図書館本41冊目『むらさきのスカートの女』今村 夏子
図書館本39冊目で読んだ、今村夏子さんの『とんこつQ&A』(全4篇の作品集)が面白かったので、他の作品も読んでみようと思い、借りて来ました。
2019年の第161回 芥川賞受賞作ということです。
毎回新聞で、受賞作品、受賞作家さん関連の記事は読むのですが、すぐに忘れてしまいます。
この作品も、記憶からこぼれてました。
裏カバーの、本書紹介文
” 近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働き出すように誘導し・・・・・・”
” …ともだちになりたくて、同じ職場で働き出すように誘導… ”って、なに? コワイ話? 面白そう?!
210ページほどの文庫本で、160ページ足らずの物語本文に、30ページ程度の芥川受賞記念エッセイ集が収録されています。
電車通勤読書にはもってこいの軽量コンパクトなボディ。
ハードカバー仕様の方はスルーして、文庫の方を即借りしました。
サクサク読めて、面白かったです。
語りの〈わたし〉は「むらさきのスカートの女」が気になって仕方がないようですが、読者は「そんなあんたの方が気になるわーっ!」という方向に持って行かれてしまいます。
不条理コントを見ているような、妙に可笑しい感じ。
〈わたし〉という人は、まるでストーカーか忍びのものか、というくらいの機動力、観察眼を発揮しているのですが、なんかもう、ひたすら可笑しい…
「執念」というのとも違って、妙に親切。目線が優しい。それも可笑しい。
「なんなん、この〈わたし〉って人…」
そして、ここにも不倫ダメ上司が…
(私の「図書館本」でいうと『52ヘルツのクジラたち』と『マリーゴールド町 心の洗濯屋さん』に出てきたダメ上司に続く、声がでかくて、ハハハッという笑いだけでなぜかインディアンス田渕さんで脳内再現されてしまうような登場人物。田渕さんには申し訳ないです。)
終盤の、勝手に緊張高まる場面、流れ出る〈わたし〉の長台詞など、「キング・オブ・コント」での決勝で見られるような、芸人さんの熱演場面を想像してしまいました。
誰か、コントの舞台で再現してくれませんか。
〈わたし〉が発した台詞、「わたし、今、定期券も無いんですよ」が大好きです。
コントでは、ここで暗転して「完」、がいいです。
文庫化で収録された、受賞記念エッセイ(新聞・雑誌等に執筆されたもので、どれかは読んでるはずなのに、全然記憶にない…)がどれも面白く、まだ〈わたし〉がそこにいるような感覚で読み終えました。
また、今村さんの他の作品を読みたいです。