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上司の"KPIどうなってる?"に もう困らない~自治体広報のための効果測定ガイド~

はじめに

 「広報活動のKPIを設定せよ」という上司の一言に頭を悩ませたことはありませんか?民間企業なら売上や利益といった明確な指標が存在しますが、住民サービスを提供する自治体では、どのような指標を設定すれば良いのでしょうか。

 さらに、「効果測定の結果を見せてほしい」「今年の広報施策の成果は?」と議会からの質問が飛び交う中、多くの自治体広報担当者が同じ悩みを抱えていることでしょう。

 自治体の広報担当者にとって、KPIの設定や効果測定は切実な課題です。特に予算要求や議会対応では、広報活動の成果を数値で示すことが求められます。しかし、売上や利益のような明確な指標がない自治体では、何をKPIにし、どう効果を測定すべきかは大きな問題です。

 この記事では、理論ではなく、実際の自治体での経験に基づく具体的な実践方法を紹介します。東京都での広報担当経験を活かし、以下のような課題について具体的な数値と事例を交えて解説します:

・「KPIは具体的に何を測るべきか?」

・「効果測定はどのように始めるべきか?」

・「限られた予算と人員で何ができるか?」

・「議会対策として準備すべきデータは?」
 
 各章で、全国の自治体による具体的な実践事例を紹介し、実務で即座に活用可能な手法やツール、数値目標の設定例、効果測定の手順について詳しく説明します。さらに、実務上の注意点や予想される問題への対応策にも具体的に触れます。

 本稿は、実際の自治体での取り組みに基づいており、限られた予算と人材の中で実施可能な方法を紹介しています。読者がすぐに実践できる具体的な手法を提供することを目的としているため、実務に即した内容となっています。ただ読み流すだけでは面白みに欠けるかもしれませんが、困った時に役立つ記事として、広報担当者の方々に活用していただきたいと考えています。

第1章 自治体広報におけるKPIの意義と実践

1.なぜ今、KPIが必要なのか

 J市の広報課長K氏は、着任早々、議会からこんな質問を投げかけられました。「広報費用対効果はどのように測定していますか?具体的な数値で示してください」
 この質問に対して、K氏は従来の方法である「広報紙の発行部数」「ホームページのアクセス数」といった基本的な数値しか示すことができず、結果として予算削減の検討対象となってしまいました。
 この経験から、K氏は広報活動の効果を客観的に示すための指標づくりに着手しました。その結果、体系的な測定の仕組みを構築することができました。まず、情報到達度の指標として、地区別・年齢層別の広報紙閲読率、デバイス別・時間帯別のウェブサイト到達率、コンテンツ種別・投稿時間帯別のSNSリーチ率を設定しました。次に、理解度・満足度の指標として、施策認知度スコア、内容理解度スコア、住民満足度評価を導入しました。さらに、行動変容の指標としてサービス利用転換率、イベント参加率、オンライン申請率を測定することで、包括的な効果測定を実現しています。

主要測定指標の体系:
1. 情報到達度の指標
o 広報紙閲読率(地区別・年齢層別)
o ウェブサイト到達率(デバイス別・時間帯別)
oSNSリーチ率(コンテンツ種別・投稿時間帯別)
2. 理解度・満足度の指標
o施策認知度スコア
o内容理解度スコア
o住民満足度評価
3.行動変容の指標
oサービス利用転換率
oイベント参加率
oオンライン申請率

2.効果的なKPI設定の実践例

 L市では、四半期ごとに具体的な数値目標を設定し、測定を行っています。重点広報施策として、まずごみ減量化プロジェクトでは、市民の施策認知度を80%以上に高め、対象世帯の40%以上に分別アプリをダウンロードしてもらうことを目指しています。また、資源ごみの分別率を前年比10%向上させることを具体的な数値目標として設定しています。
 子育て支援ポータルについては、子育て世帯の60%以上の利用率を達成し、対象世帯の45%以上にメールマガジンを登録してもらうことを目標としています。さらに、相談フォームの利用数を月間100件以上にすることを目指しています。
 災情報発信においては、防災アプリの登録率を世帯数の50%以上に引き上げ、避難所マップの閲覧数を月間10,000PV以上とすること、そして防災訓練への参加率を地区住民の30%以上にすることを目標として掲げています。

重点広報施策のKPI事例:
1.ごみ減量化プロジェクト
・施策認知度:市民の80%以上
・分別アプリDL数:対象世帯の40%以上
・資源ごみ分別率:前年比10%向上
2.子育て支援ポータル
・子育て世帯の利用率:対象世帯の60%以上
・メールマガジン登録率:対象世帯の45%以上
・相談フォーム利用数:月間100件以上
3.防災情報発信
・防災アプリ登録率:世帯数の50%以上
・避難所マップ閲覧数:月間10,000PV以上
・防災訓練参加率:地区住民の30%以上

第2章 効果的なKPI測定システムの具体的実践法

1. Google Analytics 4の効果的な活用方法

 M市では、GA4を活用して詳細な分析を行っています。ページパフォーマンス指標として、平均セッション時間、直帰率、スクロール到達率を測定しています。また、ユーザー行動指標として、よく読まれるコンテンツ、検索キーワードのトレンド、申請フォームの完了率などを把握しています。

測定すべき重要指標:
1.  ページパフォーマンス指標
·平均セッション時間
· 直帰率
· スクロール到達率
2. ユーザー行動指標
· よく読まれるコンテンツ
· 検索キーワードトレンド
· 申請フォーム完了率

2. SNS効果測定の具体的手法

 N市では、TwitterのQRコードを避難所マップに掲載するなど、各SNSプラットフォームでの効果測定を体系化しています。その結果、災害時の情報到達率が前年比150%に向上しました。
 平常時には、インプレッション到達率を投稿ごとにフォロワー数の80%以上とし、エンゲージメント率をインプレッション数の5%以上、リツイート率を投稿あたり平均30件以上とすることを目標としています。また、フォロワー増加率として、月間純増数200アカウント以上、アクティブフォロワー率を全フォロワーの60%以上とすることを目指しています。
 緊急時には、30分以内到達率をフォロワー数の50%以上とし、第一報から1時間以内にリツイートによる拡散率を当初の3倍以上とすることを目標としています。

平常時の指標:
1. エンゲージメント測定
・インプレッション到達率(目標:投稿ごとにフォロワー数の80%以上)
・エンゲージメント率(目標:インプレッション数の5%以上)
・リツイート率(目標:投稿あたり平均30件以上)
2. フォロワー増加率の測定
・月間純増数(目標:200アカウント以上)
・クティブフォロワー率(目標:全フォロワーの60%以上)
緊急時の指標:
1.   情報到達測定
・30分以内到達率(目標:フォロワー数の50%以上)
・リツイートによる拡散率(目標:第一報から1時間以内に当初の3倍以上)

3.広報紙の効果測定:デジタルとアナログの融合

 O市では、従来の紙媒体とデジタルを組み合わせた効果測定を実施しています。デジタル計測の導入として、各記事にユニークなQRコードを設置し、どの記事に関心が集まっているかを即時に把握しています。「市民農園特集」記事では、QRコードから申し込みページまでの動線を一気通貫で設計し、前年比200%の申込率を達成しました。
 アンケートシステムを活用して、読者の属性情報、関連サービスへの関心度、次号で読みたい内容などを収集しています。さらに、配布員からのフィードバックを収集し、配布時の住民の反応や未配布の理由などを分析して、配布方法の改善に活用しています。

4.クロスメディア効果測定の実践

 P市では、複数の広報媒体を横断的に分析する「クロスメディア効果測定」を実施しています。子育て支援策の認知度向上キャンペーンでは、まず広報紙で特集記事を掲載し、QRコードを設置して専用ランディングページへの誘導を行い、アクセス推移をリアルタイムで測定しています。
 次に、SNSで広報紙掲載内容のダイジェストを配信し、子育て世代向けのターゲティング広告を実施して、エンゲージメント率を測定しています。さらに、オンラインと対面のハイブリッド形式で説明会を開催し、参加者アンケートで認知経路を確認し、申込みフォームで情報接触履歴を収集しています。
 その結果、広報紙からの流入が45%、SNSからの流入が35%、口コミ等その他が20%という結果となり、これに基づいて各媒体の役割を最適化しています。広報紙は詳細情報の提供と信頼性の確保を、SNSはタイムリーな情報発信と対話の促進を、Webサイトは申請手続きと情報のアーカイブを担当するという形で役割分担を行っています。

実施事例:子育て支援策の認知度向上キャンペーン
第1フェーズ:広報紙での特集記事掲載
· 特集ページにQRコード設置
· 専用ランディングページへの誘導
· アクセス推移のリアルタイム測定
第2フェーズ:SNSでの情報拡散
· 広報紙掲載内容のダイジェスト配信
· 子育て世代向けターゲティング広告実施
· エンゲージメント率の測定
第3フェーズ:説明会実施
· オンライン・対面のハイブリッド開催
· 参加者アンケートでの認知経路確認
· 申込みフォームでの情報接触履歴収集
測定結果:
· 広報紙からの流入:45%
· SNSからの流入:35%
·口コミ等その他:20%
この結果から、各媒体の役割分担を以下のように最適化:
1. 広報紙:詳細情報の提供と信頼性の確保
2. SNS:タイムリーな情報発信と対話の促進
3. Webサイト:申請手続きと情報のアーカイブ

5.住民の行動変容測定

 Q市では、市民農園の利用促進キャンペーンを通じて、広報活動の究極的な目的である「住民の行動変容」を測定する仕組みを構築しています。施策実施前は市民農園の稼働率が65%、新規申込みが月平均5件、認知度が40%でした。
 広報施策として、広報紙では利用者インタビューの掲載、初心者向け活用ガイド、申込み方法の図解付き説明を行いました。SNSでは利用者の活動風景投稿、収穫物の写真共有、栽培テクニック動画配信を実施し、現地では見学会の実施、体験プログラムの提供、利用者コミュニティの形成を行いました。
 その結果、施策実施6ヶ月後には市民農園の稼働率が90%に上昇し、新規申込みは月平均20件に増加、認知度も75%まで向上しました。Q市の担当者は、この成功要因について、単なる情報発信ではなく、実際の利用者の声や具体的な活用イメージを提示したことで潜在的な利用者の不安を解消できたこと、そしてSNSでの日常的な情報発信により市民農園が身近な存在として認識されるようになったことを挙げています。

実施事例:市民農園の利用促進キャンペーン
施策実施前の状況:
· 市民農園の稼働率:65%
·  新規申込み:月平均5件
·  認知度:40%(市民アンケートより)
広報施策の展開:
1. 広報紙での特集
· 利用者インタビュー掲載
· 初心者向け活用ガイド
· 申込み方法の図解付き説明
2. SNSでのコンテンツ展開
· 利用者の活動風景投稿
· 収穫物の写真共有
·栽培テクニック動画配信
3.現地での取り組み
· 見学会の実施
· 体験プログラムの提供
· 利用者コミュニティの形成
測定結果と効果: 施策実施6ヶ月後
· 市民農園の稼働率:90%(25ポイント増)
· 新規申込み:月平均20件(4倍増)
· 認知度:75%(35ポイント増)

第3章 効果測定データの活用と改善サイクル

1. データに基づく広報改善の実践

 R市では、ごみ分別アプリの利用促進において、データを活用した継続的な改善を実現しています。改善前は、アプリダウンロード数が5,000件、継続利用率が30%、分別正確性が75%でした。
 ユーザー行動分析により、アプリ起動が朝7時台に多いこと、プラスチック容器が最も検索される品目であること、細かい分別ルールの説明ページで離脱が多いことが分かりました。また、アンケート結果から、文字が小さい、検索結果が分かりにくい、プッシュ通知が煩わしいといった課題が明らかになりました。
 これらの課題に対して、文字サイズの拡大、検索結果の視覚化、プッシュ通知の設定カスタマイズ機能追加などのUI/UX改善を実施しました。また、よく検索される品目のクイックアクセスボタン設置、分別の図解・写真の追加、分別のポイント解説動画の追加などのコンテンツ改善も行いました。
その結果、アプリダウンロード数が15,000件に増加し、継続利用率が65%に向上、分別正確性も90%まで改善しました。

具体的な改善事例: ごみ分別アプリの利用促進
改善前の状況:
· アプリダウンロード数:5,000件
· 継続利用率:30%
·  分別正確性:75%
データ分析による課題抽出:
1. ユーザー行動分析
· アプリ起動が多い時間帯:朝7時台
·  最も検索される品目:プラスチック容器
·  離脱が多いページ:細かい分別ルールの説明ページ
2. アンケート結果
· 「文字が小さい」という指摘が多数
·検索結果が分かりにくいとの声
· プッシュ通知が煩わしいとの意見
改善施策の実施:
1. UI/UXの改善
· 文字サイズの拡大
· 検索結果の視覚化
· プッシュ通知の設定カスタマイズ機能追加
2. コンテンツの改善
·よく検索される品目のクイックアクセスボタン設置
· 分別の図解・写真の追加
·分別のポイント解説動画の追加
改善後の効果測定結果:
· アプリダウンロード数:15,000件(3倍増)
· 継続利用率:65%(35ポイント増)
· 分別正確性:90%(15ポイント増)

2.PDCAサイクルの実践的運用

 S市では、市民プール利用促進キャンペーンにおいて、月次でのPDCAサイクルを運用しています。計画段階では、利用者数を前年比120%とする目標を設定し、子育て世代とシニア層をターゲットとして、7月から9月の3ヶ月間で実施することを決定しました。
 実行段階では、広報紙で水中運動の健康効果を医師監修で紹介し、利用者インタビューを掲載し、割引クーポン付きQRコードを掲載しました。SNSでは水泳教室の様子を動画配信し、利用者の声をショート動画で紹介し、天気と連動した投稿配信を行いました。
 評価段階では、日別利用者数の推移、年齢層別の利用状況、クーポン利用率などの数値データと、利用者アンケート結果、SNSでのコメント内容、スタッフからの報告などの質的データを収集しました。
 改善段階では、週次での実績レビュー、コンテンツ改善、予算配分の調整を行っています。

実践例:市民プール利用促進キャンペーン
Plan(計画)段階:
· 目標設定:利用者数前年比120%
· ターゲット:子育て世代、シニア層
· 実施期間:7月〜9月の3ヶ月間
Do(実行)段階での具体的施策:
1.  広報紙での特集
· 水中運動の健康効果を医師監修で紹介
· 利用者インタビュー(子育て世代、シニア各2名)
· 割引クーポン付きQRコード掲載
2. SNSでの情報発信
· 水泳教室の様子を動画配信
· 利用者の声をショート動画で紹介
· 天気と連動した投稿配信
Check(評価)段階での測定項目:
1. 数値データ
·  日別利用者数の推移
· 年齢層別の利用状況
·  クーポン利用率
2. 質的データ
·  利用者アンケート結果
· SNSでのコメント内容
·  スタッフからの報告
Act(改善)段階での取り組み:
·  週次での実績レビュー
·  コンテンツ改善
·  予算配分の調整

3. 予算要求のためのデータ活用

 T市では、デジタル広報予算の増額を実現するため、詳細なデータ分析を行いました。広報紙での告知の場合、印刷・配布コストが100万円で情報到達数が5万世帯、1世帯あたりのコストが200円でした。一方、SNS広告での告知の場合、広告出稿費が30万円で情報到達数が8万世帯、1世帯あたりのコストが37.5円という結果になりました。
 具体的な成果事例として、児童館イベントの告知では、従来の広報紙のみの場合は定員充足率が60%でしたが、SNS広告併用後は95%まで向上し、追加コストを考慮しても1参加者あたりのコストが40%削減されました。
将来予測に基づく投資効果として、65歳以上のスマートフォン所持率が年間5%増加していること、デジタル広報への反応率が年間10%向上していること、5年後の費用対効果が現状の2倍になると予測されることなどを示しました。
 このようなデータに基づく予算要求の結果、デジタル広報予算が前年比150%の増額を実現し、新規施策のための予算として2000万円を確保し、専門人材の採用予算として新規で1名分を確保することができました。

具体的な予算要求資料の作成例:
1.費用対効果の比較 従来の紙媒体とデジタル広報の比較:
広報紙での告知の場合:
· 印刷・配布コスト:100万円
· 情報到達数:5万世帯
·  1世帯あたりコスト:200円
SNS広告での告知の場合:
·  広告出稿費:30万円
·  情報到達数:8万世帯
·  1世帯あたりコスト:37.5円
2. 具体的な成果事例 児童館イベントの告知:
· 従来の広報紙のみの場合:定員充足率60%
· SNS広告併用後:定員充足率95%
· 追加コストを考慮しても、1参加者あたりのコストは40%削減
3.将来予測に基づく投資効果 スマートフォン所持率の推移と広報効果の相関分析:
·   65歳以上のスマートフォン所持率:年間5%増加
·   デジタル広報への反応率:年間10%向上
·    5年後の費用対効果予測:現状の2倍
このようなデータに基づく予算要求の結果:
· デジタル広報予算:前年比150%の増額を実現
· 新規施策のための予算:2000万円を確保
·  専門人材の採用予算:新規で1名分を確保

第4章 今後の展望と実践的な取り組み

1.AI技術の活用事例

 U市では、AIを活用した広報効果測定の実証実験を行っています。テキストマイニングによる分析では、住民の声の分析においてAIによるテキスト解析を実施し、SNSのコメントや問い合わせ内容から様々な傾向を把握しています。
 感情分析による住民の反応測定では、ポジティブやネガティブな反応の割合を分析し、具体的な改善要望のキーワードを抽出し、緊急性の高い問題を早期に発見しています。また、タイムライン分析により、時間帯別の反応傾向、季節要因との相関、イベント影響の測定を行っています。
 実際の活用事例として、ごみ収集に関する住民の声を分析した結果、「雨の日の収集」に関する不満が多いことが判明しました。これを受けて、雨天時の対応マニュアルを作成し広報することで、苦情が50%減少するという成果を上げています。

テキストマイニングによる分析: 住民の声の分析において、AIによるテキスト解析を実施。SNSのコメントや問い合わせ内容から、以下のような傾向を把握:
1.  感情分析による住民の反応測定
·  ポジティブ/ネガティブな反応の割合
· 具体的な改善要望のキーワード抽出
·  緊急性の高い問題の早期発見
2. タイムライン分析
·時間帯別の反応傾向
·季節要因との相関
·  イベント影響の測定
実際の活用事例: ごみ収集に関する住民の声を分析した結果、「雨の日の収集」に関する不満が多いことが判明。これを受けて、雨天時の対応マニュアルを作成し、広報することで苦情が50%減少しました。

2.バーチャル市役所の効果測定

 V市では、メタバース空間に市役所の窓口を開設し、詳細な効果測定を実施しています。アクセス分析では、時間帯別の利用状況、利用者の年齢層分布、滞在時間を測定しています。対応品質の評価として、5段階評価による応対満足度、問題解決率、再訪問率を分析しています。また、コスト効果として、従来の窓口対応との時間比較、人件費の削減効果、住民の移動時間・コスト削減効果を測定しています。
 この結果、夜間・休日の問い合わせ対応が可能になり、若年層の利用率が従来の3倍に増加し、窓口での待ち時間が平均15分短縮されるという効果が確認されました。
 V市では、メタバース空間に市役所の窓口を開設し、以下のような効果測定を実施:
1. アクセス分析
· 時間帯別の利用状況
· 利用者の年齢層分布
· 滞在時間の測定
2. 対応品質の評価
·  応対満足度(5段階評価)
· 問題解決率の測定
· 再訪問率の分析
3.  コスト効果の測定
· 従来の窓口対応との時間比較
· 人件費の削減効果
· 住民の移動時間・コスト削減効果
この結果、以下のような効果が確認されました:
·  夜間・休日の問い合わせ対応が可能に
·  若年層の利用率が従来の3倍に
·  窓口での待ち時間が平均15分短縮

3. 将来に向けた実践的な準備

 W市では、統合データ管理システムを構築し、各種広報媒体のデータを一元管理してリアルタイムでの効果測定を可能にし、AIによる自動分析レポートを生成しています。
 X市では、デジタル広報人材の育成プログラムを実施し、データ分析の基礎研修、SNS運用実践講座、効果測定手法の習得を進めています。
 Y市では、広報戦略室を新設し、専門職員を配置して外部専門家との連携を強化し、部署横断的なプロジェクト体制を構築しています。

今後の広報活動において、以下のような準備と対応が重要となってきます:
1. データ収集基盤の整備 W市の事例: 統合データ管理システムの構築
· 各種広報媒体のデータを一元管理
·  リアルタイムでの効果測定が可能
·  AIによる自動分析レポートの生成
2. 人材育成の取り組み X市の事例: デジタル広報人材の育成プログラム
· データ分析の基礎研修
· SNS運用実践講座
· 効果測定手法の習得
3. 組織体制の整備 Y市の事例: 広報戦略室の新設
· 専門職員の配置
· 外部専門家との連携
· 部署横断的なプロジェクト体制

まとめ 効果的な広報活動のために

 本稿を読み始めた時、「KPIって難しそう」「効果測定なんてできるのかな」と不安を感じていた方も多いのではないでしょうか。しかし、ここまで見てきたように、全国の自治体では既に様々な工夫を重ねながら、効果的な広報活動を展開しています。大切なのは、完璧を目指すことではなく、できることから少しずつ始めていくことです。
 もう一度言います。まずは人まねでもいいので、「やってみること」です。こういう「当たって砕けろ」的なやり方は公務員の皆さんは嫌がるのですが、そういうものなのだから仕方ありません。
 ある広報課長は次のように語っています:「最初は本当に手探りでした。でも、小さな成功体験を積み重ねていくうちに、だんだんとコツが分かってきました。今では、データに基づいた広報活動が当たり前になっています」
 効果的な広報活動を実現するためには、まず明確な目標設定を行い、具体的な数値目標を設定し、実現可能な範囲で段階的に実施し、定期的な見直しと調整を行うことが重要です。次に、継続的な測定を日常業務に組み込み、自動化できる部分を特定し、効率的なデータ収集の仕組みを作ることが必要です。そして、測定結果を定期的に振り返り、具体的な改善施策を立案し、予算要求に活用していくことが大切です。
 本稿で紹介した事例や手法は、あくまでも参考例で、実際の例を分かりやすいように再構成したものです。それぞれの自治体の規模や特性、住民ニーズに合わせて、最適な形でアレンジしていただければ幸いです。
 この取り組みは決してゴールのない旅路です。しかし、その一歩一歩が、より良い住民サービスと、より効果的な情報提供につながっていくのです。みなさんの広報活動が、より充実したものとなることを願っています。

**参考資料** **
■公的機関のガイドライン
◯総務省:みんなの公共サイト運用ガイドライン
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/b_free/guideline.html
◯総務省:地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン
https://www.soumu.go.jp/denshijiti/jyouhou_policy/ 
◯デジタル庁:デジタル社会推進標準ガイドライン
https://www.digital.go.jp/resources/standard_guidelines


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