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苦しみは遠きにありて思ふもの
秋です。
わたしは秋が
こよなく、すこぶる、なかんずく
大好きです。
秋は、いいことしかありません。
まず、涼しくて過ごしやすい。
窓が気軽に開けられる。
風がサラサラしている。
虫の声が耳に心地いい。
ほぼ毎日散歩日和。
食べ物がおいしい。
ほのかな日差し。
服がかわいい。
行事がない。
連休がある。
空がきれい。
芋栗南京。
…
かの有名な枕草子も、春夏秋冬について書かれている段では秋の記述がいっとう長い。
清少納言も秋がいちばん好きだったんじゃないかなと思っています。
ちなみに、源氏物語にも秋好中宮というのが出てきます。わたしも中宮だったらその名前で呼んでほしいな(平民だけど)。
わたしが苦手なものトップ3は
高温多湿と強い日差しとセミ。
それで夏が好きになれるわけありません。
わたしの夏嫌いは
夏の悪口はいくらだって言えるけれど
夏のいいところが思い浮かばないほど。
なんだろう。
…冷やし中華が始まる、
くらいでしょうか。
そんなこんなで
はやく過ぎろ
はやく終われ
まだか、秋はまだか…
と苦しみに悶えながら夏をやり過ごしていたわけですが、不思議なものですね。
秋風が吹くと、途端に夏が懐かしく思い出される気がします。
花火の映像なんかを見て、ああ、夏が過ぎゆくのだなぁ…としみじみとしたり(ベトベトするしトイレ事情が悪いから花火大会には行かない)。
夏に限ったことではなく
苦い思い出って
割とみんなそうかもしれません。
あの上司はつくづくクソであったなぁとか
実家の居心地、悪かったなぁとか
学校の給食、無理に食べさせられたなぁとか
いいところがひとつふたつ…くらいしか思い浮かばないあれこれも、過ぎゆきたことならば懐かしく思い出すことができる(程度によるけれど)。
只中ではただ嫌い、無理、去ね、としか思えなくても、今思えばあの人も悪人というわけではなかったな、と味わうことができる(程度によるけれど)。
ちょっと距離を置いて遠い過去を思うのは
大人にこそ許された特権だと思います。
秋の夜長、苦手だったあの場所や、だいきらいだったアイツを思い出して、もうそこに行かなくていいことや、毎日顔を合わせなくて済むことを寿ぎつつ、月を眺めるのもいいものです。