があれば、正直他は重要ではありません。皆さんが今後広報・PRスキルをもっと上げたいと考えているならば、メディアフックから考えるのはやめて、コンセプトファーストで考える必要があると思います。

コンセプトとテーマは、似て非なるもの

コンセプトの説明に入る前に、コンセプトとテーマの違いを説明する必要があると思っています。実は二つの言葉はとっても似ているのですが、まったく異なるものなのです。

マーケティング界隈で言うところのテーマとは、事業やプロジェクト、商品やサービスの中心的なアイディアや主題のことを指します。一方、コンセプトは、そのテーマを具体的に表現するためのアプローチやアイディアのことを指します。ちょっと難しい話に突入しておりますが、つまり大きなテーマがあってそれを具体化したものがコンセプトです。もう少し目線を変えると、テーマは自社視点、コンセプトは顧客視点とも言いかえることができます。

5GBの音楽を入れられるポータブル音楽プレイヤー、がテーマであり、「1000曲をポケットに」というキャッチコピーがコンセプトである、というのはipodの開発話で有名な話ですが、開発目線である5GBというデータ量の話ではなく、音楽1000曲(≒5GB)をポケットに入れて持ち運んで聞くことができる、という顧客視点こそがコンセプトです。

選択疲れしている生活者の欲求

生活者は今、情報過多の渦の中におり、胃もたれならぬ「情報もたれ」を起こしている状況です。その中で人は、新しい商品やサービスを求めてはいません。何を求めているか。それはまさに新しいコンセプトを求めているのです。「コンビニジム」「トースト好きがうなるオーブントースター」「油で揚げないフライヤー」「消せるボールペン」「ビーガンコスメ」など挙げればきりがないですが、世の中で受け入れられる商品やサービスはすべて、新しいコンセプトを打ち出しています。これは情報発信における勝利法則と言っても過言ではありません。コンビニジムが単に、「月額約3000円で24時間通い放題」とだけ展開されていたらどうだったでしょうか。「コンビニジム」というキーワードも秀逸ですが、月額約3000円で24時間通い放題だと伝えるのではなく、そのような状態の顧客は、どう思って行動するんだろうか?と考え、思い立った時にいつでもすぐ行けることを伝えようとしたところが重要です。この考え方が「コンビニジム」というコピーに行きつき、最終的にコンセプトを伝えるということにつながったのです。

リリースにもコンセプトが必須

企業のニュース発信主体は当然企業なので、当然と言えば当然なのですが、どうしてもプレスリリースなどの情報は、テーマを語るにとどまりがちです。ですが受け手は今情報過多な状態であり、企業からのメッセージを親切に顧客視点に変換してはくれません。例えば先ほどのipodの話で言えば、5GBと聞いて「ん~音楽だったら1000曲くらいかな?」と変換できる人もなかなかいないですし、調べるのも面倒ですよね?

コンセプトは当然、情報が構築される当初から、つまり商品やサービスの開発が始まるタイミングですでにコンセプトがあるのが理想です。本来この段階で広報・PR担当者は、どのように情報を展開すべきか?という会話をチームに展開するべきですが、多くの広報・PR担当者が、情報のリリース直前でコンセプトがなく困っているんじゃないかと思います。

ですが、コンセプトの基本は「誰がどうなるか」です。言い換えると、ターゲットとビフォアフ(ビフォーアフター)です。正直問題、これを抑えられたら大体の情報でコンセプトを考えることが叶います。もし今手にしている情報にコンセプトがないのであれば、今から作ってみてはいかがでしょうか?これができるようになれば、今日今の瞬間からプレスリリースが格段に上手になります。ぜひ情報を手に取った今、コンセプトを考え、チームで話し合いを持ってみてください。

今からコンセプトを考えてみる

コンセプト(誰がどうなるか)を考えるにあたり、抑えるポイントは以下2つです。

  1. 誰が、の部分は、どんな行動をしている人なのか、という行動起点で考えること。そして界隈で現象化しているかをしっかり見極めること。

  2. どうなるかは、人が元来持ち合わせている欲望基準で考えること。

です。ここからは、コンビニジムを例に挙げて解説してまいります。

① ターゲット(誰向けの商材か)

いろいろあると思いますがざっと考えるに、「ジムに入会したが忙しいを理由に通わなくなってしまった会社員」「ジムに一定のハードルを感じている運動苦手層」「今までも運動を続けられなかった層」などが上がるでしょう。なお、ここは一つに絞ることはありません。どこを強調させるかは戦略によります。ハイチオールCという肝臓サポート薬は、実はもともと二日酔い対策薬として販売していました。その後、美肌効果を謳うことで更なる顧客拡大を狙い、見事に成功したという事例があります。

https://sakereco.info/ja/haichiallc-hangover/#:~:text=%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E9%96%8B%E5%A7%8B%E5%BD%93%E5%88%9D%E3%81%AF%E3%80%81,%E7%9F%A5%E3%82%8C%E6%B8%A1%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

どの商品・サービスにも、複数のターゲットが存在します。どこを強調させると売れるのか?共感してくれる人が増えるのか?はPDCAを重ねることで見えてくるでしょう。

② ビフォアフ(どうなるのか)

コンビニジムは私たちをどう変えてくれるのか?それは「続けられなかった自分から卒業すること」かなと思います。想像の域を越えませんが、運動ができるようになる、痩せる、筋肉がつく、と言った結果ではない気がしています。それはなぜか。
運動に限りませんが、誰しもが、何かを続けようとしたが続かなかった経験を持っています。彼らが私たちに提供するのは、運動機会ではなく、継続できる仕組みなのではないかと考えています。表向きは「全国民へ運動機会を提供すること」かもしれませんが、提供価値は「続けられたことで自信につなげ、運動習慣を楽しくすること」かなと。そのためにコンセプトは、コンビニのようにいつでも気軽に(気持ち的にも金銭的にも)運動ができることしたんだと思います。
大事なのはビフォアフを感情の動きで考えることです。結局人は感情で動きますから。

明日からプレスリリースが上達します

コンセプトを通じて提供する情報は、感情を動かすように設計されるものです。単に事実を説得しても人は動きません。プレスリリース1枚とっても、その内容にコンセプトと感情を動かす提供価値があるかどうかで、人の受け取り方が大きく変わります。つまりメディアへの掲載角度も上がるということです。メディアフックを考える前に、今一度お手元にある情報のコンセプトメイキングから始めてみてください。そうするとおのずと、メディアフックをどうしたらいいか、理解できるようになるはずです。

一緒にコンセプトから一緒に考えますので、困ったらお気軽にご相談ください。長文の読了ありがとうございました!


私のプロフィール

リクルート関連会社で求人広告の企画営業、カフェプロモーションの企画制作会社でのシニアアカウントエグゼクティブを経て、ブランドプロデュースカンパニー株式会社マテリアル入社。化粧品/日用品メーカーの新商品販促企画、PRディレクションを経験。クリエイティブやプロモーションと連動したPRコンストラクチャーを得意とし、PRに紐づくクリエイティブディレクションも行う。現在新規事業を推進するため、株式会社CONNECTED MATERIALに出向し、広報とメディアとのマッチングプラットフォーム「CLOUD PRESS ROOM」のカスタマーサクセス責任者、広報アドバイザー、PRプランナーという顔つきで従事。

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