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膜と迷惑

 口の中に入れたみかんの、食いちぎった袋の中から出てくる汁と、果肉と、白い袋を飲み下すための咀嚼、その一つ一つが億劫で、難儀で、退屈だった。
「死んだらいけないんだよ」きのう、学校帰りに新作ゲームのルールを説明してくる果子ちゃんの言葉だけが頭の中に浮いて出てきて、みかんの白い袋と、その浮き出た湯葉みたいな危うい言葉の膜がぴたりとくっついてひとつになろうとする。なんの関連も脈絡もないみかんと死についてが結びつけようとしている脳に、私の意識が迷惑していた。

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