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『線は、僕を描く』 砥上 裕將 著

STORY
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展示会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。水墨画とは、筆先から生み出される「線」の芸術。描くのは「命」。初めての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。

audible

読んで思ったのは「ミツバチと遠雷」の水墨画版のように思った。
悪い意味ではなく目に見えないはずの音の感じや空気感を描いたミツバチと遠雷のような水墨画の描く者にしか感じられないような描写、真剣に向き合った者だけが感じる細かい動きの描写がたまらない。

1つ1つの所作を味わい尽くす美しい描かれ方に、この世界に引き込まれていく。

登場人物は全員いい人で物語も優しい。
そんな純粋な登場人物が極めることとはどういうことなのか。
苦悩や葛藤を描きそれぞれが成長していく。


しっかり観察して、しっかり動きを捕え、じっくり言葉を咀嚼する。
これを日頃から意識したいと感じた。とはいえ、できないから僕は小説で味わいたい。
著者の砥上さんはおそらくやっている。
これが出来たら見える世界が変わるように思う。

読めば必ず幸せになれる小説。これも本を買って本棚に入れておきたい。

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