頼んでないのに
皆さん、こんなご経験はおありでしょうか。
休暇を取る際「この案件については放置で差し支えありません」とわざわざ引き継ぎしたのに、休み明けに出社したら「この案件、処理しておきましたよ」と言われたこと。
自室の片づけを「学校から帰ったらやるから放っておいて」と伝えておいたのに、帰宅したら親に「片付けといたからね」と言われたこと。
…
頼んでない。
どころか、事前に「やるな」と言っておいたのに敢えて手を出し「やっておいたよ」とわざわざ伝えてくることで、こちらからの感謝を求めてくる。
これを「ありがとう泥棒」と言います。
(勝手に名付けました)
わたしは過干渉の母親に育てられたので、こんなことは日常茶飯事でした。
はっきり言って余計なお世話だと思いながらも、相手は「ありがとう」を言うまで立ち去らないので、ぐっと飲みこんで笑顔で感謝の言葉を伝えてきました。
ありがとうなんて、思ってないなら言わなきゃいいんですけどね。
でもチップを貰っていない給仕並みに
(知らんけど)
お手をしたのにおやつが貰えない犬並みに
(これは知ってる)
「まだですか?」顔を崩さないので、致し方なかったのです。
最近は、困り顔で「あ…りがとう(惑)」と言う、というような細かい演技をすることによって「手放しで歓迎してはいませんよ/無上の喜びではありませんよ」という雰囲気を醸し出す技を身に付けましたが、若い頃はそんな小芝居、出来ませんでした。
わたしは、何しろ過干渉の母親に育てられたのでよいのです。
実家にいた頃が100干渉だったとしたら、今はせいぜい12干渉。
たまに3~4干渉増えたところで、さほどストレスにはなりません。
やり過ごせます。
全力で右から左に受け流せます。
大変なのは夫です。
夫の両親はおふたりとも「自分のことは自分で決めなさい」という考えをお持ちの為為、夫は自由闊達に育てられました。
たぶん、3干渉くらいだったと思います。
このところ、ご近所さんで「ありがとう泥棒」案件をせっせと執り行うお年寄りがいましてね。
人から世話を焼かれることに全っ然慣れていない夫が、疲弊しているのです。
実家にいた頃3干渉で、わたしと結婚して1干渉に減ったところに3~4干渉増えたら、そりゃあ負担でしょう。
それぞれ、息苦しく思う基準値が違いますからね。
ありがとう泥棒って、実はかなり厄介な行為だと思います。
危害を加える、嫌がらせをする、などであれば加害者・被害者の線引きが明確ですが、ありがとう泥棒について苦言を呈した場合、被害者から一転、加害者になってしまう場合があるからです。
「あなたの為を思ってやったのに」
「もっと感謝されてもいいはずでしょう」
「わたしのことが嫌いなの?」
え、待って。
「頼んでいないことはしなくていいよ」
と言っただけなのに
わたし、悪い人になってる?
薄情な人になっちゃってる?
という状況に追い込まれやすい。
わたしは今までに1,000,000回、同じような経験があるので、あーこういうパターンね、と回避しやすいのですが、慣れていない夫は毎回、もろにダメージを食らっています。
苦しむ夫を見ているわたしもまた、重苦しい気持ちになります。
夫が苦悩する姿を見るのはいやなので、なんとか回避する術を見つけねば、と闘志を燃やしている妻です。
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