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怯えた記憶は消えないけれど

昼寝ができません。

正確に言うと、昼間眠くなって数分意識が遠のくことはあるのですが、それ以上になると途端に心拍数が上がり、息が苦しくなってくるので目覚めざるを得ません。

たぶん、子どもの頃にその辺でうたた寝する度、母親にこっぴどく叱られた経験からくるものだと思います。

わたしは非常によく寝る子どもで、四六時中眠たかった記憶があります。
つい、明るい時間にうとうとすると、決まって母に、文字通り叩き起こされました。

「何寝てるの!」
「起きなさい!」
「しっかりしなさい!」

眠りに入ろうとしている瞬間に、覚醒時でさえ苦手な大きい声を出されたり、体を叩かれたりする度、心臓がどうにかなってしまうのではと思うほど驚いて飛び起きたものです。

今は夫と2人で暮らしているので、わたしを怒る人は誰もいません。

母はそこにいないのに、昼寝していると今に怒鳴られるんじゃないか、叩かれるんじゃないか、という恐怖で目が覚めてしまうのです。
軽いトラウマなのだと思います。

わたしはひどく風邪を引きやすい子どもでした。
母には、わたしがその辺で眠ってしまうと体調を崩すのではないか、という懸念があったのだと思います。

つまり、わたしの健康を気遣ってくれていた。

理由まで分かっているのに、自分がひどく怯えた記憶を、わたしは大人になった今も消すことが出来ません。

いわんや、その怯えの原因が善意ではなく
悪意によるものであったなら。

わたしは高校生の頃、大人の男性に羽交い締めにされ、あわや、という危険な目に遭ったことがあります。

ただ、被害を最小限に食い止めるべく助けてくれた人がいた。
助け出されたあと「あなたは悪くない」と繰り返し言ってくれた人がいた。
口さがないことを言う人に向かって、猛烈に怒ってくれた人がいた。
何も無かったかのように今まで通り接してくれた人がいた。

わたしはあの時
周りの人たちの優しさに触れました。

適切なアフターケアがあったからこそ、わたしは怖い思いをした後も学校に通えたし、1人で歩くことが出来たのだと思います。

怯えは、簡単には消えない。
でも、その辛さを軽くすることは出来るかもしれない。

誰かの悲しみや苦しみを笑わないこと、
出来る限り話を聞くこと、
いつも通り接すること。

わたしに出来ることは少ないけれども
そう心掛けておくことはできそうです。

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