『猫を抱いて象と泳ぐ』小川 洋子 著
人より想像力のある少年がチェスと出会い、チェスを打つ。
勝敗よりも展開の美しさやストーリーを楽しみ、対戦相手も巻き込んで美しい戦いを残していく。
チェスの楽しさ、美しさを感じさせる情景描写がたまらない。
話としては利用される天才。
利用される弱い人間。
利用してくる悪人。
利用してくる力のある者。
が描かれる。それに対し主人公リトル・アリョーヒンはお金でも名誉でもなく純粋に美しい戦いを求めて生きる。
そんなアリョーヒンを応援する優しい人たちとの交流や、やりとりに心温まる。
やりとりの中で特に心に残ったのが、おしゃべりな老人が一言も喋らないアリョーヒンに「人は口を開けると自分のことばかり話す。そして、ろくなことしか言わない。」というセリフが心に刺さる。
周りをよく観察するアリョーヒンに習って自分も読書中、その小説が作る空気、読み終わってからの読後感をもっと感じ、時間をたっぷり使って楽しもうと思った。
今後、読書体験が変わるかもしれない。
2010年 本屋大賞 第5位