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ミドルライフを明るく照らす「中年女子画報」

かねてから一気読みするために楽しみにとっておいた「中年女子画報」シリーズ(柘植文、竹書房)を読了した。

大好きな「喫茶アネモネ」(東京新聞出版局)の著者でもある柘植さんが、中年であることを自覚し始めた40歳の時点から、せっかくだからミドルライフを楽しんでステ中(ステキな中年)を目指しましょうと、いろんなことを体験してみるエッセイコミック。

現在、第1巻から5巻まで(執筆当時40歳~50歳)出ている。

第1作目(2015年)

2作目(2017年)

3作目(2019年)

4作目(2021年)

5作目(2023年)

著者は人生の折り返しに差しかかり、「色々やっとかなきゃ感」が強くなったと書いているが、この「色々やっとかなきゃ感」がまさに今の私の心境そのもので、本書にドはまりしてしまった。

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1人海水浴、香水作り、パラグライダー、アフタヌーンティー、恋活、昭和レトロなレジャースポット探訪、ストリップ鑑賞、ダイエット、手術、河原でインスタントラーメンとコーヒーを味わう・・・などなど、いろんなことをゆるゆる実行していく。

特に興味を惹かれたのは「綾小路きみまろスーパーライブ」と「マハラジャ70-80年イベントデー」。

きみまろにいじられてキャーキャー喜んでいる観客のおばさん、おばあさんたちを見たいのである。
そういえば母も「きみまろはいい。あの人面白いわ」と言っていたな。

そして私はディスコ世代ではないけれど、当時の音楽に合わせてかっこよく踊るというのをやってみたい。

1996年頃、大学時代に友人に連れられて嫌々、渋谷のクラブに行ったことがある。

地味女子だったのでその場の空気に気圧されていたたまれなかったが、友人に中央に引っぱられていって、テクノやらなにやら洒落た音楽に合わせて気怠そうにかっこよく踊るクラバーたちに混じって、見よう見まねでオドオドとへっぴり腰で体をくねらせてみた。

その姿はまるでどこかのカルト宗教の踊りのようだったと思うので(笑)、四半世紀以上ぶりにリベンジしたい。
せっかくなら好きな時代の70年代80年代のディスコで。

当時の倍以上の年齢になって多少なりとも図々しくなったので、ノリノリで踊れるかもしれない。

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本書の魅力は内容のみならず、その絵にもある。
柘植氏は中高年を実に鋭く観察しており、彼らの風貌の特徴をとらえて描くのが異様にうまい。

第3作目で競艇場に行く回(タイトル「味のある中年男子をウォッチング」)が白眉である。
その場に集う中高老年男子たちの姿があまりにリアルで、「こういうおじさん、おじいさん、いるいる~!」と、競艇場に行ったこともないのに感心して膝を打った。

「何年前のパンタロン?」と著者がつっこむ老年男子の服装は、もはや2周3周回って令和の若者よりもヒップでクールである。

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第2巻(44歳版)の後書きで、著者は言う。

人生も半分はすぎたであろう今、やりたいことはなんでもやってみたらいいんじゃないかなと思うんですよ、出来ることであれば。
「シベリアで-50度を体験したい!」
とかだとなかなか難しいですけど、
「玄関のドアにマヨネーズを塗ってみたい!」
などの、すぐ出来ることはやったらいいと思うんですよ。中年生活も微妙に楽しくなるんじゃないでしょうか。でも、人様に迷惑をかけるようなことはいけませんね。塗ったマヨネーズはご自分でおいしく召し上がってくださいね。

「中年女子画報~44年目の春~」129ページ

こんなアホな(←失礼)励まし方をしてくれる柘植先生が大好きだ。
自虐・毒吐き・やさぐれ度合いが絶妙で、私のツボにはまりまくった。

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自分の40代を振り返ってみると、

43歳・・・うつ発症。

44歳・・・人生で一番きつかった年齢。

45歳、46歳・・・リハビリ期間。コロナ禍ということもあり、地味に静かに過ごす。

47歳・・・何かやりたいという意欲が出てくる。note開始。

48歳・・・マラソン大会にちょくちょく出るようになる。

49歳現在・・・あれやこれや手を出し始める。

といった感じ。
もっといろんなことをやれば良かったなという後悔もあるけれど、うつ病という大打撃を食らったこともあるし、まあしかたがない。

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著者は私の2、3歳上。今後も「中年女子画報」「熟年女子画報」「老年女子画報」と末永く書き続けていってほしい。

「柘植先生、貴女の背中を追って中年ライフを充実させていきますので、今後ともよろしくお願いします!」

と胸の内でつぶやきながら、さてこれから何をしようかと思案しているところである。

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