コレクターがつくった美術館【東京】
ご無沙汰してます。ひろかです。
最近、noteはすっかりサボっておりましたが…生きております。
近頃我が家では空前の「博物館・美術館ブーム」がきまして、
週末が来るたびにいそいそと都内各所に出かけております。
最近は企画展だけしか開催しない美術館も増えてきましたが、
常設展も味わいがあっていいですね。何より空いててゆったりしています。
東京には本当にたくさんの様々な美術館があって、とてもありがたいのですが
実業家や著名な芸術家の方のコレクションを基にしたものが結構あるんですね。
一つひとつの美術館をたどれば、誰のコレクションなのかはわかるのですが
網羅的になっているWEBページなどはあまりなかったので、備忘録を兼ねて紹介していこうと思います。
そもそも博物館を網羅的に紹介している記事もほとんどないので、もしかすると知らない博物館も出てくるかもしれません。
0 今回ご紹介する博物館・美術館の探し方
というわけで、まずは博物館・美術館の探し方から簡単に書いていこうと思います。
(美術館は博物館の一形態なので、この記事では表現が混じっているのはご容赦ください)
博物館は「博物館法」によって、都道府県の教育委員会から登録や指定を受けています(受けていなくても「博物館」を名乗ることはできますが)
登録と指定は、ざっくり言えば公開日数や学芸員さんの数などの違いがあり、
登録博物館は、だいたい通年開いている、私たちのイメージする「博物館」です。
東京都の場合は、東京都教育委員会の生涯学習に関するページの中で最新リストを公開しています(このページ、めっちゃ探しにくい)
また、全国の博物館は文化庁のホームページで公開していますので、こちらから探すこともできます
今回はこの東京都の登録博物館の中から、個人や家族などでコレクションしたものをベースとした美術館を選んで紹介していきます。
1 財界人がコレクションした美術館
1.1 出光興産創業者・出光佐三:出光美術館【千代田区】
出光興産創業者の出光佐三(1885−1981)がコレクションしたのは、日本の書画、中国・日本の陶磁器など東洋古美術が中心でした。
出光美術館では、国宝2件、重要文化財57件を含む約1万件のコレクションを年に数回の企画展で展示しています。
皇居のすぐ近くのビル9階にあり、休憩場所から皇居の景色を眺められるのも素晴らしいです。
ビルの建て替え工事に伴い、2024年末でいったん休館する予定です
(再開をとてもとても楽しみにしています)
1.2 ブリヂストン創業者・石橋正二郎:アーティゾン美術館【中央区】
石橋正二郎のコレクションは日本近代洋画から始まり、その手本となった西洋美術へと広がっていきました。
以前は「ブリヂストン美術館」という名称でしたが、2020年に「アーティゾン美術館」へと変更しています。
雪舟からピカソまで、様々な作品を所有しており、ルノアール展など話題性のある展覧会も多く開催しています。
ホームページのコレクション解説が結構詳しいのでホームページ覗くだけでも楽しいです
1.3 三井グループ(三井家):三井記念美術館【中央区】
三井グループは越後屋に起源をもつかつての財閥ですが、各家が持つ美術工芸品を集めて作られたのが日本橋にある三井記念美術館です。
美術工芸品は4000点、切手のコレクションが13万点(!)あり、このうち国宝が6点、重要文化財が75点(本館所管1点を含む)、重要美術品が4点あります。
三井家以外にも、ダイセル元社長の昌谷忠コレクションや三井家の親戚関係からの寄贈品もコレクションされています。
春先に開かれる「三井家のお雛様」展は圧巻ですね。当時の豪商や大名家の様子をうかがうことができます。
三井本館の上にある美術館なので、若干の入りにくさ(圧?)を感じることがあるかもしれません… 笑
1.4 東武鉄道社長(根津嘉一郎):根津美術館【港区】
東武鉄道の4代目社長を務めた根津嘉一郎が、日本や東洋の古美術品を中心に収集し、現在のコレクションには国宝7件、重要文化財88件、重要美術品95件を含んでいます。
特に茶道具のコレクションは圧巻です。
美術館自体も茶室のようなイメージになった隈研吾作品で、展示品が美しく見える工夫が随所になされ、平日にゆっくりと訪れたいような雰囲気です。
1.5 大倉財閥(大倉喜八郎):大倉集古館【港区】
大倉財閥として様々な事業を展開した(現在も多くの会社が現存しています)大倉喜八郎は、自身の屋敷の中に施設美術館として大倉美術館を建て、それが現在の大倉集古館として運営されています。
大倉喜八郎が美術品の収集を始めたのは、文化財の海外流出を嘆き、保護のためだったと言われています。
関東大震災による火災で一部焼失してしまったものもありますが、残存品を中心に、国宝3件、重要文化財13件及び重要美術品44件を含む美術品約2500件を収蔵しています。
美術館の建物自体が雰囲気があってとても良いので、周辺散策とあわせてどうぞ!(駅からは坂道が続きます)
1.6 荏原製作所社長(畠山一清):畠山記念館【港区】
能登(現在の金沢)の守護大名畠山家の血筋で、荏原製作所の創立者でもある畠山一清が、私邸内に気づいた「茶の湯の美術館」がこの畠山記念館です。
コレクションは、国宝6件、重要文化財33件を含む1300件にわたり、茶道具だけでなく書画、陶磁、漆芸、能装束などもあります。
お茶室のような雰囲気の静かな時間が流れる美術館です。
なお、現在は長期休館中です(2024年秋再開予定)
1.7 住友グループ(住友家):泉屋博古館東京【港区】
財閥の住友家が所蔵する美術品を集めた美術館で、京都と東京に展示室があります。
中国古代青銅器のコレクションが圧巻ですが、それ以外にも住友家が発注した装飾品や絵画などがあり、国宝2件、重要文化財19件、重要美術品60件を含む3500点があります。
アクセスは六本木一丁目駅から泉ガーデンタワーを抜けた先にあり、六本木周辺のお散歩とあわせて訪問すると良いかもしれません。
1.8 肥後藩主細川家:永青文庫【文京区】
肥後藩主であった細川家の歴史資料や文化財を収集展示する美術館で、国宝8件、重要文化財35件をふくむ、およそ6000点の美術工芸品と88000点の歴史資料を所蔵しています。
こちらの特長としては、なんといっても細川家の歴史的な資料が大量にあることで、甲冑や兜、大名家の調度品まで同じおうちのもので一式揃っているのがいいですよね…。どんな生活をしていたんだろうかと想像が膨らみます。また、中世日本での外国人について描いた屏風など、ちょっと変わった美術品も多いと思います。
1.9 東急創業者(五島慶太):五島美術館【世田谷区】
東急鉄道の五島慶太は鉄道事業に関連して大学の誘致や渋谷の開発など様々な事業を行った人物です。世田谷の上野毛という素敵な立地で、建物もお庭も素敵なお屋敷…という雰囲気です。
コレクションは美術館としては約5000件、国宝5件、重要文化財50件を所有していますが、これ以外に大東急記念文庫として約4万5千冊(国宝3件、重要文化財33件)の資料を所有。展示しています。
コレクションを見ると、五島慶太さん、源氏物語に関するものなど京都の雰囲気が好きだったのだろうなぁ~なんて想像してしまいます。
1.10 三菱2代・4代社長(岩崎彌太郎・小彌太):静嘉堂文庫(美術館)【世田谷区・千代田区】
これは分かりやすさのためには美術館そのものは千代田区(出光美術館のすぐ近く)と言った方が良いのですが、本部は相変わらず世田谷にあるのでここに掲載になりました。現在では世田谷は建物内など非公開ですが、年に何度か公開される日があるようです。
三菱の創業者岩崎彌太郎の弟とその息子小彌太のコレクションです。
国宝7件、重要文化財84件を含むおよそ20万冊の古典籍(漢籍12万冊・和書8万冊)と6,500件の東洋古美術品…と圧倒的な収集量を誇っています。おじいちゃん(彌之助)のコレクションと孫(小彌太)のコレクションの系統が違うのがやっぱり個人の差が出るのだなぁと感じます。笑
孫の小彌太さんは静嘉堂文庫をコレクションのレベルから保存・研究など現在の静嘉堂の体制に近いところまで組織立てた功績も大きいようです。
個人的には、新しい美術館になってからまだ行ったことがないので、次の
企画展をぜひ見に行きたいと思っています。
1.11 山種証券[現SMBC日興証券]創業者(山崎種二):山種美術館【渋谷区】
山種証券を創業した山崎種二(どうでも良いのですが、あ、山種ってその略なの…という感想を持ちました。)が個人で集めていた日本画を基として開かれた美術館です。6点の重要文化財と重要美術品(旧制度)を含む1800点余りを所有しており、「自他ともに認める(?)日本画専門」美術館です。
館内が照明など非常に見やすく設計されており、広尾の雰囲気そのままに静かに鑑賞することができます。
個人的には館の学芸員さんによるYouTubeが(面白くて)好きです。
YouTubeもぜひ。たまにやっていた謎の企画復活してほしい…。
1.12 東邦生命保険相互会社社長(太田清藏(五代):太田記念美術館【渋谷区】
かつて存在した東邦生命保険相互会社(現在はジブラルタ生命に引継ぎ)の社長、太田清藏(五代・太田家は代々「清藏」の名を継いできた)のコレクションから創られた美術館です。
現在のコレクションは約15000点、そのうち12000点を太田清藏(五代)が集めたというのですから…すごいですね。
最近訪問できていないのですが、場所も明治神宮や原宿の近くですし、外国の方もたくさん訪問しているかもしれませんね。
1.13 実業家(戸栗亨):戸栗美術館【渋谷区】
土木建築業や材木業などで戦後の復興期に活躍した戸栗亨は、日本の生活様式が変わっていくのを見て、古い生活品などを集めて民具館のようなものを創ろうとしたといいます。現在では磁器を中心に古書画など7000点が集められています。
こちらは私がまだ行ったことがなく、情報も少なくて恐縮ですが、松濤のお屋敷を美術館として開放しており、道中やお庭なども含めて楽しむことが出来そうです。
1.14 ホテルニューオータニ創業者(大谷米太郎):大谷美術館【北区】
大谷美術館という名前になっていますが、場所は都立古河庭園の中の旧古河邸です。お庭とバラがとにかく有名で、こちら自身が見る価値がありますが、企画展として大谷米太郎のコレクションから建物内で展示を行っています。
今回、情報がなかったため、美術品等のコレクションがどの程度あるのかは分かりませんでしたが、浮世絵やジョサイア・コンドル(旧古河邸の設計者)の資料などを保有しているようです。
お庭は東京都、建物周辺は大谷美術館と管理が複数にまたがっており、お庭と建物それぞれに入館料(入園料)がかかりますのでご注意くださいね。
美術品等の企画展をアナウンスしていなかったとしても、建設時の資料などが展示してある場合もあり、邸宅として一見の価値ありです。
お庭の案内はこちら
1.15 千住金属工業社長(佐藤千壽):石洞美術館【足立区】
はんだの国内最大手千住金属工業の社長、佐藤千壽が十代後半(!)から集めたコレクションを基に企画展等を行っています。
現在では世界各地のやきもの、茶の湯釜、ガンダーラの仏像、漆器、青銅器、玉器など1500点以上を収集しているようです。
京成線の千住大橋駅を降りるとすぐに千住金属工業の敷地があり、その中にあるのですが、建物が六角形になっておりとても特徴的です。
このほかにも芸術家がコレクションした(自分の作品ではない)美術館ももちろんあるのですが、思いのほか長くなってしまったので、今回はここまで。たぶん続きます!!(意志薄弱)
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