なめらかプリンに守られて ◇うつ闘病記 その9◇
2019年3月にうつ病を発症し、それまで通りに仕事を続けられなくなって、5月頃から3か月間、10時から16時までの時短勤務にしてもらった。
給料が減り、通院費用など諸々お金がかかるため、節約のために小さなお握り2つ、ソーセージ2本、ゆで卵1つ、バナナ半分をタッパーに入れて持って行っていたが、相変わらず食べ物がほとんど喉を通らない。
薬を飲むために無理に少し食べて、抗不安薬や漢方薬の入った袋をガサゴソと漁り、これから自分はどうなるのだろうと怯えながら、3か月は過ぎていった。
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時短終了後は9時から17時半の通常勤務に戻った。曲りなりにも元に戻れたのだから、多少は症状が良くなっていたのだと思うが、今となっては当時どんなふうに会社で過ごしていたか、あまり記憶がない。
休憩時間にうつ改善法をパソコンでとりつかれたように調べまくっていたこと、そして、作家の故山本文緒さんのうつ闘病のインタビュー記事を何度も読んでは励まされ、なんとか心を保っていたことは鮮明に覚えている。
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その頃、仕事を終えてようやく家にたどり着き、ぐったりしている私を毛布のように優しく包んでくれた食べ物があった。
プリンである。
固めの焼きプリンではなく、とろりとやわらかいなめらかプリン。
元々甘いものに目がない。この世で一番好きなスイーツはモンブランだ。
しかし、マロンクリーム、生クリーム、栗などが何層にも盛られたモンブランは、うつの体にはゴージャス過ぎて、食べるにはいささか体力を要した。
コンビニやスーパーで売っている、150円ぐらいの小さめサイズのプリンがちょうど良かった。
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表面に匙を入れ、口に含む。
二匙目、三匙目。
あぁ、おいしい。
最後のひと匙をすくいとり、スプーンを舐めると、プラスチックの小さな容器を手のひらで包みこみ、ソファーの上でうなだれてじっとしている。
「うつ病の人はそうでない人よりも糖尿病になりやすいので、甘い物は控えめに」と医師に指導されたが、明日をも知れぬ思いの私にとって、知ったこっちゃなかった。ほぼ毎日食べ続けた。
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目にも優しいクリーム色のプリンは、ほんのひととき心を落ちつかせてくれるコンフォートフードだった。
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