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赤ちゃんの生歯熱と科学、ついでに韮汁
赤ちゃんは歯が生えるときに熱がでる。
こっちでは当たり前の説として通っていて、私もそんなもんだと思っていたが、どうやら違うらしい。
次女が発熱。心配していた日本にいる母や祖母に、
歯が生えて熱が出てるだけだから大丈夫ー
と電話で話すと、
そんなこと聞いたこともない!
と言われて驚いた。
まさかの共通認識でなかったのか。
長女が乳児の時は病気が少なったので、この話をしたことがなかったか。
赤ちゃんの生歯熱と科学
日本語で調べると、生歯熱というワードはあるようだ。乳歯が生える時に見られる発熱を生歯熱というらしい。
ただ、医学的根拠に乏しいとされている。乳歯が生える頃に熱が出やすいだけで、乳歯が生えるから熱が出るわけでない。科学的に、歯が生えることと発熱とは関係ないのだという。
でも、ベトナムではこの生歯熱はほぼ肯定されているのと言ってもいいんじゃないかと思う。
歯が生え始める赤ん坊が発熱したら、何か他に症状があれば話は別として、まず歯が生えかけている可能性を疑う。これは民間に留まらず、医療関係者でも同じのようだ。
以前、次女が発熱かなにかで病院に行ったとき、お医者さんに 歯が生えてるんじゃないの? と開口一番言われたことがある。(もちろんちゃんと診てはくれたが。) 薬剤師さんも乳児の熱と聞くと、だいたい同じ反応である。
薬も生歯熱を想定して作られている。
私め、こちらの薬を服用する前には、ベトナム医療国内最高峰VINMECが提供している各種薬の情報サイトを読むようにしている。
発熱している次女のために買った解熱座薬のページを読むと、『この薬が使用される場合』の第一に、歯が生えることによる子供の発熱との記載があるのである。
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実際、ベトナムで生歯熱が信じられている理由は、そのケースの多さに由来するのでないかと思う。
生歯熱は通常高熱になることはなく、他の症状などが見られれば、別の病気ももちろん疑う。
パッと熱を出したときに、子供の歯茎を見る。白い歯が歯茎を割ってでてきそう。生歯熱だと思えば、あれやこれやと気を揉むこともない。まっさらな歯茎から歯が生えるのは、言葉を発せない赤ちゃんが体験できる神秘的な現象であると思う。
赤ちゃんの生歯熱VS韮汁
生歯熱の話題の延長で、韮をつかった生歯熱の予防法がある。生後100日を過ぎたら韮の汁を浸した布で赤ちゃんの歯茎を拭く。韮の汁が歯茎を消毒し、今後歯が生えるときに炎症を起こしにくいという。
まだ離乳食も始めていない赤ちゃんには、この苦くて癖のある韮汁は苦痛であろう。次女もこの洗礼を受けたのだが、歯が生えるのが平均より遅かったのもあったからか、効果はなかった。(可哀そうに、ただの吐き戻し損だった…)
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ベトナムはどちらかというと東洋医学に重きを置く傾向があるため、この韮汁の話も何ら不思議な話でない。効果が本当にあるのか、と問われてみればわからない。いわゆる個人差によるものも大きいだろう。
様々な風習や習慣にも共通して言えるが、科学的に証明されていない=正しくない という認識はナンセンス。国ごとに常識は変わるというが、正しいか正しくないかは置いといて、『郷に入っては郷に従え』と『科学主義』の狭間では、ニュートラルな思考でいるのが一番である。