回想録・出会った患者さん(5/7)
多趣味な小野正一(仮)さんは、旅行も好きでした。特にイギリスを旅するのが好きで、レンタカーで周遊する事もあったと言います。
「英語は得意なんですか?」と聞くと、
「苦手だけど、仕事の合間に勉強したんだよ」って言っていました。
「仕事の合間の勉強で、何とかなるんですね」と聞くと
「物事ってね、まず自分で3努力してみる。すると周りの人が5手伝ってくれて、人並みになる。普通はそれで充分だと思うんだけど、人より突き抜けた存在や、一流と呼ばれるようになるには、あと2を自分で努力する必要があるんだ」
施術中に、こんなにも深みのある話を聞かせて頂き、素直に感動したものでした。
今、人生の第3コーナーに差し掛かり、仕事のやり方を変えながら、今までの蓄えをどう活かしていくかを勉強しているところです。
小野さんは元証券マンでセミナーの講師もされていたので、今となれば色々と教わりたかったと思っていますが、きっと「まずは自分で調べてみるといい」と言われるのかな、なんて想像しています。
晩年は透析の影響で腰痛がひどくなりましたが、それでも一人で一泊二日の旅行に行っていました。
ある日「明日は、どこか行かれるのですか?」と聞くと
「鬼怒川の金谷ホテルに行ってくるよ、あそこは接客といい、食事といい、お部屋といい、全てがとても良いんだ。本当に、ゆっくりと寛げるところだよ」と話してくださいました。
のちに、あるご縁で、鬼怒川金谷ホテルに行く事にしたのですが、その事を小野さんに伝えると、「いつも忙しいんだから、ゆっくりしてくるといい」と労って頂きました。
チェックインの後、部屋に案内されると、テーブルにお茶菓子と共にチョコレートがありました。
小野様からの差し入れとの事でした。
透析も腰痛も嫌だけど、粋で心のダンディな小野さんは、いまでも私の憧れのジジイです。