![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/131014858/rectangle_large_type_2_be2180172d07c535eb18dc7919fcccb2.png?width=1200)
押井守の不穏な世界【うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー】
私は感想文を書くにあたり、意見が被るのを防ぐため出来るだけネットのコメント欄を見ないようにしています。
しかし今回「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」を見終わった後、感想を書く前にネットのコメント欄を巡ってしまいました。
「どこが良いんだろう」
この作品を見終えた直後の感想です。
しかし、この作品の星の数(評価)がネットではすこぶる良いために「真実を理解せず視聴直後の感想を本能のまま書きなぐる行為に出ると恐らく必ず恥ずかしい目に遭う」と心の警報音がビービー鳴っていたので、ここは一旦立ち止まってネットのコメント欄を巡ってみることにしたのです。
そこで発見した押井守の真実。
先に断っておかなければいけないのが、私は押井作品を次の3作品しか見ていません。
・機動警察パトレイバー 2 the Movie
・GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊
そして今回視聴した
・うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
です。
全ての作品を見てもいないのに押井守を語って良いのだろうかとも思いましたが、ここではその片鱗を語るのみに留めるので許していただけたらこれ幸いです。
うる星やつら2のコメント欄を巡って見つけたキーワード。
”不穏”
この言葉を見つけた時に、うる星やつら2の評価と押井守の評価、そして私が見てきた彼の作品が一つに繋がりました。
以前から彼の作品の良さを言語化出来ずに「雰囲気は良いよね」と思い続けていましたが、改めて思うと確かに「不穏」この言葉が一番しっくりきます。
ネットで何やら評判が良いのでうる星やつら2の視聴を開始したのですが、見始める時、私はこの作品に「あたるとラムの甘酸っぱい青春物語」を期待していました。
そう、新海誠の様な展開の作品です。
序盤の80年代のノリの展開には「こんなものだろう」と目を瞑りましたが、何時まで経ってもラブストーリーは発生しない。
しかし、作中のキャラは間違いなくうる星のキャラ達だ。
年代を感じるギャグもうる星やつらのままだ。
だがラブストーリーは発生しない。
それどころか作中の空気がドンドン重くなる。
物語はサクラ先生中心に動き出している。
何だこれは。
おかしい。
ラムとあたるの絡みが少なすぎる。
そう思っていると映画は終わりました。
釈然としない私はネットでコメントを巡る事に。
そして気付いたのです。
そうか。
これが押井守か。
ネットを検索してみると至るところに出てくる逸話ですが、確かにうる星やつら2はるーみっくわーるどを押井守が借りてきて作った映画ではなく、うる星やつらのキャラクターを借りてきた押井守が、うる星やつらのキャラを使って押井守の世界を作り上げた作品であると思います。
そして押井守が作り上げた世界を一言で言い表すのであれば、”不穏”ではないのか。
私が見た彼の3作品の何れにも共通するのが”不穏”であり、彼は不穏を作り上げるスペシャリストなのではないかと、うる星やつら2のコメント欄を見て回りようやく気付いたのです。
ですから「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」にドタバタギャグラブコメ展開を期待してはいけなかったのです。
押井守の作品ですから。
彼の作り上げる”不穏な世界”を堪能しないといけなかったのです。
ドタバタギャグラブコメ展開を求めるなら本編で楽しまないといけなかったのです。
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は押井守の不穏な作品。
これを理解して視聴を始めれば、うる星キャラを使い不穏な世界を作り上げた押井守の手腕に唸らざるを得ないでしょう。
つまり「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は、押井守がうる星やつらのキャラで作り上げた不穏な世界の傑作映画だったのでありました。
(どの様に不穏なのかは映画を見て各自確認しましょう。)
蛇足
無邪気は作品の世界から浮いていた気がする。
あのポジションはコスプレしたチェリーで良かったと思う。
メガネをはじめ、アニオリ(?)キャラが出てこない原作の方があたるの人間関係がスッキリ纏められている気がして、メガネが出てこない(はずの)原作は高橋留美子のセンスの良さが垣間見られる気がします。
パトレイバー2では後藤隊長視点で物語が展開していた記憶があるので、脇役視点(今回はサクラ先生、攻殻機動隊ではバトー)で物語を進めるのは押井守監督のオハコなのかもしれません。